From：ephemeral@ephemeralfic.org
Disclaimers：M&S used to belong to CC but I think Fox now owns them.
 Will belongs to M&S, who love him too much to sell him.

TITLE 
 Man to Man Talk8

〜Fox Mulder is Christmas Shopping〜

作：Girlie＿girl17
訳：tomo

駐車場はほぼ満車の状態で、停まっている車の屋根には朝から降り続く雪が積もっていた。
雪はクリスマス気分をより盛り上げててくれるものであるが、道を走ったり空いている駐車場を探すのには不便なものだった。
ショッピングモールの中は満杯の駐車場以上に買い物客でごった返していて、肩と肩が触れ合うくらいに押し詰められ、暖房と人ごみの暑さで皆汗をかきながら、お目当ての品物がないかと店をキョロキョロ見回していた。
長身でダークブラウンヘアの男もまた、モールの中を歩いていた。
脱いだレザージャケットと赤ちゃん用の小さなコートを肩に掛け、片手で男の子の赤ん坊をしっかり胸に抱いて歩いていた。
男の子も父親の腰にしっかり足を巻き付け、周囲の様子に眼を大きく開けて見回していた。


　　　　　　　　　　　　　〜Fox Mulder is Christmas Shopping〜


モルダーとスカリーはすでにたくさんのクリスマスプレゼントを買って親戚達に送っていた。
また、二人は週末にウィルをマギーに預かってもらい、ずっと手をつなぎながら一日中ショッピングモールを探検してウィルへのプレゼントを探し、コーヒーショップに立ち寄って休憩し、またプレゼントを探しに行って楽しんだ。
自分たちの息子のための買い物をすることに、二人は心からの幸せを感じながら笑いあっていた。
二人とも自分の息子に甘く、ウィルへたくさんのプレゼントを買い込んだ。それにモルダーはインターネットでもウィルへのプレゼントを探し、毎晩スカリーが家に帰ると、ネットで買ったおもちゃを得意げに彼女に見せてもいた。

モルダーはモールを歩きながらその週末のことを思い出して、また微笑んでいた。
彼はベンチを見つけ、同じように買い物疲れをした男の隣に腰を下ろした。
あたりで休憩している人たちもたくさんプレゼントの入った買い物袋を持ち、長いプレゼントリストを眺めながら、チェックするように頭を横に振っていた。

今日はモルダーとウィルはスカリーのためのプレゼントを探しにやってきていた。
ウィルは明るいショーウィンドーや通り過ぎる人々に気を取られて、口を開けてキョロキョロしていた。
「ウィル、今度の買い物は簡単にはいかないかもしれないぞ。」
モルダーは膝の上に乗せたウィルの顔をのぞき込みながら話しかけた。
「パ・パ・パ。」
まだ「パパ」と続けて言うことはできなかったが、ウィルは手を振りながら声を上げて父親を呼んだ。
「そうだ、ウィル。お前の“パ”だよ。」
モルダーは笑って答えた。
ウィルはベビーカーに乗っている赤ちゃんを見つけると膝の上で飛び跳ね、何か赤ちゃん語で話し始めた。
「パパにもわかるように言ってくれるかい？ウィル。」
モルダーは苦笑した。
だが突然ウィルが膝から降りようと身をよじらせたので、彼はあわてて抱き直した。
「ウィル、こら、だめだ！もし地面で遊ばせたなんて事がママにばれたら、二人目を作ってもらえなくなるぞ！」

ベビーカーが人ごみの中に消えていき、ウィルはがっかりとした表情を浮かべた。
「お前は3歳以下の子供を見つける天才だな、ウィル。」
ウィルは今日は赤とブルーの格子縞のシャツに赤いナイキの靴を履いていて、首に掛けたコーデュロイのブルーのよだれかけによだれが光っていた。
ご自慢のナイキの靴は、モルダーがせっせと買ってきてはかせているのだが、目を離すとすぐにウィルは脱いでしまっていた。
数週間前もウィルは一足なくしてしまったが、スカリーにばれることなくモルダーとウィルの間の秘密になっていた。

「Hey buddy、ママへのクリスマスプレゼントは何がいいと思う？」
ウィルは指を口にくわえながら、何か赤ちゃん語を話していた。
「お前のその言葉がわかればなあ、ウィル。」
モルダーは膝の上のウィルを揺らした。
「パ・パ・パ！」
「OK、ウィル、探し続けるぞ！」
モルダーは立ち上がってまたジャケットを肩に掛け、片手でウィルを抱き上げて再びモールの中を歩き始めた。

