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Summary : We're never too old for fairy tales
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intent of infringement.
TITLE
: Playing Goddess
Written
by Shalimar
Translated by Katia
あ”〜、今夜は暑い。
湖には夕方早くには微風が吹いていたが、それもパッタリと止んでしまった。彼女は
丸太に寄りかかってくつろぎ、たき火を見つめていた。
二人には、炎の明かりは必ずしも必要ではなかったが、キャンプ場を居心地のいいものに
していたし、彼女は炎が好きだった。一人で何時間でも座って眺めていられた。
それは、彼女たちが普段泊まるような、ろくでもないケーブルTVが入るようなみすぼ
らしいホテルに比べれば、好ましい変更であった。彼女は相棒をちらっと見た。
彼はまさに、ボーイスカウトを気取っていた。
彼はすさまじい集中力で、串刺しのマシュマロを焼いていたのだ。
マシュマロは炭の熱でこんがりとキツネ色に焼け始めていた。ミルク色の地肌は乳褐
色に染まり、わずかに泡が出始めていた。
彼女は、Ｔシャツの衿を引っ張った。ちょっとだけマシュマロの気分になってきた。
ブラは体に貼り付き、その下では胸がじっとりしていた。彼女はこっそりとブラを
引っ張ってみた。
あ”〜、今夜は暑い。
「おっ」と言って、彼は串を引き上げてゆっくりとねじった。マシュマロに関しては
“完璧”だった。
彼女は、彼のことも何時間でも眺めていられた。
彼は、スーパーでは本当に男の子みたいだった。明日の張り込みに備えて食料を買い
込まなければならなかった事が、キャンプにつながったのだ。彼は都合のいい道具と
材料をもっと買う様に強く主張した。メイン州でのキャンプでは、彼を子供にしたことが
いくつかあった。
「チョコバー食べるだろ、スカリー？ミルク抜きの胚芽クラッカーだよ。」
彼は、彼女がチョコバーのシミをつけると、大喜びした。
彼女は、彼がマシュマロを胚芽クラッカーの角に注意深く置いて、もう一つのクラッカー
にも置くのを見ていた。もし、彼女が少しでも彼を覗き見ていれば、この男の厳しい
輪郭が少年のように柔らいでいるのが見えただろう。
彼の表情は和らいで、たき火の明かりに横顔がくっきりと浮かび上がっていた。
...彼女は、彼の幼い頃を想像した。鼻は今程がっしりと目立っておらず、唇と顎は
滑らかだった。今も髪はじっとりとした熱のせいで真っ直ぐに立ち、少年の様にしか
見えなかった。そして、熱心に集中している姿は尚更そう見せていた。
彼は15才に見えた。いや、14才だ。
彼女は目を開けて、彼の容貌を男の姿に戻した。彼女の目は、品定めしていた。
ふ〜む。
彼は、作品に食いついた。
「ん〜っ。」彼はマシュマロを口一杯に頬ばって言った。
「君もやったらどうだい？何笑ってる？」
「何でもない。あなたが齧ったのでいいわ。」
「いけないなあ、全部欲しくなるよ。」
「すごく熱いじゃない、モルダー。マシュマロを火あぶりの刑にする気はないわ。」
「僕がやるよ。」
彼は正しかった。ほどなくして、熱くなったマシュマロが口の中で破裂して、溶けた
チョコレートが顎を伝った。彼女は認めた。もう一個欲しくなったのだ。
「な、言ったろ？スカリー。」
彼女は頷いた。口の中が一杯だったのだ。マシュマロが、するりと喉を落ちていった。
「おいしかったわ、モルダー。ありがと。」
彼は歯を見せて笑った。
「でも、ベタベタになっちゃった。」
彼女は一本ずつ指を舐めた。
彼は、自分の丸太に寄りかかって彼女を見つめていたが、その表情は読み取れなかっ
た。彼が何か言いたそうだったので、彼女は待った。ようやくモルダーは口を開いた。
「泳がないか、スカリー？」
