Title : Perception of Snow

作：Mojo
訳：tomo

*この作品はシーズン6の「トライアングル」から数週間後の二人という設定です。
*18歳未満の方は、ご遠慮くださいませ。

***

あっという間にバーが閉まる時間になった。
これまでバーの閉店時間までなんていたことなかったのに、いつのまにか時計は午前
1時を指していて、私達はバーを後にすることにした。
私達につきあってくれたピアノプレイヤーのライアンは、最後に私達に「素敵なクリ
スマスの夜を」と言ってくれた。
彼の表情からすると、モルダーはかなりな額の追加チップをあげたようだ。

踊り疲れてすっかり足が痛くなり、靴を脱いで手に持ちながら、モルダーに握られて
いない方の手に持って廊下を歩いた。
バーで付いたタバコの煙とモルダーの汗とコロンの混ざった香りがする。
ロビーに戻るとそこはもう暗く、誰もいないように静まりかえっていた。

通り過ぎようとするとある物に目が引きつけられ、立ち止まってモルダーの腕を引い
た。

「どうしたんだ？」

それは美しいクリスマス・ツリーだった。
12フィートもあるような、大きなクリスマス・ツリー。
飾りはシンプルにホワイトのライトと金色のエンジェル達が飾られ、その間にゆった
りと金と銀のガーランドが巻かれていて、オーナメントの一つ一つにライトの明かり
が反射して、まるでオーナメント自身が輝いているように光り輝いていた。

何て綺麗なの。

「メリー・クリスマス、スカリー。」
ずっと黙ってツリーを見上げていたモルダーが口を開いた。
「行こう、君に見せたい物があるんだ。」



***



エレベーターが12階に付いてやっと気が付いたが、私達はモルダーの部屋に向かって
いた。

「夜景が凄いんだよ、スカリー。」
彼は確かめるように私に言いながら部屋のキーを回した。
「絶対に見る価値がある。」

モルダーは部屋の明かりを点けずに暗いまま私を窓際へ連れて行き、厚いカーテン
を持ち上げるように引き開けた。
「見てごらん。」

大きな窓の外に、宝石をちりばめたような美しい風景が広がっていた。
街の明かりとイルミネーションが川の波をキラキラと輝かせ、船着き場に停泊してい
るたくさんのボートも一隻残らずクリスマスのデコレーションがされて、まるでおも
ちゃの船ようだ。
そして雪。
白い雪が川の中に音もなくゆっくりと降り続き、夜の闇を幻想的に飾っていた。
空は雪雲で厚く覆われていて、そのせいかここだけが他の場所から切り離されている
ように静かで、幻想的な世界に包み込まれているようだ。
そして街中の屋根は雪で真っ白に覆われている。あるものは闇と、光と雪。
今まで見たことのない世界だった。

「とても綺麗だわ、モルダー。」
私はガラスに指を付けて静かにつぶやいた。
「雪以外わね。雪は苦手よ。」

モルダーの腕がそっとウェストに巻かれるのを感じた。彼は私を守るように後ろから
抱きしめ、窓の外の風景を肩越しに見つめた。

「スカリー、この雪はあの南極にあった雪と同じなのかな。」

「わからないわ。」
私は答えたが、自分の声がか細く遠いところで言っているように聞こえ、南極での思
い出がまた私の心の中を通り抜けた。

凍死させまいとして彼を抱きしめる私自身の腕。
雪の上を反射する強すぎる太陽の光。
残酷なほどの寒さ。
モルダーは地球の果てまで私を助けに来た。

私を助けるためにどんな危険もかえりみずに・・・なのにまだ私は彼に言えずにいる
・・・。

「スカリー。」
彼が優しい声で言った。

無意識に私は震えていて、彼は私を振り向かせて安心させるように目を見つめた。
いつのまにか私は涙をあふれさせていて、まばたきすると一粒の涙が頬を伝い落ちて
胸元ではじけた。
これまでモルダーの前で泣いたことなど無かったのに。最低でも、そうしないように
と努力していたのに。
私はいつでも強い自分でいたかったから。

