From：http://www.angelfire.com/ms/KtblleStorage/supernova.html
Disclaimer：Not mine; don't sue.
The Marionette Rebellion
-11-
注：この作品はシーズン9「The Truth」のスポイラーficです。ネタバレをお避けの方はお読みにならないでくださいませ。
*この作品は、モルダーとスカリーが希望を信じて、力を尽くしてウィリアムを取り戻す物語です。
*長めの作品ですので、できればお時間のあるときにゆっくりお読みいただけたらと思います。
作：supernova
訳：tomo
-X-
Epilogue
-X-
2年前の今頃、ロズウェルの小さなモーテルの部屋でScullyにこう言った。
これまでたくさんの“死”が僕たちを取り囲んでいた。僕たちはその死から学び、死者の声に耳を傾け
ることで力を身につけて、僕たち自身を救う手だてにできるのではないだろうか、と。
僕は人生を変えていった不思議な事件や出来事をじっと思い出しながら、彼らが話しかけてきた言葉を再び思い起こした。
Xは刑務所の牢獄の中でこう尋ねてきた。
誰の真実を暴いたのか、と。
The Lone Gunmenは道に立って僕を見守りながらこう話しかけてきた。
どうしてこんなことを続けるんだ？真実はもうみんな分かっているのに。
たった一人で前にいる1000人の敵の裏をかいて包囲し、出し抜くことはできないのは分かっているだ
ろう？と。
Scullyの腕に僕たちの小さな娘、Hopeを抱かせていると、彼らの気配に気が付いた。
振り向くと、さっきの懐かしい人々が温かい日差しのような微笑みをたたえて僕たちを見つめていた。
Samanthaが前に近づいてこう言った。
もう行きなさい、brother。
Samanthaの声が僕の意識に浸透すると共に、これまでの記憶が心の中をゆっくり通り抜けていった。
ガンに苦しめられていた頃のScully。
Emilyの空っぽの棺。
Samanthaの事件ファイル。
Kurt Crawfords。
Bounty Hunter。
終わりのない嘘。
嘘の中の真実。
Williamとの離別。
逃亡。
いつも“奴ら”に見つからないようにと望みながら逃げていた。
Scullyと僕が交わしたロズウェルでの会話が心の中にフラッシュした。
そしてやっと、Samanthaの言葉が意味することに気が付いた。
Samanthaは僕に『“このこと”から立ち去れ』と言ったんだ。
死から学び、自分たちの人生を生きるために“行け”、と。
かつての僕には難しいと思えていた選択が、今はこのたった4ポンドの、眠そうな蒼い瞳にピンク色のやわらかい肌のHopeを抱いていると、難しいこととは全く思えなかった。
僕はずっと敵に拳を叩きつけ、奴らはそれと同じ答えを僕らにしていた。
僕は自分にできる限りの方法で奴らと闘い、叩きつけてきたが、奴らはそれ以上の強さで叩き返し、ゲームをコントロールして僕らを操ろうとしてきた。
それはメビウスの輪のように終わりのない闘いだ。
そして、その輪の中にいる限り勝者はない。
誰も負けることもない。
永遠に闘いが続いていくんだ。
今、僕の目の前に選択が提示された。
ここが分かれ道だ。
そしてついに、僕は父ができなかったことを選択をした。
ここから去ろう。
父と僕は全く反対の所にいたが、表面上は似たような人生を歩んでいたのかもしれない。
だがそれは真実の探求のために、喜んで全てを犠牲にできるか、という分かれ道で決定的に異なった。
僕は家族の誰一人も犠牲に出しはしない。
父はこの分かれ道で妹のSamanthaを犠牲にし、陰謀に参加することを決めた。
そして毎晩その運命的な夜のことを後悔し続けた。
一方僕は妹の運命を見届けるまで、父の過ちを取り消そうとして7年間を費やした。
7年をかけて探したが、父の過ちを変えられなかった。
そして得られた最後の発見は、もうSamanthaはこの世にいない、ということだった。
僕は父がSamanthaにしたことを一生許さないだろう。
だが心の一部分では、父のお陰で僕が同じ過ちを犯さずに済むことができた。そのことには少し感謝を感じている。
僕は次から次へと陰謀を暴きながら何年も過ごしてきた。
だがそれは結局真実ではなく、真実の周りに生まれていった、もう役に立たない過去の事実の一片だけだった。
そしていつも得たもの以上のものを失ってきた。
僕自身が犠牲になるならかまわない。
だがScullyやWilliamやHopeを、絶対に失うことはできない。
奴らの陰謀から立ち去ることは安全を保証することでも、真実に背を向けることでもない。
