From：ephemeral@ephemeralfic.org
Disclaimers：M&S used to belong to CC but I think Fox now owns them.
 Will belongs to M&S, who love him too much to sell him.

TITLE 

 Man to Man Talk5

〜Fox Mulder is going trick or treating〜

作：Girlie＿girl17
訳：tomo

「スカリー、分かってないな、これは大人じゃなくて子供の遊びなんだよ。」
モルダーは上目遣いにして、服を抱えているスカリーを見つめた。
「モルダー、そんな目をしてもダメよ。」
「でもスカリー、僕たちにとって始めてのことじゃないか。絶対にやりたいんだよ。」
「“子供の遊び”って言ったのは誰よ？あなたはもう十分大人でしょう？」
スカリーは眉を上げて服を抱えたままモルダーを見つめ返した。

モルダーはスカリーに近づいて後ろから長い腕を巻いて抱きしめ、息が彼女の首筋にかかるように頬ずりした。
いつもこれをするとスカリーはバターみたいに溶けてしまう。
モルダーは経験から学んだことを発揮させて、さっき眉を上げられたお返しをした。
スカリーに眉を上げられる---モルダーはそれを『The Squeeze』と呼んでいた。
それをされるとたいていの場合モルダーは縮み上がってしまうのだ。だがモルダーだって彼女をバターにする技を心得ている。

〈今はまだ固いバターだけど、バターなのに代わりはない。もう少しすれば・・・。〉

「モルダー、だまされないわよ。ウィルに死神のかっこうなんてさせないわよ。ハロウィーンをするなら、絶対子猫のかっこうがいいの！」
モルダーはふくれっつらをして腕を放し、テーブルに寄りかかった。

「子猫ちゃん！つまんなすぎだよ！」


　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　〜Fox Mulder is going trick or treating〜



モルダーは遅い午後のひだまりに座り、腕の中のウィルを揺らした。
「ウィル、ママがハロウィーンに参加してもいいってさ。きっと楽しいぞ！」
ウィルは黙って自分の足を見つめていた。
「でも子猫なんて！なあ、ウィル。子猫なんていやだよな？」
ウィルは相変わらず足を見つめながらよだれをたらした。
「まったくお前はよくママに似てるよ。」
モルダーはため息を付いてウィルのよだれをふいた。

「子猫の格好なんて男は恥ずかしくてしないよな、みんな死神や吸血鬼のかっこうをするに決まってる。」
モルダーはウィルの口をのぞき込んだ。
「でも吸血鬼になるにはお前はまず歯がはえないとな。吸血鬼は鋭い歯でガブッと首にかみつくんだ。」
ウィルが手を伸ばしてモルダーの唇にタッチして、彼は優しくウィルの指をかんだ。

「カウボーイやゴーストでもいいけど子猫なんて、なあ、ウィル。みんなを怖がらせてお菓子をもらうのがハロウィーンてものだよな。」
ウィルは丸い手の甲で鼻をこすって父親をじっと見つめた。
「パパがお前のために話をつけてやるからな、ウィル。でもママはガンコだからな・・・スカリー家の遺伝子なんだよ。お前も継いでるかもしれないんだな・・・。」
モルダーはウィルを抱き上げてじっと息子を見つめた。
「でも安心しろ、ウィル。お前には半分パパの血も流れてるんだ。気さくで陽気なパパの性格がちゃんと遺伝されてある。」
モルダーはウィルにニヤッと笑った。

ウィルはただモルダーの腕の中で身もだえしながら指をくわえていた。
モルダーはそっと腕の中で揺らし始めた。
「子猫なんてつまんないよな、ウィル、男は子猫なんてかっこうはしないぞ。」

モルダーはアヒルのおもちゃに腕を伸ばした。
「かむならこれをかめ、buddy、指がとけるぞ。」
ウィルはアヒルをつかむとすぐ口に持っていった。

「でもエイリアンのかっこうだけはさせられないな、ウィル。」
モルダーは肩を震わせた。
「パパも、そしてママも長い間そいつに苦しめられたんだから。」

ウィルが手からアヒルを落とし、モルダーが拾ってまたおいてやると今度は床に投げた。
「おいおい、傷つくなあ。パパじゃいやなのかい？」

ウィルは父親ゆずりの長い指をいっぱいに伸ばしてモルダーの腕時計をつかんで引っ張った。
「今度はスリになる練習か？でもママが絶対許してくれない仕事だな。そうだ、銀行強盗のかっこうなんてどうだ？」

ウィルは腕時計をつかみながら大きな声を上げた。

「OK、OK、ママに聞いてみるよ。でも結局子猫になるだろうな。」

モルダーは少し高くウィルを抱き上げた。
「お前の憧れのスーパー・ヒーローになってもいいんだぞ！ウィル。『FBIのフォックス・モルダー特別捜査官』だ。」
モルダーは低く威厳のある声で名乗った。
「でもお前のサイズのスーツが見つかるか分からないな、それに厚着しすぎてやっぱりママが怒るかもしれないしな・・・。」