「ごめん、思い出させて。」
彼は低くつぶやいた。

私はこれ以上泣くまいと深く息を吸い込み、考えていることに集中するようにした。


「いいえ、モルダー。言ってくれて嬉しいのよ。私達はこれまであの時のことを思い
出して話すことをしなかったでしょう？あなたは危険を顧みずに私を助けに来てくれ
たのに、私はまだ何も言ってない。モルダー・・・私はあなたを・・・つまり、少し
前にあなたが言ってくれた事なのよ。でも私はふざけてまじめに聞こうとしなかっ
た。私はあなたが本気で言ってないかのようにして、ごまかそうとしたんだわ。で
も、それは怖かったからなのよ、モルダー。私達がこれまで築いてきた関係が変わる
のが怖くなって・・・。でもモルダー、私は・・・私はあなたなしではもうどうする
こともできなくなっているのよ。」

頭が真っ白になり、ちゃんと言おうと思ってきたことが全て飛び去ってしまって、自
分で何を言ってるのか分からなくなった。
彼にちゃんと理解してもらえているかしら。

モルダーの目は私を捕らえたまま動かずに、ずっと瞳の奥を見つめていた。
そして手のひらを私の顔に優しく当て、そっと両手で包み込んで、ゆっくりと、頬
と、唇の上を温かい手のひらで触れていった。

「僕こそ君がいなければどうすることもできないんだよ、スカリー。」

その言葉を聞き終える前に彼の唇が私に重なった。

空港でのキスと比べ物にならないほど深く、舌で口の中を探検されてほんの少しの隙
間もないほど唇を重ね合った。
私は言えなかった言葉全てをこのキスに注ぎ込みたかった。そして心の中の全てを彼
に渡したかった。

私達の唇は激しく重なっては時々離れ、でもすぐにお互いを求めて深く重なり合っ
た。

「愛してるわ、モルダー。」

とうとう私の口から真実の言葉が出た。
言葉が出た瞬間、これまで縛られていた心が、まるで自由を得たように軽くなった。

終わった。
とうとう言ったわ。もうどんな言い訳も通用しない。

モルダーの瞳の色が濃くなり、これまで見たことがないような情熱の炎が奥に燃える
のが映った。
彼は私のあごを指で持ち上げると、上から覆い被さるようにキスした。
今度はゆっくりと、より深いキス。
とうとう私は息ができなくなって唇を離した。

彼が親指で私の頬を拭くのを感じて、私は自分が泣いていたのだと分かった。
でもこの涙はさっきの涙とは違う、安心と、喜びで流した涙だった。

「君は僕の全てなんだよ、スカリー。」
モルダーが額にキスしながらささやいた。
「君を取り戻すためなら、僕はどこまでも追いかける。僕の人生は君で始まって、君
で終わるんだ。」

彼は一旦私から離れ、窓際に置かれたアームチェアに腰掛けた。
そして腕を伸ばして私をそばに引き寄せ、腕の中に抱きしめ直した。
私達は長い間そのまま闇の中で抱きしめ合い、ただお互いを腕の中に抱きしめ、激し
く唇を重ね合った。
私達は言葉で交わしきれない想いを、手や、体温や唇で伝え合おうとしていた。
これまでずっと平行線を描き、お互いの姿を映し出す鏡のような存在の私達だったけ
れど、今、私達を隔てていた最後のバリアーが解かれた。
もう私達が一つになるのを邪魔するものはない。

心の中に何の迷いもなく、愛しい気持ちだけが私達の周りの空気の温度を上げていっ
た。
息をこぼすたびに体温が上がり、一つになりたい思いでお互いの体を抱きしめ、手を
お互いの体にさまよわせた。
しかし私がモルダーのシャツのボタンを外そうとして指をかけると、彼はそっと手で
止めた。

「スカリー・・・。」
私が唇を離すと、モルダーは少し息を切らしながらささやいた。
「今でなくてもいいんだよ。本当だ、僕は今殺されたって、世界中で一番最高に幸せ
な男として死ねるよ。」

「死ぬなんて言わないで、モルダー。」
彼の耳にキスしながらささやき返した。
「でもあなたにもっと幸せになってもらいたいの。」

彼を愛している。
私が誰より愛している男。
もう私達は何度もお互いを失いかけてきた。想いを殺して伝え合えずに、どれほどの
時間を無駄に過ごしてきてしまったんだろう？