だがもし僕が手を引き真実の探求をすることさえ犠牲にすれば、奴らはもはや脅威でも利用価値もない僕らをただ放っておき、僕たちに自分の人生を送らせることだろう。
真実と家族の選択？
何て簡単な答だ。
家族の方が何より大切だ。
その選択の正しさは、きっと時間が僕たちに教えてくれるだろう。
とらえがたい真実は、常に星でいっぱいの宇宙の中に浮かんでいる。
それは僕たちが母親の子宮の中から誕生するより前からそこに存在していたんだ。
そして、僕が去った後も、真実は存在し続けるだろう。
だが僕の人生は探求のためにあるのではない。
人生の限られた時間を愛する人と分かち合い、共に生きていくためにあるんだ。
2012年はもしかしたら僕のつかんだ“真実”の通り、世界の終わりなのかもしれない。
だが、ひょっとしたら“真実”はただ2013年の冬が、Hopeの黒いまつげに雪のかけらを降らせるだけなのかもしれない。
そして2013年のニュー・イヤーをScullyと二人のティーンエイジャーと一緒に、焼きたてのハンバーガーと花火に囲まれて迎えているのかもしれない。
マウント・ウェザーでの事件は僕をコントロールするために作られた陰謀で、真実はまた別の陰謀の中に隠されていることだろう。
過去の2年間を振り返り、自分がどんなに幸運に恵まれていたかに気が付いた。
何より僕にはScullyがいた。
彼女は僕の呼吸する空気。
僕の血管に流れる血。
孤独をいやしてくれる親友。
そして僕の情熱の完璧な恋人だ。
彼女がいるから僕は朝起きて微笑むことができ、そして夜は満たされて眠ることができる存在。
僕は死ぬまで子供達の父親として、そしてScullyを愛し抜くことを誓おう。
僕たちの息子、William。
この子は僕たちがどうやってこの子を授かったのか、どんなことを乗り越えて再び取り戻したのか。
そして今一緒にここにいられる奇跡を思い出させてくれる。
そしてHope。
小さな僕たちの娘は、希望に満ちた素晴らしい明日を僕たちに証明してくれる素晴らしい贈り物だった。
僕は多くの犠牲を積み上げて、とうとう平和をつかみ取った。
僕の誤ち、過去の選択、アブダクト、撃たれた傷、両親、妹。
シンジケートの陰謀から危機一髪で逃れたこともあった。
それらの運命を僕は憎み、人生を悲劇のように考えさせていた。
だが同時にきまぐれな運命の手が、Scullyを僕の人生に巡り逢わせてくれたことに感謝をしていた。
彼女は数え切れないほど僕を癒し、愛してくれ、そして二人の子供を産んでくれた。
そして今、運命は過去を振り返り悲劇を見つめる代わりに、僕たちがそこからやりなおすチャンスを授けてくれたんだ。
Hopeが生まれて以来、僕には霊が見えなくなった。
危険を知らせる電話で早朝に起こされることもなくなった。
監視や影が僕たちに取り付くこともなく、陰謀のために僕の家族を要求する人物もいなくなった。
だが、きっとしばらくの間はバックミラー越しにいつまでも同じ車がついてこないかどうか確認し、深夜の物音にも気を配り、肩越しに尾行がないかどうか確認し続けるだろう。
現在僕は毎朝5：30に起きてシャワーを浴びる前にHopeをScullyに抱かせて授乳させ、メイン州バンゴア警察署に出勤して、今日最初の事件を調べる前にデスクに座ってコーヒーを飲むのを習慣にしている。
そして長い一日が終わって家に帰ると、愛する家族が楽しくはしゃぐ声が僕を出迎えてくれる。
ScullyはWilliamとHopeに絵本を読んで聞かせていて、子供達はあたたかく、陽気な母親の声で物語が進むのをじっと耳を澄ませていた。
彼女は優しい手で二人のブラウンのカーリー・ヘアをなで、微笑みながら呼んで聞かせていた。
僕も数え切れないほどの土曜の午後をWilliamにどうして空が青いのか、そしてどうしてWilliamが夜空のお月様より大切なの存在なのか、星も、太陽も宇宙の中で大切な役割をしていることを話して聞かせた。
夜は僕とScullyは一つに溶け合い、満たされ、もう僕たちが別々の体を持っていることを忘れるほど一つになって、愛をささやき合った。
ある日Hopeを抱いていつものように3つのベッドルームのささやかな家の階段を下りると、いつものようにWilliamがScullyの足によちよちとへばりついていたが、少しだけ変化の予兆があった。
Scullyと僕はある事で真剣に議論してあった。
僕は彼女に“もういい時期だろう？”と言い、それが子供達に与える良い影響を話し合って、そしてついに今日そうすることに決めたんだ。
「準備できた？」
Scullyは忙しさにため息をつきながら僕に声をかけた。
Hopeはクラッカーをオートミールの中に入れて笑い声をはじけさせ、Williamははしゃぎまわって階段を飛び降り、玄関のドアまで駆けていった。
