From：ephemeral@ephemeralfic.org
Disclaimers：M&S used to belong to CC but I think Fox now owns them.
 Will belongs to M&S, who love him too much to sell him.

TITLE 
 Man to Man Talk9

〜Fox Mulder is waiting for Santa〜

作：Girlie＿girl17
訳：tomo

リビングルームのクリスマスツリーが美しい光を放ってまたたき、キッチンからはシナモンと香辛料のまざったいい匂いがクリスマスソングの曲とともに流れていた。
ダークブラウンヘアの長身の男がブルーのTシャツを着てカウチに座り、眠っている赤ん坊を腕の中で揺らしながら暖炉の火を見つめていた。
そして赤ん坊の手をそっと握ると唇に寄せ、指に優しくキスした。

〜Fox Mulder is waiting for Santa〜

モルダーとスカリーはあの感謝祭の後、クリスマスは3人だけで静かに過ごすことを決めて親戚達に邪魔されないようにしようと決めていた。
それにタイミング良くチャールズは仕事の都合で実家に戻れなくなり、ビルも今年はタラの両親の家で過ごすことになった。

〈タラの両親は大変だな。〉

モルダーは苦笑した。
ミセス・スカリー・・・マギーだけが残ってしまったのだが、モルダーはマギーを実の母親のように思っていたので、スカリーが母親とは一緒に過ごしたいと言うとすぐに賛成した。
マギーはいつも家族の中で彼を守り、誇りに思ってくれていた。

そういうことで、モルダーはすっかり静かなクリスマスが迎えられると思っていたのだが、それはすぐに自分の悪友達によって取り消されてしまった。
フロヒキー、ラングリー、バイヤース、それにスキナーもクリスマス・ディナーに参加することになったのだ。
イヴの朝、マギーがやってきて明日の料理の支度に追われるスカリーを手伝ってくれ、その後夜まで今年最後のクリスマスショッピングを母子二人で楽しんできた。
モルダーとウィルはもうすでにプレゼントの用意はできていたので、その間にツリーの根元にプレゼントを飾って置いた。

彼がウィルをベビーベッドに寝かせて部屋のドアを閉めると、買い物から帰ってきたスカリーの明るい笑い声がリビングから聞こえてきた。
彼女の笑い声は幸せと楽しさで溢れていて、モルダーは過去のつらかった時の彼女の表情を思い出して胸を熱くさせた。
今の彼女はつらいことなど微塵もなく、ただ愛する夫と子供へのプレゼントを買ってきた喜びで声まで輝いている。
スカリーは幸せの中に包まれていた。
モルダーは自分がその一部になれたことに、言いようのない喜びを感じていた。

リビングへ行ってスカリーのコートを脱ぐのを手伝い、お帰りのキスをした。
「ただいま、モルダー。ウィルはどうしてる？」
「今ベッドに寝かせてきたよ。」
「ぐずって今まで眠らなかったの？」
「いや、抱っこされてずっと眠ってたよ。今ベッドに移したんだ。」
彼は笑いながら答えた。
ミセス・スカリーは二人に微笑みながら買い物袋を持ってキッチンへ行った。

モルダーはスカリーを抱き寄せ、彼女の首筋に頬ずりしながら耳元でささやいた。
「メリー・クリスマスイヴ、スカリー。」
スカリーは大きな笑顔を彼に見せながらささやき返した。
「メリー・クリスマスイヴ、モルダー。」
スカリーはモルダーの手を握ってキッチンへ行った。
キッチンではマギーが買い物を冷蔵庫の中に入れていた。
「二人ともココア飲む？」
「飲むわ。」
スカリーは笑顔で答えてダイニングテーブルの椅子に座った。
モルダーも横に座り、また彼女の手を握ってキスした。
二人は人前では決して自分の柔らかい部分を見せたりしないのだが、マギーの前ではそういった部分をすっかり出していた。
「スカリー、ツリーの下に並んでいるのを見ると、今年のサンタは特にウィルに優しかったみたいだな。」
「そうね、モルダー。でもウィルはとってもいい子だもの。」
「でもいい子だったのはウィルだけじゃなかったと思うよ。」
モルダーはニヤニヤ笑いながらスカリーの背中を撫でた。
マギーが熱いココアの入ったマグカップを三つ持ってきてそれぞれの前に置いた。
「確かママのクッキーが残ってたわ。」
「いいわダナ、私が見るわ。」
立ち上がろうとしたスカリーをマギーがやんわりと止めた。
「太るから2枚以上食べないんじゃなかったのかい？」
モルダーがニヤニヤ笑って耳元でささやくとスカリーは軽くにらんで笑い、彼の腕を叩いた。

マギーは二人がふざけ合うのを見て微笑んでいた。

マギーはお手製のクッキーを皿に乗せてテーブルに置いた。
「このクッキーはとてもおいしいです。ダナの料理の才能はきっとミセス・スカリーから受け継がれているんですね。」
モルダーが一枚取りながら言った。
彼とスカリーは手をつないだままクッキーを食べてココアを楽しみながら、ゆっくり流れる時間を楽しんだ。