角の宝石店の前を通ると立ち止まり、ショーケースの中をのぞき込んだ。
「ウィル、ママに綺麗な宝石でもプレゼントしようか。」
「マ・マ・マ！」
ウィルは腕の中で体を跳ねさせながら叫んだ。
「ごめんよ、ウィル、ママは今いないんだ。」
モルダーが店内に入ってさらにショーケースを眺めていると、少し年上くらいの店員が声をかけてきた。
「何かお探しですか？」
「クリスマスプレゼントにいいものを探しているんですが・・・。」
「プレゼントは女性にですか？」
モルダーは微笑んで答えた。
「ええ、この子の母親にです。」
「マ・マ・マ！」
ウィルが繰り返した。
店員は笑ってゴールドのネックレスが並んだショーケースへ案内した。
「こちらはいかがでしょうか？」
「う〜ん、どうかな・・・、彼女は一つのネックレスをずっとしていて、特別なことがない限りはずさないほどなんですよ。」
モルダーはそう言いながら、以前スカリーがネックレスをはずした時のことを思い出して瞳の影を暗くした。
店員はモルダーの腕の中のウィルを見て言った。
「お子さまにご兄弟はいらっしゃいますか？」
「いえ、まだです。」
モルダーは少し赤くなりながら答えた。
「ではベビー・リングなどいかがでしょう。」
「ベビー・リング？」
「お子さまの今の指のサイズに合わせたリングをお作りして、それをペンダントヘッドのようにネックレスにつけるんです。もちろんネックレスに付けずにそのまま保管されてもよろしいと思います。奥様はそのリングを見るたびに、お子さまが小さかった頃を思い出すことができると思います。」
モルダーが腕の中のウィルを見下ろすと、ウィルは指を口に入れてしゃぶっていた。
「じゃあ、それをお願いします。できればよだれに負けないウォータープルーフでお願いします。」
店員は笑って「かしこまりました。」と言い、ショーケースの中からベビーリングの入ったトレイを取り出した。
ウィルの指のサイズをはかり、同じサイズのリングを選んで裏に彫版もしてもらい、クリスマス用のラッピングもしてもらった。
「やっと一つ買えたな、次を探しに行くぞ。」
モルダーは宝石店を出て人ごみに入ってまた店を探した。

何店かの女性用の店があり、モルダーは迷ったが決心して一つの店の中に入った。
店の中に入るなりウィルはカラフルでデリケートな女性用の服をつかんだ。
「こら、さわっちゃだめだ、ウィル！それにここはパパが選ぶ。」
「何かお探しですか？」
若い女性の店員が声を掛けた。
「妻へのクリスマスプレゼントを探しているんですが。」
「はい。奥様はどんなものがお好みですか？」
「えーと・・・。」
モルダーは広い店内にまぶしいほど広がる、色とりどりの服やランジェリーを見渡しながら、困ったように赤くなった。
「では、奥様のおサイズをお伺いしてもよろしいですか？」
「サ、サイズですか？」
モルダーはますます困ったように赤くなった。
「では、ご身長は・・・？」
「えーと、正確にはわからないんですが、彼女はちょうど僕のあごの下に頭がきて、それにとても小柄なんです。」
「わかりました。ではこちらのランジェリーなどはいかがですか？こちらでしたらはっきりとしたサイズがなくても大丈夫です。またはあちらのパジャマなども。」
店員は二人を店の奥のランジェリーコーナーに案内し、お奨め品を取るために少し離れた。
モルダーは目の前に並ぶテディやキャミソール、それにパジャマやナイトガウンの量に圧倒されて立ちつくした。
彼はシルクの下着の一つを手にとってウィルにささやきかけた。
「いいな。ママの下着姿はセクシーだからな、ウィル。」
「マ・マ・マ。」
ウィルも答えた。
最終的にモルダーはグリーンのサテンのナイトローブを選び、店員はそれにあわせたパジャマを選んできて、それに決めることにした。
モルダーは財布からまたカードを出して会計を済ませた。
クリスマスらしくきれいにラッピングされたプレゼントを受け取って店を出るとき、モルダーは店内を振り返った。
「ウィル、ママのお誕生日の時にはあのブルーのシルクのテディをプレゼントしような。」
そうささやきかけてウィルの頭にキスし、また人ごみの中に戻った。