私達はまた激しく、深いキスを重ねた。
それは先に進む意思表示の意味だった。

「後悔しないかい？」

「しないわ。」

私はゆっくり彼のシャツのボタンを外しだした。

モルダーは指先で私の背中のファスナーを見つけ、ゆっくりと引き下ろした。
私はその瞬間に声を上げそうなほど心臓が大きく鼓動し、そのかわりに声を殺してた
め息をこぼした。
立ち上がってワンピースを体から落とすと、モルダーは悪戯げに笑いかけ、彼も立ち
上がって私を抱きしめると、膝に腕を回して抱き上げベッドに向かい、私を真ん中に
そっと降ろした。
ベッドは窓際の冷気でひんやりとしていた。

彼の指がゆっくりと私のおなかの上で円を描き、胸の上までさまようように這ってく
ると、またおなかにゆっくりと戻ってそこにキスを落とした。
そして背中に手を回して手探りでブラのホックを探しているようだったが、なかなか
見つからずに彼はあせったようにうめき声を上げた。
そしてブラの前に手を当てて、ようやくホックを見つけだした。

「君とこうするファンタジーを数え切れないほど想像したけど、ホックが前にあるの
は初めてだ。」
彼は微笑みながら耳元にささやいた。

私は少しも彼に体を見せることにためらいはなかった。
これはモルダーだから。私のモルダーだから。
ずっと私が望んでいて、この世でたった一人信じている人だから。

二人の間に、恥ずかしがるようなことは一つもない。

彼はブラのホックを外した。そして私の胸に触れ、私は彼の大きな手でつかまれると
直に彼の肌に触れた刺激で、背中を弓なりにさせて声をもらした。

私はブラを肩からすべり落とし、モルダーのシャツも脱がせ、一刻も早く彼の全身を
素肌で感じたい欲望で体が燃え上がった。

「肌が赤くなってるよ。」
モルダーが私をじっと見つめながらささやいた。
「すごく熱い・・・。」

「あなたの肌も・・・熱いわよ・・・。」
私はまた彼にキスを繰り返しながら答えた。
そして彼の首筋に、鎖骨の上にキスをしながら彼のスラックスのボタンとジッパーを
はずし、信じられないほど素早くそれを彼の脚から引き抜いた。

「スカリー、脱がすのがうますぎるよ。」
彼はからかうように笑い、私がピッタリと肌を押しつけると、のどを鳴らすような声
を出した。そして手のひらで私の体のカーブを余すところなく記憶するように、何度
も手をさまよわせた。

膝に彼の力強く主張する物が押しあてられた。その張りつめた感触は私の体の中にも
火を付け、もう前には戻れないことを本能的に悟った。
私は手を伸ばし、ボクサー・ショーツの上からそっと触れてみた。
これが私が体の中で感じたかった彼の体の一部。
指先を這わせてそっと握ると、手の中で跳ねるように力強く反応した。

彼は激しく、時々遊びながらキスをして、その間に私のストッキングとパンティを引
き下ろした。
私は彼の前で完全な裸になった。

「綺麗だよ、スカリー。」
モルダーは私の膝に手を這わせながらささやいた。

私も彼のボクサー・ショーツを手とつま先を使って脱がせた。
「本当に器用なんだね。」
モルダーは微笑んだ。
「僕の夢を叶えてもいいかい？」

彼は指で少し私の肌を撫でた後起きあがり、キスしながら覆い被さるように私の体を
抱きしめた。

「動かないで。」
そう言い終わらないうちに、彼は私の体中にキスを降らせながら舌をはわせ、ゆっく
りと下に降りていった。
私は次に起こることを予想して、心臓が早鐘のように高鳴り続けた。

私はゾクゾクしながら彼のキスの感触に全ての神経を集中していた。
体が燃えるように熱く、思考のコントロールは既に効かなくなっていた。

天井を見上げると私達の体のシルエットがぼんやりと浮かび上がり、彼の大きな体が
キスをしながら私の体を降りていくのが映っていた。

モルダーの舌が膝の内側を這い、茂みにキスした衝撃で私は息をのみ、続いて体中を
走った甘い快感にこらえきれずに頭をのけぞらせて声を上げた。
彼の舌は一番敏感なところをかすめては軽くキスし、その後すくいあげるように舌で
転がし続けた。
私は彼の与える刺激にただ体をまかせ、ヘッドボードを握りしめて、つぶってしまい
そうな目を我慢して開け続け、彼が私を愛撫している様子を目の中に焼き付けた。
私はあえぎ声をあげながら、リラックスしようと何度も深く呼吸した。
でもそうする度に体中に炎と快感が駆けめぐり、彼のキスの速度を落としてもらわな
いとこのまま気を失ってしまいそうだった。