「泳ぐですって？もう夜中よ。」
しかし、諭しながらも彼女はちらっと湖を見た。それは誘う様に涼しげで、魅惑的で、
美しかった。
「満月だよ、スカリー。昼間みたいに明るいじゃないか。」
彼は、天国の様な場所に頷いた。
満月？
スカリーは振り向いて空を見た。
彼女は振り向くと、空を見上げた。果たして、そこには月がくっきりと浮かんでいた。
それは美しかったが、悲しげに感じた。彼女が最後に見た時には、まだ満月になって
いなかったのだ。
スカリーはモルダーを振り返った。彼はまだ、彼女を見つめていた。たき火の明かりが
揺らめきながら彼の瞳を横切り、彼を無表情に変えた。彼女は光と闇の揺らめきに、
催眠術にかかったような気になった。
スカリーはモルダーの唇を見つめた。モルダーの唇を。
「スカリー、どうだい？」
「何が？」
「泳ぐんだよ。」
「私は...。」
「僕は行くよ。」
と、彼は立ち上がると、彼女に手を差し出した。
「来いよ。」
「あの...。」
何かあるのだろうか？
「もちろんよ。」
と、スカリーがモルダーの手に手を重ねると、彼は彼女の手をひいて立ち上がらせた。
「先にテントに行って、水着を着てくるわ。」
テントに向かって歩き出そうとすると、モルダーは彼女が行ってしまわない様に、ぐっと
手を引いた。彼の指はマシュマロの熱のせいで、熱く彼女の指をくるんでいた。
「誰が水着を着るって？」
スカリーはモルダーを見上げた。
「素っ裸で泳ぐって言うの？」
「もちろん。真っ暗なんだぜ。」
「『昼間みたいに明るい』って言ったと思うけど？」
「その通り。夜だから暗いし、昼間みたいに明るいよ。約束する、君が水に入るまでは
見ないよ。」
「約束する？」
「僕のことも覗かないって約束してくれるなら。」
モルダーは内気そうに言った。
スカリーは、木々の向こうの湖を見た。彼女はひんやりとした水を肌に纏うのを想像
した。
あ”〜、今夜はくそ暑い。
「わかった、約束するわ。」
モルダーは微笑んで、彼女の手を引いた。ボーイスカウトが戻ってきた。彼となら
安全だ。
多分。
「うずうずしてるんじゃなくて？何でそんな風に見るのよ。」
「見てないよ。」
スカリーは視線をモルダーから無理矢理引き剥がすと、湖の方を向いた。
「ＯＫ、行くわよ。」
彼女はぐっと肩を反らすと、砂浜を波打ち際へ歩いていった。振り返って確かめると、
彼はまだ見つめていた。
「見ないでよ。」
モルダーはたき火の方へ向いた。
スカリーは、スニーカーとソックスを脱いだ。ちらっと目線を投げると、モルダーは
タクシー待ちの客の様にじっとしていた。彼女は素早くショートパンツをショーツごと
脱ぎ、Ｔシャツも脱いだ。最後にブラを引き抜いて、ほっと息をつくと、湖へと入って
いった。水が膝へ、太ももへ、ウェストへ、そして胸へと上がっていった。
ひんやりとした水が彼女を包み込んだ。
なんて気持ちいい...。
スカリーは振り返ろうとはしなかった。もし、モルダーが見ていたら、見ていたら。
彼女は水面でほんの数ヤード泳いで浮かび上がった。彼は正しかった。明るくもあり、
暗くもあった。水の中は暗く、外は明るいのだ。月は暗い水の中にいる彼女の前を
横切るように、銀色の筋を伸ばしていた。
スカリーは月明かりの筋道に沿ってゆったりと水をかいた。光の筋は彼女を取り巻いて
いた。彼女は月明かりと追いかけっこをしてたわむれ、月は彼女に触れようと手を
伸ばしていた。
水は、水着を着た時とは比べ物にならないくらい気持ち良かった。さざ波が、まるで
生きているかのように全身を愛撫して、火照った肌を覚ました。水面にうつ伏せに
なると、月明かりは彼女の背中で弾けているようだった。
彼女は全裸で泳いでいることをすっかり忘れていた。もう一度潜って、水面に飛び
上がると、水はシャンパンの泡の様に肌を流れていった。彼女は巨大なシャンパンの
湖で元気に快活に泳いでいるような気持ちになった。
岸をちらっと見ると、モルダーの姿はなかった。テントに入ったに違いない。