ウィルは大きなあくびをして親指をまたしゃぶりだした。
「OK、buddy、おやすみ。」
モルダーはウィルを抱いてカウチへ移動した。

しばらくしてスカリーが部屋を捜すと、二人はカウチに横になって寝息を立てていた。

　　　　　　　　　　　　　〜2週間後〜

「モルダー帰りましょう、疲れたわ。それにあなたがあげてた甘味料の強いジュースじゃなくて、ちゃんとしたものを食べさせなきゃ。」
モルダーが肩越しに振り返ると、ウィルはチャイルドシートに乗って足をキックさせていた。

「分かったよスカリー、でもあと一カ所だけ寄るところがあるんだ。」
スカリーは窓の外の風景を見てどこに向かっているか分かるとため息を付いた。
「モルダー、やっぱりあそこに行くの？」
「いいじゃないかスカリー、あいつらもウィルを見たがっているんだから。」
モルダーはガンメンの隠れアジトの前に車を停めた。
「OK、でも早くしてね。どうせウィルの変装よりこわい人たちしか出てこないんだから。」
モルダーは後ろのドアを開けてウィルをシートから抱き上げた。
「buddy、この間の変なおじさん達を覚えてるかい？みんなパパの友達だから怖がらなくていいんだよ。」
スカリーがアジトの入り口のドアをノックした。
「誰か開けてくれる？」
「ちょっと待った。」
中からフロヒキーの声が聞こえた。

「Trick or treat！」
ドアが開くと共にモルダーが声を上げた。

「おいラングリー！バイヤース！子猫のウィルだぞ！」
フロヒキーが笑いながら他のガンメン達を呼んだ。

ウィルはオレンジと黒の縞模様のパジャマを着て小さな三角の耳を頭に付け、ほっぺたにはスカリーが描いた3本のヒゲを生やして目の周りを白く塗って変装していた。
そしてパジャマのおしりには長いしっぽがついていて、ウィルはしっぽの先を持って、歯のない口でかんでいた。

「これは子猫じゃない、ベンガルの凶悪な人喰い虎だ！」
モルダーが抗議した。
「俺には子猫に見えるぞ。」
フロヒキーが笑った。
「お前、俺の気持ちを少しは分かってくれよ。」
モルダーが悲しそうにつぶやいた。
「モルダーはずっと虎だって言い張ってたのよ。」
スカリーが笑いながら付け加えた。
後ろからラングリーとバイヤースが現れた。
「これはベンガルの人喰い虎だ！」
ラングリーがメガネの奥の目を大きくさせながら言った。
「遅いよ、ラングリー。」
モルダーががっかりしたように言った。
「悪かったな、これでも助けようと思ったんだ。」
「でも残念だな、モルダー、せっかく来てくれたのに、ここはどんな子供も寄ってくれないからお菓子の用意をしてないんだ。」
バイヤースが言った。
「いや、ちょっと待て。」
ラングリーが何か思いだしたように言い、奥のベッドルームに消えて小さな箱を持って飛び出てきた。
「お、おいこら待て！」
フロヒキーの口が大きく開いた。
「いいじゃないか、フロヒキー、まだたくさんあるだろう？」
「やめてくれ、俺はのぞきが無いと夜眠れなくなるんだよ！」
モルダーとスカリーは困惑したようにフロヒキーを見た。
「違う違うよ二人とも、考えてるようなことじゃない。フロヒキーはあのシュガーコーティングされたマシュマロのことを“のぞき”って呼んでるだけなんだ。あいつはそれの中毒なんだよ。」
バイヤースが解説した。
「全くしょうがないな。」
フロヒキーがしかめっつらでカボチャの形をした“のぞき”をラングリーの持ってる箱から取りだした。
「ラム酒と一緒に食べるとうまいんだぞ、ウィル。」
フロヒキーは言いながらビニールの包みを開け、微笑みながらウィルの手に乗せようとした。

ウィルはゆっくり手を伸ばして、みんなの微笑に囲まれながららマシュマロを受け取り、すぐに口に入れた。
スカリーは一旦ウィルの口からマシュマロを出し、小さくちぎってまたウィルの口に入れてあげた。
ウィルは口の中でおいしそうに転がして飲み込んで、もっととねだるように「ア〜」と言って手を伸ばし、見ていた大人達は笑った。
ウィルは笑い声に目をパチクリし、モルダーは満面の笑みでで腕の中のウィルの顔をのぞき込んだ。

「ウィル、お前とは趣味が合うな。」
フロヒキーが目尻にしわを寄せながら言った。



モルダーは眠っているウィルを後部座席のチャイルド・シートに静かに乗せ、音を立てないようにそっとドアを閉めた。
スカリーも助手席から振り返り、子猫のしっぽを大事そうににぎったまま眠っているウィルを見て微笑んだ。

家に向かって暗くなった道を走り出すと、スカリーはシートベルトをはずしてモルダーにすり寄り、彼の腕にそっと自分の腕を巻きながら言った。
「家に帰ったら、あなたが虎になってくれる？」
モルダーはぎゅっと腕をつかまれながらニヤッと笑った。

丘に夕焼けの最後の光が沈むのを見つめながらモルダーが言った。
「スカリー、来年のハロウィーンはウィルに死神のかっこうをさせていいかい？」




End