ヘッドボードを握っていた手を離して彼の髪の中に指を這わせて顔を上げさせた。
彼は私を見つめてキスをやめ、私は返事の変わりにうなずいた。

来て。
もう待てない。

モルダーは起きあがって再び覆い被さるようにし、私の顔の横に両肘を付いて、瞳を
見つめながら私の髪を撫でた。

「ゆっくりね。」
私は彼自身が膝の内側にせまってくる一秒一秒を味わいながら付け加えた。
「お願い。」

「君の言うとおりにするよ。」

私は彼の首につかまって体を支えた。
彼はこの上なくゆっくりと私の中に入ってきて優しく動き始めた。
私は彼が入ってくるのを感じて微笑み、彼の耳にキスした。

私達は一つになった。

彼の瞳が暗く光り、その光はまるで鈍いライトをあてたかのように瞳の奥で反射して
いた。

「愛してるわ。」
彼に腰を持ち上げられながらささやいた。
「本当よ。」

モルダーは少しの間動きを止めて私を見つめた。
彼は何も言わなかった。
その代わりに、今度は一層深く彼が入ってきて奥まで貫いた。
二人のリズムが重なるように動き始め、優しかった動きは次第に強くなり、激しく腰
を打ち付けてきた。
私はこらえきれなくなって声を上げ続けた。

彼は言葉ではない方法で私に語りかけている。
孤独と、どれほど私を求めているかを彼は体で証明していた。

モルダーが私を愛していく様子を見逃したくなくて、彼の瞳をまっすぐ見つめて目を
そらさなかった。
彼も私の反応を逃さないように見つめていたが、絶頂の波が近づき、私達は波にさら
われまいとしてすがりつくように唇を重ね合わせた。
モルダーが激しく腰を受け付けた時、ついに私は絶頂の波に飲まれて彼を抱きしめな
がら達した。

彼も私に続いてクライマックスを迎えて、叫ぶような声を上げてそのまま私の中で熱
い全てを解放し、私の上に崩れ落ちた。
私は彼を抱きしめ、ずっとこのまま動きたくなかった。時間を止めて、今の余韻をい
つまでも味わっていたかった。

モルダーの額の汗を拭いてあげると、彼は目を開いて私を見つめた。
彼の表情には何の陰りも、苦悩もなく、ただ熱のこもった目で私を見つめて微笑んで
いた。

「愛してる。」
モルダーは汗で私の顔に付いた髪をそっとはらい、何度もキスしながらささやいた。

「愛してるよ・・・誰よりも、スカリー。」

その言葉を最後に、私達は眠りに落ちていった。
幸せに、満足とけだるい疲れとともに。



***



ふと目が覚めると、部屋はまだ暗いままだった。
モルダーはまだ眠っていて、彼の腕が私を守るように腰に巻かれ、丸くなって眠って
いた。

時計は午前6：23を指している。
クリスマスの朝だ。
私はクリスマスの朝は特別早く起きてしまう。

ベッドから降りて窓辺に近づくと私達の服と靴があちこちに脱ぎ捨てられていた。

〈まるで嵐の後ね。〉
私はクスッと笑った。

カーテンを開けるとまだ外は静かに雪が降り続いていたが、空は明るく、もう少しで
やみそうな気配がした。
昇ったばかりの太陽の光が雪を反射して、キラキラとダイアモンドのようにきらめか
せて空を舞っている。
一つ一つが輝き、透明で、真っ白な光達。
街の建物全体に輝く雪のマントをまとったような、昨日とは違う、白い雪の世界が広
がっていた。

〈ホワイト・クリスマス。〉

全てが雪で変わった。



私は後ろで眠っているモルダーに微笑んだ。

〈もう起きてもらわなくちゃ。〉

これから二人の新しい世界が始まるのだ。




The End




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この作品は「Weekend series」というシリーズ作品の始まりの物語です。
このシリーズはこのお話で恋人同士になったモルスカが、様々な事件を解決しなが
ら、恋人として、パートナーとして愛を築いていく、とっても素敵な作品でございま
す(^^)
こちらの「Perception of Snow」を気に入って下さったら、ぜひ他のお話も読んでみ
て下さいませ♪


tomo