From：ephemeral@ephemeralfic.org
Disclaimers：M&S used to belong to CC but I think Fox now owns them.
 Will belongs to M&S, who love him too much to sell him.

TITLE 

 Man to Man Talk6

〜Fox Mulder is doing the laundry〜

作：Girlie＿girl17
訳：tomo

一台の車が建物の前に停まり、中からブラウンヘアーの長身の男が降りて用心深く周囲を見渡し、外から店の中を確認してエンジンを切り、トランクを開けて運転席のドアを閉めた。
男は車のキーをポケットに突っ込み、トランクの中からバスケットいっぱいの洗濯物を持ってコイン・ランドリー店の中に運び、素早く戻って後部座席の中を確かめ、安心したようにまた2つのバスケットをトランクからだし、一つを抱え、もう一つを車と膝の間に置いてバランスをとりながらトランクを閉めた。
そしてまたバスケットを店に運ぶとダッシュで車に戻り、キーで後部座席のドアを開けて、中からベビー・キャリアーを抱え出た。


　　　　　　　　　　　　〜Fox Mulder is doing the laundry〜


モルダーはランドリー店の中にベビー・キャリアーを運んでテーブルの上に置き、中のブランケットをずらして、大きな瞳でまばたきしながら父親を見ているウィルの頭を撫でた。

店の中は何人かの女性がいて、ベンチで雑誌を読んだり洗濯物を乾燥機から取り出しながらモルダーとウィルをチラチラと見ていた。
だがモルダーは息子の方に夢中で少しも気が付いていなかった。

「Hey buddy、今日は二人だけでコインランドリーに来たな。」
ウィルはくしゃみをして、自分のくしゃみにびっくりしたように大きく目を開けた。
「ほら、安心しろ、ただのくしゃみだ。」
モルダーはハンカチでハナをふこうとしたが、ウィルは顔をふっていやがった。
「いやなのは分かるけど、ウィル、ハナはふかないときたないんだよ。まだお前は自分でティッシュを使えないだろう？」
モルダーはささやきかけながらウィルのハナを拭き取った。

モルダーは振り返って空いている洗濯機を探した。
「パパが洗濯物を済ますまで、ここでおとなしくしてろよ。」
モルダーはバスケットの中からボトル入りの液体洗剤と柔軟剤、そして漂白剤を取りだしてウィルのキャリアーの横に並べた。
ウィルは液体洗剤の明るいオレンジ色のボトルに目を奪われ、つかもうとして手をいっぱいに伸ばした。

「だめだぞ、ウィル。まだ洗剤を飲むにはお前は早すぎる。パパだって5歳になるまで飲んだこと無かったんだからな。」
モルダーはニヤッと笑って洗剤をウィルの手の届かない場所に移した。

ウィルは手で鼻をこすってバスケットの中から洗濯物を出す父親の姿を見つめていた。

「いいか、ウィル。洗濯なんて難しい物じゃない。パパだってまだ一人だったときもちゃんとやってたんだ。」
モルダーは顔を上げてウィルに話しかけた。
ウィルはキャリアーの中で足をバタバタとキックするように動かしてもがきだした。
「もう少し待っててくれよ、buddy、終わったらゆっくり遊ぼうな。」
ウィルは目を大きくしてうなり声を上げた。
「全くお前は毎日ママに似てくるな。」
モルダーは楽しそうに笑ってウィルの髪をクシャクシャっとなでた。
「ウィル、洗濯は頭を使えば何て事ないんだ。全て機械がしてくれることだからな、それをうまく利用するだけでいい。まず洗濯物を大きさごとに分けて・・・と。」
モルダーは大型の洗濯機のふたを開けた。
「これは大きなサイズの洗濯物用、こっちは中くらいのサイズ、あっちは小さいサイズの洗濯物用、つまりお前の物を洗う洗濯機だ。でもすぐにお前は中くらいのサイズに変わるだろうけどな。」
モルダーは大型の洗濯機の中にシャツ、ジーンズ、バスタオルを入れ、中型にはパジャマ、キッチンタオルなどを投げ込み、最後の小型にはソックスや下着、ウィルの服を入れ、スカリーの紅いサテンのブラを発見すると指で引き上げてウィルに見せ、ため息を付いた。
「これはパパの一番のお気に入りなんだ。」

モルダーは洗濯物を全部入れ終わると液体洗剤を取って説明書きを読みながら慎重に計り入れ、漂白剤のボトルをウィルに見せながら話しかけた。
「これは後で入れるんだ、ウィル。特にお赤ん坊の物を洗う時は必ず入れる。」

モルダーはポケットに手を突っ込んで20ドル札を引っ張り出した。
「ウィル、両替するぞ。」
彼はウィルのキャリアーをつかんで、ランドリーの端においてある両替機に大股で向かった。