そして角を曲がるとスナックフード店の並んだ休憩エリアが目の前に現れた。
「パパはコーヒーを飲むよ、ウィル。お前もジュースが飲みたいだろう？」
ウィルは父親の言ってることなど耳に入らないように、周りの店や食べ物のいい匂いにすっかり心を奪われていた。

モルダーは一つの店の前に並んだが、前には母親に連れられたいたずら好きな二人の男の子がいて、ウィルに向かって舌を出したり手を叩いて挑発しようとした。
ウィルは何も分からないようにただ二人の仕草を見つめていた。
「挑発にのっちゃダメだぞ、buddy。」
モルダーがそっとウィルにささやいた。

やっとモルダーの順番になり、彼はコーヒーとフライドポテトを注文して、片手でバランスを取りながらトレイを運び空いているテーブルを探した。
テーブルにトレイを置き、外れに重ねられてある子供用の高い椅子も運んで座らせた。
「お前のおもり用にやっぱりフロヒキーも連れてくれば良かったかな、ウィル。でも連れてきてたら、さっきのランジェリーショップから絶対動かなくなってただろうな。」
モルダーがバッグからジュースの入ったほ乳瓶を取り出すと、それまで指をくわえてキョロキョロしていたウィルはほ乳瓶に飛びついて、力強く飲み始めた。
最近ウィルは誰かにほ乳瓶を支えられなくても自分で飲めるようにまで成長していた。
それは母親のスカリーにとっては嬉しいことではあるのだが、まだもう少しの間赤ちゃんでいてほしいと願ってもいたのでなんとなく残念に思う気持ちもあった。

モルダーはカップのふたを開けて熱いコーヒーをゆっくり飲んだ。
ウィルは父親の飲んでいるものも飲もうとしてほ乳瓶を椅子のトレイの上に落とし、手を伸ばしてカップを取ろうとした。
「ダメだぞウィル、カフェインなんかまだ早すぎる、ママに怒られるぞ。」
モルダーはカップをウィルの届かない所へ置き、その代わりにフライドポテトを小さくちぎってウィルの椅子にあるトレイに置いてやると、ウィルはポテトをつかんで勢いよく口に入れた。
「パパとポテトを食べただなんて、ママには絶対秘密だぞ。ばれたらパパは全身の皮をむかれてお前も胃洗浄を受けるはめになる、“何てもの食べさせるのよ！”って。」
モルダーはスカリーのマネをして笑い、もうひとかけらポテトをウィルの口に入れてやった。
ウィルはモルダーの笑顔を返すように、同じくらい大きな笑顔を向けた。
二人でポテトを食べてしまうとそれぞれの飲み物に集中した。

モルダーは飲み終わるとテーブルの上をきれいにして立ち上がり、ウィルを片手に抱いて荷物も持ち、トレイのゴミをゴミ箱に入れてトレイを戻した。
ウィルはすっかりご機嫌で、手でモルダーの頬をパチパチ鳴らしながらそれに合わすように「パ・パ・パ」と声を上げた。
モルダーは思わず笑った。
「ウィル、お前は幸せなやつだなあ、きっとママに似たんだな。」
「マ・マ・マ！」
「そうだ、“マ”だよ。」
その時二人の前に背の高い男性と、同じほど背の高い女性が近づいてきた。
「モルダー、フォックス・モルダー捜査官ですか？」
モルダーがその声に驚いて振り向くと、目の前にダニー・ブラウン特別捜査官とその妻と見られる人物が立っていた。
ブラウン捜査官は他の捜査官と違って、彼のことを「スプーキー・モルダー」などと呼ばずに彼の捜査を評価していた人物だった。
「ブラウン捜査官。」
「遠くから見てそうかな、と思ったので・・・。」
「大当たりだ。だが今は捜査官じゃないよ。」
「いろいろあったと聞きました。」
「ああ、まあな。」
「もう局には戻らないんですか？」
「今は何も考えていないんだ。」
「そうですか・・・。ああ、確かスカリー捜査官との間にお子さんか何かできたと聞いたんですが。」
「この子が僕たちの“お子さん”で、“何か”ではないよ。」
「すみません、そんなつもりでは・・・。」
「わかってるよ。」
「それではもう行きます。お会いできて嬉しかったです。・・・お元気で。」
「ああ。」
モルダーはブラウン夫妻が何かささやき合いながら人ごみに消えていくのを見送って、ウィルにつぶやいた。
「お前とスカリーが元気でいれば、パパはいつまでも元気だよ。それにしても驚いたな。」
モルダーはため息を付いた。
「人から見て、僕がお前の父親だって見えないのかな。」
ウィルはまたモルダーの頬を手で鳴らしながら、「パ・パ・パ！」と声を上げた。
「そうだ、ウィル！お前のパパだよな！」

