From：ephemeral@ephemeralfic.org
Disclaimers：M&S used to belong to CC but I think Fox now owns them.
 Will belongs to M&S, who love him too much to sell him.

TITLE 

 Man to Man Talk4

〜Fox Mulder has just spotted Bill Scully at the mall〜

作：Girlie＿girl17
訳：tomo

長身の男がベビーカーを押しながらショッピング・モールの中をぶらぶら歩き、広場の休憩場に現れた。
彼は首筋を伸ばし、手でマッサージするようにもんで背中をのばした。
このショッピング・モールの中を歩き疲れていて、少し休憩する必要があった。

彼はスナックフードのコーナーへ行ってコーヒーを買い、椅子に座って買い物客達が通り過ぎていくのを眺めた。
しかしコーヒーに口を付けたとき、彼の動きが止まり、恐怖で目が大きく見開かれて汗がにじみ出した。

「うそだろ・・・。」

彼はそうつぶやくのが精一杯だった。


　　　　　　　　〜Fox Mulder has just spotted Bill Scully at the mall〜



ビル・スカリーとモルダーがお互いを発見したのはほとんど同時だった。
「モルダー、久しぶりだな。」
ビルはまっすぐ近づいてきて挨拶の手を差し出した。
モルダーは立ち上がって彼の手を握って握手した。
「ビル、こんなところで何を？」
「ちょっと一人で買い物さ。だがこんな広いショッピング・モールはもうこりごりだ。まるで海軍の船の中みたいさ。巨大で、だが外には出られずに、中に大勢の人間が詰め込まれている。慣れてるはずなんだがな。」
ビルは肩をすくめて周りを見渡しながら言った。
モルダーはうなずき、椅子に座り直した。
「一緒に休みますか？」
「ああ、そうさせてくれ。」
ビルはモルダーの横の椅子に腰掛け、ベビーカーの中のウィルにかがみこんだ。

「ウィルはこの前見たときよりもまた大きくなったな。ダナはどこだ？」
「家にいます。今日は‘男’だけの外出なんで。」
モルダーはウィルにアヒルのおもちゃを渡しながら答えた。
「あいつがウィルも連れて行かせたのか？」
「今日は僕が面倒を見たかったんです。」
ビルはウィルの顔をじっと見つめた。

「スカリーは指と足が長いのは僕に似たんだって言います。」
ビルはモルダーの顔を見上げた。
「まだ“スカリー”なんて呼んでるのか。」
モルダーはコーヒーカップをテーブルに置いた。
「ビル、みんな彼女のことをダナと呼ぶでしょう？でも僕にとって彼女は特別なんです。だからいつも“スカリー”と呼んでいる。それに“スカリー”は良い名でしょう？彼女が“スカリー”という名字で生まれてきてくれて感謝しています。」
ビルはフッと笑った。

モルダーはベビーカーからウィルを抱き上げた。
ウィルはビルをじっと見つめて、くわえていた手をビルに伸ばした。
「それで、‘男’たちはここで何してるんだ？」
ビルはウィルの小さな手を握って握手するように振った。
「ウィルの靴を買いに。スカリーがあまり買わないものだから。」
「何でだ？ダナは靴を買うことに反対でもしてるのか？」
ビルがウィルの手を離してモルダーに顔を向けた。
「彼女が言うには、『赤ちゃんは歩けるようになるまで靴なんていらない』そうなんです。」
「タラにも聞かせてやりたいセリフだな。あいつはマシューが立ち上がる前から1ダースは靴を買っていた。」
「僕もタラの気持ちが分かります。」
モルダーはウィルの着ているブルーのシャツを直しながら答えた。
「それで、どんなのを買ったんだ？」
「ブルーに白のマークの入ったナイキの靴です。」
モルダーはベビーカーの後ろから小さな箱を取りだして、テーブルの上に置いた。
ビルは箱を開けて、中から手のひらに乗るほど小さなナイキの靴を取りだした。
「ナイキはお前の好みなのか？」
「生まれたときにウィルが指定したんですよ。」
モルダーがウィルを高く抱き上げた。
ビルはニヤッと笑って靴を箱の中に戻した。