スカリーは、ゆったりと仰向けに浮かんだ。今は涼しく感じる風が胸を撫でていって、
乳首が硬くなった。今度は背伸びをして、腕も頭の上へ伸ばした。彼女はいつまでも
浮かんでいられた。
それは、兄弟達が熱中していたことだった。彼女は微笑んで、空気が体の前面を暖め、
水が背中を冷やしていくのを感じた。今、彼女は14才ぐらいの気持だった。
彼がいなければ...。
突然、何かが彼女の足を掴んだ。
スカリーは、バシャッという水音とともに沈んだ。同時に頭の中をビッグブルーや
サメがかすめたが、彼女にはモルダーだと判った。彼女はあえぎながら水面に出たが、
足が底につかなくなった。
誰かの手が彼女の肘を優しく掴んで水面へ引き上げ、立ち泳ぎして息を吸うのを助けた。
スカリーはむせながらも腕を振りほどこうとしたが、更に水を飲み込んでしまった。
一瞬、相手の胸毛を肌に感じたが、すぐに冷たく渦巻く水が二人の間に流れ込んできた。
彼女は深く息を吸い込み、目にかかった髪を払いのけた。
モルダーの顔が間近にあった。髪は後ろにぺったりと貼りつき、後悔の色を含んで
心配そうに微笑んでいた。
「ごめん、スカリー。」
「大丈夫よ。」
「ごめん。」
「大丈夫だってば。」
彼女は肘を振り払うと、少し離れた。
「その...溺れさせてしまって、ごめん。」
「そうじゃないの。水の中で触られるのがイヤなのよ。」
「どうして？」
「子供の頃、誰かに掴まれたの。」
「誰？」
「いじめっこよ。」
「ごめん、スカリー。」
「忘れて。あなたは知らなかったんだから。」
スカリーはモルダーから少し離れて泳いだ。
「でも、いい考えね。水がすごく気持ちいいわ。」
「な、だろう？」
モルダーはスカリーから距離を保って泳いだ。
「水着なんか、ない方がいいだろ？」
「そうね。」
その通りだった。
「知ってる？モルダー。連邦法では国立公園で裸になることは罪にならないのかしら？」
「ちぇっ、お互いを逮捕する訳にはいかないか。」
彼女は笑った。ゆったりと湖を泳ぐ二人を、月明かりが追いかけていた。
「知ってる？スカリー。月は潮の満ち干きを支配してるんだって。満月の日の満潮は
いつもより高くなるんだ。」
スカリーは、ちらっと月を見上げた。不完全な満月が二人を見下ろしていた。
「知ってるわ、モルダー。だけど、それは海だけのことなのよ。」
「そう、でも全ての水は月の引力の影響を受けてるんだ。湖だってそうさ。
感じないかい？水が生きてるって感じ。」
スカリーは水が柔らかく肌を撫でて、快感を感じるあらゆる部分をそっとくすぐられる
のを感じた。
「ええ...そうね。確かに...何か感じるわ。」
「僕らの体だって、月の影響を受けてるんだ。」
スカリーは立ち止まって、モルダーを見た。
「月の引力は、僕らの血液を動かしてるんだ。血流や体を通して、感情が高まったり
爆発したり。潮の満ち干きみたいにね。僕らの体中で。」
スカリーには、彼がホラ話をしてケムに巻こうとしているのかどうか掴みかねた。
モルダーは黙って立ち泳ぎしながら彼女を見た。彼の目は影になっていて、その表情は
完全には読み取れなかった。
「今がちょうど満潮なんだよ、スカリー。感じないかい？柔らかく...うねってる。
月は君を動かしてるかい？」
スカリーは目を閉じて集中した。
「感じるだろ？スカリー。体中でドキドキ言ってる。鼓動を感じるだろう？
肩、腕、それに足。」
モルダーの声は水の様に柔らかく、愛撫するようだった。突然、スカリーは体の中で
血液が激しくうねるのを感じた。それは、どくどくと鼓動していた。体中の血液で生きて
いることを感じた。
モルダーの言うことは嘘だ。
「モルダー。」
彼女の声は、思いのほか息が切れ切れになっていた。
「私は医者よ。それぐらい、医学部で習ったわ。」
「何だか...。」
スカリーは、モルダーの声が笑っているのを感じた。
「君は、生き物のことを学ばないと。感じるかい？君の体の中で。」
モルダーは、水の中に手を入れて指先でスカリーの肩に軽く触れた。スカリーの目が
ぱっと見開き、小さくあえいで震えた。
