DISCLAIMER: THE CHARACTERS AND SITUATIONS OF THE TELEVISION PROGRAM "THE X-FILES"
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この作品は、Ｓ８ファイナルおよびＳ８全体のネタばれを含みます。
その後の二人・・・を私なりの“希望”を元に書きましたので、そういった趣旨に
嫌悪感を抱かれる方には、読むことをお勧めできません。

向き合った二人は自然に笑みを浮かべる。
モルダーは彼女の肩の力の抜けた装いに、彼女は彼の眼鏡姿に。 
「お帰り」 「何をしていたの？」

彼女の問いにモルダーは無言で机の上を示した。
彼女は胸の前で腕を組んだ。
スーツ姿じゃない、やわらかな素材のワンピースを着てそれをやると、
豊かな胸が一層強調されることを彼女は知らない。もちろんモルダーもそのことは告げていない。
だから、他の人の前で腕を組ませないようにするのはいつも一苦労だった。

「ウィルの子守り。それから、執筆活動」
「どう、進んだ？」
「ウィルはほとんど邪魔をしないでいてくれたんだけど・・・アイディアのほうがね、さっぱりで」

スカリーは机の上を覗き込み、ほとんど白紙の原稿用紙を見た。

「私も楽しみにしてるのに」
「論文のようにはいかないさ」
「あなたが小説を書くようになるなんて・・・信じられないわね」

モルダーも頷いた。

「あなたはずっと捜査官でいるような気がしてたのに。本当に意外だわ」
「この仕事のいいところは時間を自由に使えるところだ。ウィルにかまってやれるし、君ともこうして・・・」

モルダーはスカリーに手を伸ばし、両手で彼女の手を握った。

「ゆっくりできる」
「でも、二人で働いていた時のほうが、もっと長い時間一緒にいられたわ」

スカリーが軽くモルダーを睨んだ。

「あんなに緊張して君といるのは、もうごめんだ」

スカリーはふっと微笑んだ。

「君から捜査の話が聞けるから、ネタには困らない。すばらしい環境だよ。あの二人とはうまくいってる？」
「ええ。二人ともさりげなく気を使ってくれて。絶妙なバランスで、うまくやっていけると思うわ」
「よかった」

モルダーは握った手にぎゅっと力をこめて、言った。

「おいで」

引き寄せられるまま、スカリーはモルダーの膝に腰掛けた。
彼の腕が作るやさしい輪の中で彼の肩に頭を預け、スカリーは目を閉じた。

「何を考えてる？」

スカリーが口を開けようとすると、モルダーは人差し指でそっとそれを制した。

「当ててみようか。僕たちが出会った日のことだろ？」

スカリーはわざと大きく目を見開いて見せた。

「よくわかったわね」
「僕には何でもわかるよ。君のことは」
「・・・あなたの眼鏡姿がね、懐かしかった」

スカリーはゆっくりと手のひらを彼の頬に当て、親指でふっくらした唇をなぞる。
モルダーは少し口を開けて、彼女に指を唇ではさんだ。

「不思議ね。今もあなたといるなんて、あのころの私は想像もしてなかったわ」
「僕もだよ」
「あなたは私を追い出そうと躍起になってたものね」
「君だって僕のこと信用してなかっただろ」
「あら、そんなことないわ」

さも心外だというように、スカリーは眉を上げた。

「確かに最初は厄介な人だと思ったけど、すぐにあなたを信用したし、好きになったわ」

モルダーは疑わしそうな目で、スカリーを見た。

「ウソばっかり」
「本当よ。そうじゃなきゃ、いくら本部にいられるとしてもすぐにおいとましてたわよ。
アカデミーでの仕事は気に入ってたし。意味のない我慢はしない質なの」
「君らしいよ」

モルダーは彼女を抱える腕に、さらに力をこめた。
スカリーは彼の眼鏡を取り、机の上に置いた。

「最初は、仕事のパートナー」

そう言って、彼女は彼の頬に小さくキスをする。

「次に、戦友」

彼の大きな鼻のてっぺんを舌の先でなめた。

「その次は親友になって・・・」

スカリーはにっこり笑うと、彼の唇を何度かついばんだ。
互いの熱い息がかかるぐらい顔を近づけたまま、モルダーが彼女の言葉を継ぐ。

「その次が恋人同士、だろ？」

今度は、深く情熱的に。
長いキスが終わると二人の息は上がり、スカリーの瞳はすっかり潤んでいた。

「そして今は、人生のパートナー」

彼は彼女の耳たぶを優しく噛んだ。
スカリーの唇から、切なげなため息が漏れる。

「・・・・・・私は、あなたとこういう関係になれなかったとしても、ずっとあなたのこと、大好きだったと思う」
「・・・・・・」
「だから・・・・・・私が今まで生きてきた中で、いちばんよかったなと思うことは、
　親友のあなたと、こうして愛し合えたことなの」
「・・・ウィルが生まれたことよりも？」
「ええ、そうよ。私たちがこの気持ちを分け合っていなかったら、きっと”奇跡”はなかった。
　私があなたを愛して、あなたが私を愛さなかったら、あの子はここにいないわ」
「奇跡を信じてるんだね」

少しおどけた口調で言ったモルダーに、スカリーは力強く微笑んだ。

「あなたが信じろって言ったから。だから、信じられたわ」
「君ってやつは・・・」

二人は微笑み合い、それから今度は優しく唇を合わせた。 そっと唇を離すと、額と額を合わせる。

「さて、そろそろ僕達の天使が目を覚ます頃だ」

モルダーがそう言った途端、派手な泣き声が聞こえた。 二人は思わず吹き出していた。

「あなたには予知能力がついたみたいね」
「君とウィルに関してのね」

スカリーはモルダーの膝から降り、壁に歩み寄った。
そして、少し色あせたそれをそっと撫でる。

「私たちが行くところには、このポスターもきっとずっとついてくるわね」
「僕達らしくて、いいだろ？」

モルダーはスカリーの手を取った。
しっかりと手を握ったまま、二人は愛する息子のもとへと向かう。

二人と同じように、変わらないままのポスターを残して。

End

最後まで付き合っていただき、本当にありがとうございました。
なぜか浮かんだ「作家なモル」。 あの、突拍子もない想像力と確かな分析力を用いて本を書けば、
すごいものができそう・・・と思っちゃったわけです。
・・・最近見ている日本の某ドラマの影響も否定できない・・・ですけど。

この話はどうしてもスカちゃんにあるセリフを言わせたくて書きました。
私がはまっているもう一つのドラマ『フレンズ』のセリフです。
ネタばれになってしまうので言えないのですが、すんごく感動して、
それを言わせる状況を無理やり設定しました。 
場面としては、序章の出会いのシーンと、Ｓ７〜Ｓ８のくつろいだ二人を思い描いて
いただくとよいかと思います。

このＦｉｃを、楽しかった６月のつくばの夜に感謝して、MadelineさんとHISAYOさんに捧げます。

沙羅
June,7 2001