スカリーがあくびした。
「あ、ごめんなさい。」
モルダーが立ち上がって彼女の手をひいた。
「さあ、今日は疲れているんだから、それに早く寝ないとサンタが来ないぞ。」
二人は手をつないだまま、寝ている様子を確かめるためにウィルの部屋へ行って寝顔を見つめた。
ウィルは深く眠っているようで規則正しく寝息を立てていた。
二人は満足したように微笑み、自分たちのベッドルームのドアを開けた。
「モルダー待って、後かたづけを手伝ってくるわ。」
彼はスカリーを抱き寄せてあごを頭の上に乗せ、彼女も腕を彼の腰に回した。
「僕が手伝ってくるよ、君は先に寝ててくれ。明日は長い一日になるんだから。」
「モルダー、あなただって疲れてるはずよ。」
「ああ、でも今日は僕にさせてくれ。」
スカリーはあきらめたように彼の胸に頭をもたれさせた。
「わかったわ。でもすぐに戻ってきてね。」
「すぐ戻るよ。」
モルダーは彼女の髪をクシャクシャっとなで、キッチンに戻った。

ちょうどマギーがマグカップや皿を洗っているところだった。
「拭きますね。」
「あら、ありがとうフォックス。」
モルダーがディッシュタオルを取って皿を拭き始めた。
「フォックス」
マギーが話しかけた。
「はい？」
「明日はウィルには楽しいクリスマスになりそうね、あんなにたくさんのプレゼントが待っているんですものね。」
モルダーは恥ずかしそうに笑った。
「それは僕が悪いんです。見ている内に楽しくなってつい買ってしまって。」
「でもフォックス、まだ7ヶ月のウィルにラジコンのパトカーまで買ったんでしょう？」
マギーがからかうように笑って言った。
「早い内から教育しておこうと思って・・・。」
モルダーが苦笑した。

片づけが終わってマギーがキッチンの明かりを消すと、モルダーはリビングのカウチに座ってパチパチと燃える暖炉の火を見つめていた。
マギーは彼の横のアームチェアに座って、静かに座っているモルダーに話しかけた。
「いろいろなことがあった年だったわね、フォックス。」
モルダーは顔を上げて微笑んだ。
「ええ、本当にいろいろなことがありました。」
「フォックス、ごめんなさいね、そんな時にうちの家族があまり協力できなくて。」
「ビルのことですか？」
マギーは笑った。
「そうね、特にビルが。でもあの子のためにも知っていてほしいことがあるのよ。家族として、何よりダナの幸せを望んでいるの。」
「分かっています。僕も彼女の幸せを何より望んでいますから。」
モルダーは静かに薪が燃えて炭になっていくのを見つめた。


「ミセス・スカリー」
マギーはまるでスカリーのように眉を上げてモルダーを見返した。
「すみません、えーと・・・、マギー。」
モルダーは赤くなりながら言い直した。
「僕は自分の気持ちを話すのが下手で、うまく伝えられるか不安なんですが・・・でも、これだけは知っていてください。僕はダナとウィルを幸せにしたいんです。これまで一人でいたときとは変わって、真っ先に僕の優先することはダナとウィルになりました。全てが良く変わったんです。僕たちにこれから何もないと言い切ることはできませんが、全力で僕は守っていきたいんです。つまり僕が言いたいのは、・・・これから深夜の電話を心配することなく眠ってください、ということなんです。」
マギーは笑ってうなずいた。モルダーが何を言おうとしているか彼女には分かったのだった。
「もう寝ましょう、マギー。明日の朝は特別早そうですから。」
モルダーとマギーは立ち上がった。
「おやすみなさい、フォックス。」
「おやすみなさい、マギー。」
「フォックス、いつか“ママ”と呼ばせてみせるわ。」
モルダーは微笑んで、マギーがシャワーを浴びにバスルームへ行く後ろ姿を見送った。

モルダーはウィルの部屋のドアを開けてベビーベッドに近づいた。
マギーは今夜ウィルの部屋で寝ることになっているので、顔を見られる最後のチャンスだった。
のぞき込むと、ウィルはぱっちりと目を開けて指をくわえていた。
モルダーは驚いてウィルを抱き上げた。
「Heyウィル、どうして起きてるんだ？サンタが来るのを待っているのかい？」
ウィルはあくびをして体を伸ばした。
モルダーはウィルを抱いたまま、そばにあるロッキングチェアに座ってやさしく揺らした。
「さ、目をつぶってウィル。すぐに楽しい夢が見られるぞ。」
ウィルは鼻をこすってまたあくびした。
「明日はいよいよクリスマスだな、ウィル。本当のことを言うと、パパもママもわくわくして眠れないくらいなんだよ。」
ウィルは父親を見上げて何か赤ちゃん語で話しかけた。
「そうだな、パパは少しわくわくしすぎかな。でもお前だってわくわくしてるだろう？明日はお前はウォルターおじさんのプレゼントを着て楽しい一日を過ごすんだ。FBIの小さいジャケットをプレゼントしてくれたんだよ。」
ウィルはもう一度あくびして、ゆっくりまぶたを下ろしだした。
「さ、もう眠るんだ、ウィル。夜中におばあちゃんを起こしちゃだめだぞ。」

モルダーがウィルをベビーベッドに寝かせると同時に、マギーが部屋に入ってきた。
「あ、えーと・・・、ちょっと寝る前にウィルの様子を見ておこうと思って・・・。」
マギーが優しくモルダーの腕をポンと叩いた。
「フォックス、愛情を表現することを恥ずかしがらなくてもいいのよ。」
「ええ、分かってます。ただ少し驚いて・・・。」
「あなたは良くやってるわ。」
「ありがとう、・・・おやすみなさい。」
モルダーははにかみながら言い、部屋から出てドアを閉めた。

マギーはベビーベッドに近づいて、ウィルの柔らかな髪をそっとなでながらささやきかけた。
「ウィル、あなたのパパとママはあなたのことを心から愛してるわ。そして私もよ。だから安心しておやすみなさい。メリー・ファースト・クリスマス、ウィル。」



and to all a good night.



End