「ええ。」
モルダーの指先が腕を滑り落ち、スカリーはまた震えた。すると今度は元来た道を
戻り、顎へと登った。
もの憂げに愛撫され、触れられた部分から肌に火がついていった。
「腕が感じるのかい？それとも、首？感じる、スカリー？」
「モルダー...。」
「ん？」
「何してるの？」
「満月と満潮のことを教えたくてさ。ごめん、触るつもりじゃなかったんだ。」
「あ...。」
モルダーが後ずさりして手が顔から離れていって、スカリーはため息をついた。
スカリーが気のきいた言葉を見付けられずに月を見上げると、興奮しているのを覚えた。
振り向くと、モルダーが彼女を見つめていた。
「満月が何なの、モルダー？」
「んー。」
モルダーは少し黙って考え込んだ。
「月には女神がいるんだ。」
「え？」
「満月は、その女神自身なんだよ。」
「月が？」
「そう、月が女神なんだ、スカリー。」
「そして、月には女神がいるって言うの？」
「そう。...スカリー、どうやら浅瀬からは離れてしまったようだよ。
僕はまだ背が立つけど。」
スカリーは爪先を水底に向かって伸ばした。
「届かないわ。」
「抱えててあげるよ。おいで、僕の肩に手を乗せて。しばらく、そのまま。」
スカリーが岸へ振り返ると、そこはも数百ヤードも離れた場所だった。モルダーは手を
伸ばして彼女の手を引き寄せた。互いの肌が触れると、スカリーは、はっと息を呑んだ。
スカリーが離れようとすると、モルダーは更に引き寄せた。
「僕だよ、スカリー。決して君を傷つけたりしない。僕に掴まって。
抱えててあげるから。」
モルダーの目は真険だった。立ち泳ぎして向かい合い、彼の肩にためらいがちに手を
置くと体に腕が回され、すっぽりと胸の中に収まって抱え上げられた。
突然、水を通してモルダーの燃える様な肌の感触が伝わった。いつもは衣服に覆われて
いる部分は素晴らしい感覚だった。触れられた部分から火がついていって、その後を
生きた水が覚ましていった。
「続きを聞きたいかい？」
「え...続きって？モルダー。」
「月の女神のことだよ。」
「ああ、そう。そうだったわね。」
「『満月の夜、女神は海で泳いでいました。』」
「どうして？」
「気持ちいいからだろ？それに、女神はシルキーを探していたんだ。」
「シルキーですって？半分人間で半分アザラシっていう、海の怪物？」
「そうだよ、スカリー。知ってたんだ？」
と、モルダーは微笑んだ。
「シルキーは海の怪物で、女神は自分のシルキーを探して泳いでいたんだ。
彼女だけのね。それには、訳があったんだ。」
彼の手は、彼女の腕を背中を優しく動いていた。その手はあくまで軽く、魚がついばん
でいるように感じた。
電気を帯びた魚の唇だ。
スカリーは身震いした。
「寒い？」
と、モルダーはスカリーを胸に引き寄せた。
「いいえ、モルダー。あなたのせいよ。」
「何もしてないよ。母から聞いた、ユダヤ系ケルト人に伝わる伝説なんだ。」
「まあ、そう。そうだったの。続けて続けて。」
スカリーの手が動いて、モルダーの肩にぴったりと貼りついたようだった。その指は
鎖骨の線をなぞると、今度は彼の肌に指を押し付けた。触れた指から、モルダーの体の
中でも血液が満ちて脈打っているのを感じた。
「スカリー...。」
モルダーは暗い瞳でスカリーを見下ろした。
「早く続きを聞かせて、モルダー。」
「そして...満月の夜に月明かりの海で、女神はシルキーを見付けたんだ。
それから、どうしたと思う？」
「わからないわ。」
「女神は、そいつを誘惑したんだ。自分が幸せになるために。」
「誘惑したですって？幸せのために？シルキーを誘惑することがどうして女神の
幸せのためになるの？」
「満月は、繁殖と生命と愛の守り神で...女神は地球の生き物達を見るのが好きだった。
それが女神の楽しみだったんだ。手助けは出来ないけど、見ているのが好きだった。」
モルダーは、いくつの時にこの話を聞いたのだろう？
「月の女神は、地球の生き物を見るのが好きだったのね。