ウィルが声を上げながら足を上げて靴をかみだした。
モルダーは経験からこの声はお腹が減って騒ぎ出したのだと分かった。
「ビル、ちょっとそのバッグの中からほ乳瓶を・・・。」
ビルはベビーカーにかけてあるバッグからほ乳瓶を取りだした。

モルダーはほ乳瓶を受け取ると中身を混ぜるように振った。
「悪いな、buddy、ママがせっかく持たせてくれたけど冷めてしまった。」
ビルはモルダーにほ乳瓶を渡すように手を出すと、黙って向かいのスナック・フードの店に行って店員に渡し、また戻ってきてほ乳瓶をモルダーに渡した。
「ほら。大体の店であたためてくれるんだ。覚えておくといいぞ。」
「ありがとう、助かりました。」
モルダーはウィルの口にほ乳瓶をくわえさせながらビルを見た。
「かわいい甥のためだからな。」
ビルはウィルの頭を撫でながら言った。

ウィルはほ乳瓶を支えているモルダーの親指を手で抑えて飲み、モルダーは微笑みながらウィルにミルクを飲ませた。

二人はウィルを黙って見つめた。


「お前が父親タイプの男だとは知らなかったな、モルダー。」
「僕も知りませんでした、自分がこうなるとは。でも今ではそうでない自分が想像つかないんです。」

「・・・いろいろあったけどな、モルダー、・・・今ダナが幸せなら俺も幸せなんだ。」

モルダーは少し驚いて顔を上げ、ビルを見つめた。
「そう言ってくれて嬉しいです。」
モルダーは眠そうに目を閉じているウィルの顔を撫でながら言った。
「もっともいつだってスカリーは好きなときに僕のケツを蹴って追い出すことだってできるんですが。」
「もちろんだとも。」
ビルがニヤッと笑った。

「ビル、聞いてもいいですか？」
ビルは黙ってうなずいた。
「自分が父親だということに、不安な時がありますか？」
「モルダー。父親ならいつもそのことを心配して思ってる。それは少しでもいい父親になろうと思うからだ。そうやっていい親になっていくのさ。」

モルダーは困惑したような表情をした。

「いいかモルダー、誰だって最初からいい親ってわけじゃないんだ。親である自信なんて最初からあるわけがない。でもそうやって不安になりながら、考えて親も成長していくんだよ。生まれたときから親なんて奴はいないさ。子供が成長していくのを見て、少しずつ自信っていうのも生まれてくるんだ。それに子供の成長と一緒に自分も成長した時を感じるのは・・・嬉しいものさ。それにお前は一人じゃない。ダナだっているだろう？うまくいってるんだろう？」
「それは心配いらないです、僕たちはうまくやっています。」
「ああ、やってるだろうさ。」
ビルはいかめしい顔をぎこちなく笑わせながら答え、モルダーも笑った。

「FBIには戻るのか？」
「どうかな、まだ決めていません。今はこうしてウィルと過ごしていたいんです。一緒にいてどんなことも見逃したくないんです。それにウィルも僕のことを必要としているし。」

ビルは肘をテーブルにもたれさせ、片手で膝をなでながらつぶやいた。
「それは俺が後悔してることなんだ、モルダー。マシューが生まれたとき、俺は船に乗って家族から離れなくてはならなかった。見逃したことが多かったと思うよ・・・同じ後悔はお前はするなよ。」

「心配はいりません。」

ビルはしばらくモルダーの顔を見つめて何度かうなずくと立ち上がった。
「俺はもう行くよ。マシューにハロウィーン用の衣装を買っていってやる約束をしたからな。じゃあな、モルダー。また‘男’たちで会おう。」
「ああ、また。」

ビルはぶらぶらと店へと向かい、その後ろ姿は人ごみにまぎれてすぐに見えなくなった。
モルダーはウィルに顔を向けた。

「ウィル、お前もハロウィーンがやりたいかい？」

End