ウィルが腕の中から抜け出そうとしてもがきだした。
「ウィル、ダメだぞ、今日はベビーカーを持ってきていないんだから。もう少し我慢してくれ。」
二人はモールの中を歩き続けたが他に興味を引かれる店がなかった。
「困ったな、スカリーは他にどんなものを喜ぶだろう？今年はウィル、お前の最初のクリスマスなんだからもっと特別にしたいんだよ。」
モルダーはベンチに座ってウィルを膝の間に座らせた。
ウィルは足をぶらぶらさせながら楽しそうに父親に振り向いた。
「ウィル、教えてくれ、どんなものがいいと思う？何でもいい、教えてくれ！」
するとウィルは何か赤ちゃん語をしゃべりながら目の前の店を指差した。
モルダーが顔を上げると、ウィルは旅行代理店を指差していた。
「旅行かい？ママに旅行をプレゼントしたいのかい？」
ウィルは指差したまま足をバタバタさせてわめき、顔を赤くして泣きそうになった。
「OKOK、泣くなよ、じゃあ見に行ってみような。」

20分後、モルダーはウィルを抱いてチケットを片手に持ちながらドアを開けて出てきた。
「モルダーさん、お忘れ物です！」
女性店員がモルダーの山のような荷物を持って追いかけてきた。
「すみません、ありがとう。」
「いいえ。ありがとうございました。」
「今度買い物に来るときは、ポーターを連れてきます。」
女性店員が笑いながら荷物を渡し、代理店の中に戻っていった。

モルダーとウィルは戦利品をかつぎながら人ごみを歩き、ようやく出口にたどり着くと、ベンチにウィルを座らせてブルーのコートを着せ、さらにフードをかぶせてあごの下で紐をキュッと結んだ。
「ちゃんと耳まで覆うようにってママが言ったからな。それにあの感謝祭のお前の風邪にはこりごりしたからな。」
モルダーはそう言いながら自分もレザージャケットをはおり、おむつの入ったバッグと荷物を持ってウィルを抱き上げた。
ドアを押し開けると凍るような風と共に雪が顔に吹き付けた。
モルダーはウィルを自分のジャケットで覆うようにして風から守り、駐車場へ歩きながらなんとかポケットから車の鍵を出し、後部座席のドアを開けて持っていた荷物を全部入れた。
そしてウィルを抱いたまま運転席にまわって座り、キーを回してエンジンを暖め始めた。
「まだチャイルドシートには乗せられないんだ、ウィル。今お前を移したらあっという間に凍死しちまう。」
ウィルはモルダーのジャケットに覆われて、体を胸にもたれさせながら親指をくわえていた。
モルダーがゆっくり背中をなでていると車内が暖房で徐々にあたたかくなり、ウィルは父親の胸の暖かさも感じながら目を閉じ、うとうとと眠り始めた。
モルダーはそっとウィルの頭にキスした。
「ウィル、お前を離したくないけど、運転するときはどうしてもシートにいてもらわないと危ないからな。」
モルダーはウィルを手で支えながら体をひねり、後部座席のチャイルドシートにウィルを乗せてベルトを締め、上からブランケットをかぶせた。
しかしモルダーが手を離そうとした瞬間にウィルは目をぱっちりとさました。


駐車場を出て道に出ると、夕焼けの光を浴びて影が長く伸び、外灯や車のテールランプが灯りだした。
カーラジオからはクリスマスソングが柔らかな曲調で流れていた。
モルダーは少し振り返ってウィルを見た。
ウィルは指をくわえながらシートにもたれ、眠そうにまぶたがおりかかっていた。

「ウィル、パパは本当に今年のクリスマスが楽しみなんだよ、お前と、パパとママで迎える初めてのクリスマスがね。」

「マ・マ・マ。」
ウィルが小さな声で繰り返した。







End