...んっ、モルダー？」
スカリーはモルダーの片手が胸に重なって、はっと息を呑んだ。
「スカリー、胸が浮き上がってる。」
モルダーは物珍しそうに、何か言いたげな声で言った。
「女性と裸で泳いだことないの？」
「ああ。」
「ホント？」
「ないよ。」
何が突然彼女をそうさせたのか。
「モルダー、胸が浮き上がるのはね...。」
スカリーは話の筋を思い出そうとした。
「月の女神が、自分の幸せのためにシルキーを誘惑したからなのよ。」
モルダーはまだ彼女の胸をその手に包み込んで、真顔でその先端を擦っていた。そこは
指の動きにつれて硬くなり、更に卑怯な不意討ちが足の間をくすぐった。
「そうだよ。」
「シルキーの方はどうなの？女神と愛し合いたくはなかったの？」
「彼は、女神を説得しようとした。」
「どうして？」
一瞬の沈黙が流れた。
「彼は怖れていたんだ...。」
「女神を？」
「傷つくことを怖れていたんだよ。誘惑されても、女神に捨てられて冷たい海でまた
独りになるのを。」
「女神が？シルキーを捨てるって言うの？」
スカリーの手はモルダーの肩のラインに沿ってさ迷い、胸に辿り着いた。心臓の辺りに
押し付けた手のひらからモルダーの速い鼓動が伝わった。
「う〜ん、月の女神は忙しいんだよ。」
「忙しい？どうして？」
「ああ、いろいろとね。女神は賢いからさ。」
「賢いですって？んっ、...ああ。」
モルダーは掴まえていた手を少し移動して、スカリーの太ももに置いた。突然、彼の
熱くなった腰が足の間に押し付けられた。
「女神は何がしたかったの？シルキーを誘惑して、自分が楽しむため？それとも、
シルキーに何か感じるところがあったってこと？」
「女神は...シルキーが好きだったんじゃないかなあ。」
どういうわけか、モルダーがスカリーを振り回して、彼女は彼に抱きついてしまった。
腕は首に回され、足は体に絡みついていた。二人の手はお互いの到る所をそっと滑り、
水にくるまれた燃える様な肌を記憶しようとするかのように冷静に探りを入れていた。
「まさか。」
「いや...いいかい、シルキーは決めなくちゃならなかったんだ。海に留まるか、それとも
陸(おか)に上がるか、って。どっちも出来なかったんだよ。女神を愛したから。」
「シルキーは女神を愛してたっていうの？」
「マジ惚れさ。」
「ホントに？」
「理由(わけ)なんていらないよ。」
彼は...？
「女神と一緒になるために、シルキーは海を捨てなきゃならなかったの？」
モルダーは黙って、スカリーを少し降ろした。スカリーは足の間に彼の大きく主張する
モノを感じて驚いた。いつのまにこんなことに？二人は話をしていただけだったのでは？
彼女の肌は彼に寄りかかって息づいていた。血は体の中で。水は二人を取り巻いて生きて
いた。信じられない感覚だった。冷たい水が太ももを滑り、モルダーの硬く熱いモノが
押しつけられて、スカリーの胸が疼いた。次の瞬間、開いた唇を彼はそっと撫でた。
スカリーは小さくため息をついた。必然の、全く避けられないことだった。
「シルキーには出来なかったんだ。」
モルダーの唇がほんの２インチの距離にあった。
「出来なかった？」
スカリーの声は切れ切れで、あえぎに近かった。
「そう。」
「シルキーが？何故、どうして？」
「シルキーは海を捨てられなかったんだ。」
「捨てられないって、だって。モルダー...。」
とスカリーは小さく囁いて彼に向き直った。
「女神がシルキーに海を捨てて欲しいなんて思うかしら？そんなことないと思うけど？」
「そうかな？」
彼の声は驚いているようだった。
「いや、女神はシルキーのために愛したんじゃないかな。シルキーそのもの、彼のする
こと。女神は自分自身を愛するシルキーを愛したのさ。」
モルダーの燃えるような手が背中をゆっくりと上り、彼女の中に火を付けた。
二人は静止した。
「女神が？シルキーを愛してた、ですって？」
「そうさ、もちろん。女神もシルキーにベタ惚れだったんだ。」
モルダーがそっと中に入り込んできた。