10代くらいの若い女の子が両替機の隣の洗濯機の前で雑誌を広げていて、彼と目が合うと微笑んだ。
「こんにちは。」
モルダーも微笑み返して挨拶した。
「こんにちは。それ、おじさんの赤ちゃん？」
「そうだよ、産んだのは奥さんだけどね。」
女の子は笑い出して立ち上がり、モルダーが両替機からコインを集めている間、ウィルの顔をのぞきこんだ。
「かわいい！何て名前？」
「ウィル、ウィリアムだよ。僕たちはウィルって呼んでるんだ。」
ウィルはキャリアーの中で身をよじった。
「キャリアーにいるのが退屈みたいね。」
女の子はウィルの足を見てプッと笑った。
「ナイキの靴ね！かっこいいわよウィル！」
「ナイキは“お口にぴったりフィット”するから好きみたいなんだ。」
女の子はまた笑い出し、ウィルの小さな手に握手した。
モルダーが何かを思いだしたようにハッとした。
「しまった！車にこいつのものを忘れてきた！」
「取りに行ってる間見ててあげるわ。」
「う〜ん・・・」
モルダーはためらったが「すぐに取ってくるから。」と言い、車に向かって走り出した。
女の子はモルダーの後ろ姿を見ながらウィルに話しかけた。
「素敵なパパね、ウィル、ママもきっと素敵なんでしょう？」
ウィルは手を振ってキャッキャッと声を上げた。
「やっぱりね！」
女の子はウィルの答えを聞いて笑った。

モルダーがバッグを持って店に駆け戻ってきた。
「見ててくれてありがとう！」
「ウィルはとってもいい子にしてたわ。」
女の子は洗濯機から自分の洗濯物をバスケットに詰め、「じゃあね、ウィル。」と手を振って店を出た。
モルダーも手を振り、ウィルにかがみ込んだ。
「ウィル、お前は磁石みたいに女の子をひきつけるんだな。」

モルダーは三つの洗濯機にコインを入れてタイマーをまわし、一気に稼働させた。
「さて、お前の洗濯物に漂白剤を入れるとするか。」
モルダーは漂白剤のボトルを開けて、小型の洗濯機に注ぎ込んだ。
「次は柔軟剤だな。これを入れるとみんな柔らかくなるんだ。でも待てよ・・・これは最後に入れる物らしい。忘れちゃだめだぞ、ウィル。時間になったら教えてくれよ。」
モルダーはウィルに向かってニヤニヤ笑った。

ウィルはすっかりキャリアーの中に飽きたように、身をよじって泣き叫びだした。
「いい子にしてくれよ、ウィル。」
モルダーはキャリアーからウィルを抱き上げて揺らし、親指でウィルの涙を拭き取ってハンカチを取りだして、いやがって頭を振るのにも負けずにハナも拭き取った。

ウィルはモルダーの胸にもたれて親指をしゃぶりだした。
「お腹が減ったのか？ウィル。」
モルダーは話しかけながらバッグの中を探り、ミルクの入ったほ乳瓶を取りだした。
「ほら、ウィル。指よりミルクの方がうまいぞ。」
モルダーはしっかりとウィルを抱えながらほ乳瓶をウィルの口にあてた。

モルダーはお腹がいっぱいになって眠ってしまったウィルを抱きながら洗濯機の前をぶらぶらと歩き、掲示板に貼られた地域ニュースや子犬の里親募集の張り紙を見ながら、洗濯が終わるのを待っていた。

角に座っていた年輩の婦人がモルダーを見上げていた。
視線が合うとモルダーは微笑んで挨拶した。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
婦人も微笑んで挨拶し、ウィルを見るために首を伸ばした。
モルダーは少しかがんで婦人にウィルを見せた。
「とってもかわいいぼうやね。」
「ありがとう、母親に似たんです。」
「初めてのお子さん？」
「初めてです。でも兄弟を作ろうと思っていて・・・。」
「一人っ子じゃ寂しいでしょうからね。」
「ええ、そうですね。」
モルダーは沈んだ声で答えた。

「あなたは一人っ子だったの？」
「いいえ、妹がいましたが彼女が八つの時に行方が分からなくなって、それっきりなんです。」
「まあ！じゃあそれから一度も会っていないの？」
「ええ。僕はずっと妹を捜しましたが、結局彼女はもう亡くなったんだと自分に納得させました。」
「それはお気の毒に・・・。」
「でも妻やこの子が癒してくれています。」
婦人は手を伸ばしてウィルの長い指に触った。
「この子はあなたにも似ているようね。」
「そうですか？」
モルダーの顔がパッと輝いた。
「ええ。きっとこの子は成長するたびにあなたに似てくると思うわ。」
モルダーが手を貸し、婦人がゆっくりと腰を上げた。
「どうもありがとう、もうバスの時間だから。」
「お話ができてよかったです。」
婦人が彼の方に振り向いた。
「毎週木曜に私はここに来てるのよ。」
「覚えておきます。」
モルダーは微笑んで見送った。