家庭的な最高の喜びだ。
「ああ、いつでも出られるよ。」
僕はScullyがWilliamに靴を履かせるのを見ながら言った。
「嬉しいかい？William。」
「うれしい！ぼくのこいぬだよ、パパ！」
Williamは嬉しそうに答えた。
そう。これからScullyと僕は子供達と一緒に、子犬のSparkyを買いに行くんだ。
安らぎと、喜びで心が弾む毎日。
これが僕たちが選んだユニークな第2の人生なんだ。
僕たちは自分のやり方でゆっくりと、
時間をかけて完璧な毎日を築いていくことだろう。
「Woman、遅いぞ。早くWilliam達と車に乗らないと置いてくぞ。」
僕はウィンクしながらScullyをせかした。
「せかさないでよ、Mulder。そっちこそおむつの入ったバッグとWilliamを忘れないでよね。でないとうんちのついた子がこの家族にいるって見せなきゃならないわ。」
Scullyはポーカーフェースで切り返した。
「うんち、うんち、うんち。」
Williamが繰り返した。
「またママから新しい言葉を覚えちゃったぞ。」
「うんち、うんち、うんち！」
「William、うんちなんて言わないの！」
Scullyと僕は微笑み合って車に向かった。
丸一日か、それかたったの9分後には子供達も車のシートに座れるだろう。
車を発進させるとすぐWilliamは子犬のことを話し始め、Hopeは口からよだれの泡をたらしておしゃぶりをくわえていた。
Scullyは手を僕の方に伸ばし、優しく僕の手に重ねた。
「幸せ？」
「もちろん。」
彼女は僕と同じ事を考えているように幸せそうに微笑み、僕たちが築いたこの生活がずっと続いて、最後の時もそう思っているかしら、と聞いた。
僕は正直に答えたくて、しばらく静かに考えた。
過去の姿を思い出し、未来の僕たちのイメージがぶつかり合って、別れや、心の痛み。逃亡、再会、怖れ。そしてその全ての時を支えていてくれた友情と愛が、心からあふれ出てきた。
運命はそれら全てを僕に与え、そしてScullyを、それにWilliamとHopeを人生に与えてくれたのだ。
僕はScullyに振り向き、そしてまた前を向いて微笑みながら、目の前に続く道を見つめて答えた。
“I want to believe”
---END---
====================================================================================
シーズン9のフィナーレを知ったときは、ショックでかなり沈みました。
モルスカがあんな境遇になったまま終わりなんて、とても納得できません。
それに、William君をモルスカから引き離したことも理解できませんでした。
本当はですね、私の中ではもうとうに二人はモルファミになって幸せな家庭を築いているのですが、本編では・・・。
どうしてもモルスカにWilliam君を取り戻してほしくて、どうしてもモルスカに、フィナーレのようなことがあってもちゃんと幸せになってほしくて、この作品を読み始めました。
とてもつらい部分も多かったのですが、この作品のエピローグを読み終えたとき、やっと気持ちが落ち着くことができたような気がしました。
過酷なことがあまりに続いた二人でしたが、これでやっと解放されて、幸せに暮らしてくれるんだなあ、と安心することができました。
こんな素晴らしい作品を書いて下さったsupernovaさんに、感謝の気持ちでいっぱいです。
そして、リクエストして下さって、各章に素晴らしいコラをつけて下さったHISAYOさんに感謝、感激です！
そして、最後にbagpiperさんの送って下さった詩を皆様へ・・・。
皇后陛下がIBBYのセレモニーで、英語で朗読された詩だそうです。
私もスカちゃんに重ねてしまって、ジワ〜っとしましたです・・・（；；）
最後まで読んで下さって、ありがとうございました(^^)
tomo
On the cheeks of your innocent newly born,
Mothers,
Do not drop tears of your own despair.
Though now these cheeks are red and small,
Hardly more than damson-plums,
Who knows that someday
They would not flush and glow in a battle for humanity.
生まれて何も知らぬ吾が子の頬に
母よ 絶望の涙を落とすな
その頬は赤く小さく
今はただ一つの巴旦杏（はたんきよう）にすぎなくとも
いつ 人類のための戦いに
燃えて輝かないということがあろう…