スカリーはうめいた。
「モルダー...だめよ。私、避妊してない...。だめ。」
モルダーは彼女のヒップを両手で包み込んで、貫き、ついに満たした。
なんて気持ちいい、なんて...素晴らしい。
「やめて欲しい？」
「ええ、やめて。いいえ、来て。ああっ。でも、だめよ。いいの？モルダー...。
私...。」
モルダーは更に腰を押し付けた。
「あああっ...モルダー...。」
「子供が出来たら、結婚する。」
貫く。
「モルダー...そんなの嘘。」
「本当だよ。」
貫く。
「モルダー...。」
スカリーは頭を反らし、足を更にぐっとモルダーに巻き付けて、目を閉じた。
彼は素晴らしかった。彼女には、瞼を通しても星が見えた。月が見えた。
「ああ、モルダー...。」
「子供が出来なくても結婚する。」
貫く。
「結婚しよう。」
「モルダー...あなた、まだキスしてないわ。私達、ただ伝説の話をしてただけよ。
キスもしてないのに、こんなことするなんて、信じられない。」
スカリーは息が続かなくなって、喋るのをやめた。
彼女は背中が水に届くほどに反り返り、髪が水の上で広がって、肩をくすぐっている
のを感じた。これも、生きている。
スカリーはモルダーの肌が燃えているのを感じて、火が点いたような気分になった。
「キスしてるよ。」
貫く。
「何度も。君にキスしてる。」
貫く。
「数え切れないぐらい。」
「なんですって？いつ？」
スカリーは目を見開いてモルダーを見た。彼は彼女をじっと見つめていた。半分目を
閉じ、虹彩と瞳孔の区別がつかないほど、黒く見えた。
「いつだって、君の唇を見ていた。」
貫く。
「他の誰かが君の唇を見ている時、キスしてる。」
貫く。
「毎朝、出勤して来た時。」
貫く。
「毎晩、別れる時。」
貫く。
「君にキスしてる。」
「ああっ。」
貫く。
「ああっ。」
「いつでもキスしてる。結婚しよう、スカリー。本気だ。」
「いいわ...あああっ。」
「ホントに？」
「ええ、いいわ。あっ、いい。ああ、モルダー。」
スカリーは月を星を、空を見上げた。向き直ると、モルダーは彼女を見つめて、腰を
動かすことに集中していた。そんな彼はすごくセクシーで、淫らだった。彼はひたすら
彼女に集中していた。その姿は何百万もの小さな光に覆われて、切れ切れに見えた。
水滴が髪に、顔に、首に、肩に付いて、小さな輝く泡が彼を覆っていた。
スカリーは頭を反らすと、月を見付けた。『幸せ？女神様。あなたの生き物達がつがいに
なっています。』彼女はあえいで、モルダーの肩に爪を立て、達した。悲鳴が夜の湖中に
響き渡った。
スカリーがモルダーにしがみついて顔を見ると、彼は愛のこもった目で彼女をみつめて
いた。それは、今までに見たことのない顔で、少年に、男に、そして恋人にと次々に
現れた。その表情は情熱的で、激しく、優しかった。
そして、モルダーはスカリーを引き寄せて自分も達した。くぐもったうめき声とともに
彼女の髪に顔を埋め、更に小刻みに突いた。そして僅かに震えると、彼女をそっと抱き
締めて、目を閉じた。
水は小さな波となって二人を打ち、月明かりを受けてキラキラと輝いていた。二人の
呼吸が徐々に落ち着いていって、スカリーはモルダーをぼんやりと見た。
水が彼の火照った肌の上で虹色に光っていた。
「溺れたのかな？」
とモルダーがやっと口を開いた。
彼は目を開けて、スカリーは彼を見た。
「シルキーは溺れないわ。」
と彼女は笑った。
「良かった。ごめん、君が水の中で触られるのがイヤなのを忘れてしまった。」
と微笑み返した。
モルダーは彼女から離れようとするふりをした。スカリーは彼の首に腕を巻きつけ、
今度は自分から腰を押し付けた。乳房がモルダーの胸に押し付けられてつぶされた。
「もう、治ったと思うわ。」
モルダーは目を閉じてスカリーを引き寄せ、ぎゅっと抱き締めた。
スカリーもまた、モルダーをしっかりと抱き締めた。
スカリーの体は、信じられないほどモルダーを感じて、手は彼の体をゆっくりとさすって