自分の洗濯機をチェックすると最後のすすぎが始まっていた。
「ウィル、時間になったら教えてくれって言っただろう？」
眠っているウィルにそっとささやきかけて額にキスし、キャリアーに静かに寝かせた。

柔軟剤のボトルを持って三つの洗濯機にそれぞれ注ぎ入れていると、ウィルが目を覚まして泣き出した。
ウィルは立て続けにくしゃみをしてハナをこすりながら泣きわめき、顔を赤くして汗をかいていた。
「おしっこしたのかい？」
モルダーはウィルを包んでいたブランケットを外して、手際よくおむつを取り替えた。

洗濯機のタイマーが鳴って動きが止まった。
二人以外誰もいないコイン・ランドリーの中は静かなBGMだけが流れていた。
ウィルをキャリアーに戻し、一つ目の洗濯機を空けて中身をバスケットに入れると、キャリアーと一緒に乾燥機に運んだ。
三つとも乾燥機に入れ終わると洗濯機と同様にコインを入れ、一斉に回転させた。

ウィルはキャッキャッと声を上げて、クルクルと洗濯物が回転する乾燥機を指差した。
「おもしろいかい？」
モルダーはキャリアーを乾燥機に近づけて、ウィルがもっと見られるようにした。
ウィルは色とりどりの服が回転していく様子に目を奪われながら、乾燥機の熱で体がが伝わって暖まり、また眠そうな表情になった。

モルダーの携帯電話が鳴った。
「モルダーだ。」
〈私よ、モルダー。どう？問題ない？〉
「ああ、ちゃんとやってるさ。ウィルは乾燥機の上に乗るのが気に入ったみたいだよ。」
〈モルダー！〉
「冗談だよ。」
モルダーがクックッと笑った。
〈本当にやってそうで怖いのよ！〉
「大丈夫だよ、ウィルは今乾燥機の前で、回る洗濯物を眺めているよ。」
〈もうすぐ帰れる？〉
「すぐ帰れるよ。何か夕食の材料でも買っていこうか？」
〈大丈夫よ、ある物で作れるわ。〉
「スカリー、ウィルがいなくて寂しいんだろ。」
モルダーはからかうように言った。
〈寂しいわよ。でも私が寂しがってたのはウィルの父親もなのよ。〉
「すぐに帰るよ。」
モルダーはニヤニヤしながら言った。
〈待ってるわ。〉
モルダーはニヤニヤしたまま電話を切った。

突然ドアが開いてフロヒキーとラングリーが飛び込んできた。
フロヒキーはドサッとダッフルバッグを下ろし、中の服を近くの洗濯機に素早く詰め込んで、タイミング良くラングリーがコインを入れた。
「Hey、何してるんだ？」
モルダーが奥から声をかけた。
「今はダメだ！」
フロヒキーが叫んだ。
店の前にワゴン車がキーッと急ブレーキをかけて停まり、運転席からバイヤースが顔を出した。
フロヒキーとラングリーはドアに駆け寄り、「また後でな！」と振り返ってモルダーに叫んだ。
二人はワゴン車の扉を開けて飛び乗り、タイヤをならして街の奥へ消えていった。

「いくらあいつらでも変だな、何をやってるんだか。」

乾燥機の動きが止まり、モルダーはキャリアーをテーブルに置いて、すっかり乾いた洗濯物をバスケットに集めだした。
キャリアーの中でウトウトしていたウィルが大きなあくびをした。
「Hey buddy、全部またバスケットに入れ直せば任務は完了だ。お前も手伝ってくれるか？そうすれば早くママに会えるぞ。」
ウィルは眉間にしわを寄せてわめきだした。
「わかった、わかった、さっさとやるよ。」
モルダーは3つ目の乾燥機を開け、中からウィルの服と一緒にピンク色のサテンのブラを取りだした。
「あれ？スカリーはこんなブラを持ってたっけ・・・。」
モルダーはバスケットの中にポイッと入れ、そばにあったカートに2つのバスケットとウィルのキャリアーを乗せて、機嫌の悪そうなウィルにブランケットをかけてあげながら話しかけた。
「ちゃんとかぶらないとだめだぞ、ウィル。どうやらお前は風邪をひいたみたいだからな。」
ウィルがブランケットを蹴ってめくるたびにかけなおし、バッグともう一つのバスケットを持ってドアへ向かった。
駐車場に出て後部座席のチャイルド・シートにウィルを乗せ、トランクにバスケットを詰めて運転席に乗り込んで、家に向かって車をスタートさせた。

モルダーは後ろに振り向きながらウィルに話しかけた。
「今日何が一番楽しかったか知りたいかい？ウィル。こうやってママの所に帰るドライブだよ。」
ウィルは父親に向かって手を伸ばそうとしてまたブランケットをめくった。




End