いた。足はまだ彼に巻き付けられ、二人はまだ繋がっていた。水は彼女の肩や胸で冷たく
弾けていた。水面を見ると、満月から銀色の筋が二人に投げられていた。
「女神に誘惑されたシルキーはどうしたんだろう？」
スカリーはモルダーの顔を見た。彼の目はまだ閉じられていた。
「結末を知らないの？」
モルダーは目を開けて彼女を見た。彼の顔は白黒にしか見えなかった。瞳は黒く、表情は
閉じられていた。こうなったことに、ためらっているはずもないだろう。スカリーは
彼の表情を伺った...。彼は。
「う〜ん...。」
スカリーは助け船を出した。
「女神は、シルキーと一緒に海にいるのが好きで、彼のために、喜んで陸を捨てたんじゃ
ないかしら。」
「ホントに？」
「女神は、シルキーのやりたいようにさせたかったのよ。女神がPlaying Goddessを返上
して、シルキーと海に留まって愛し合って暮らすのが望みならね。
結局、女神はそこで暮らして4年になるのよ。」
「ずっと？」
「もちろん。その日からね。」
「本当は、Playing Goddessをやめさせたくなかったんじゃないかな。」
「そうかしら？」
「そうさ。」
スカリーはしばらく黙った。
「シルキーと海で暮らすために本当に女神を辞めたんだろうか？」
「違うわね。」
モルダーは黙った。
「モルダー。」
「何だい？」
スカリーは指先をモルダーの下唇から鎖骨の線に走らせた。
「もし、シルキーが一瞬の情熱に駆られてそんなことを言ったんだとしたら、女神は
彼を窮地から救ったことになるわね。」
モルダーはスカリーをきつく抱き締めた。彼はちらっと月を見上げてから彼女の耳元で
ささやいた。
「僕は、伝説なんかイマドキの関係にはあてはまらないと思うけどな。」
「モルダー。」
モルダーは真剣な顔でスカリーの胸の喫水線に指を這わせ、彼女の硬くなった乳首を
つまんだ。
スカリーは指を彼の髪に差し入れて、自分に向けさせた。
「モルダー。」
「あの...答えをまだ貰ってないんだけど。」
「そうだったかしら？」
「うん、“Yes”は50回ぐらい言ってたけど...。」
「“Yes”よ。」
「ホントに？」
「ええ。」
モルダーはのけぞって笑い出した。水が髪で弾け、影になった顔に白い歯が見えた。
スカリーはしばらく彼を見ていたが、やがて一緒に笑い出した。
そして二人は黙って、濡れた暗闇で晴れ晴れとして見つめあった。
「満月だ。」
と柔らかく言った声には、ほんの少しの驚きもなかった。モルダーは、またスカリーの肌を
優しく撫で始めた。
「まあ、月？」
スカリーの手はモルダーの背中を這い回っていた。その手を通して、彼の温かな肌の下で
血が流れているのを感じた。
「月にとっての幸せは、二人が愛し合うことよ。」
とスカリーは微笑んだ。
「二人は結ばれたの。最初から、月が望んでいた事だったのよ。」
『二人は愛し合い、そして子供をつくりました。』
「赤ちゃん？！」
スカリーは、ぎょっとして月を見上げた。
「モルダーったら。」
スカリーは頬をモルダーの濡れた頬に擦りつけた。肌に彼の無精ひげやもみあげを感じた。
彼女は足の間に集中した。そこは充分満たされていたが、スカリーは妊娠しないことを
願った。たとえこれも避けられないことだとしても...。
スカリーがもう一度周りを見渡すと、引き込まれるような光を放つ満月があった。
誰もそんなことは考えなかった。
スカリーがモルダーを振り返ると、彼は彼女をじっと見つめていた。
彼女は唇を彼の頬に滑らせた。そして触れるだけのキスを交わし、スカリーはモルダーの
顎を自分のそれで優しくなぶった。
「キスはするのかな？どう思う？」
とモルダーが囁いた。
「するわよ。」
とスカリーは彼の唇の端に囁き返した。彼女はモルダーの頬に舌を這わせて味わった。
チョコレートだ。
「でも、結婚までキスはしないわね。」
「ホントに？」
「ええ。」
「賭けるかい？」
Fin
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