From：ephemeral@ephemeralfic.org
Disclaimers：M&S used to belong to CC but I think Fox now owns them.
 Will belongs to M&S, who love him too much to sell him.

TITLE 

 Man to Man Talk3

〜Fox Mulder is visiting the Lone Gunmen〜

作：Girlie＿girl17
訳：tomo

暗い廊下の突き当たりのドアに長身の男が立った。
尻ポケットに片手を突っ込み、片手でベビー・キャリアーを持っていた。
しばらく間があってからドアの鍵が一つ、また一つとカチカチ音を立てて外され、ゆっくりと重たいドアが開いていった。


　　　　　　　　　〜Fox Mulder is visiting the Lone Gunmen〜


金髪でメガネをかけたリンゴ・ラングリーがドアを開けると、そこにははき古したブルージーンズにダークブルーのシャツ、そして黒レザーのジャケットをはおったフォックス・モルダーが立っていた。
彼の髪は風に吹かれたように乱れたままで、明らかに今日はひげもそっていないようだった。

モルダーが左手でキャリアーを持ちながら中に入ると、ラングリーが挨拶の手を出した。
「よお！モルダーとミニ・モルダー！元気か？」
モルダーはラングリーに握手して腕を軽く叩いた。
「久しぶりだな、ラングリー。」

ごみごみした部屋の奥からフロヒキーが顔を出し、溶接工のようなマスクを上げてモルダーに手を振った。
「Hey、G-メン！」
「もうG-メンじゃないさ、フロヒキー。変わりないか？」
「ああ、蜂みたいに忙しいよ。」
「フロヒキー、蜂のことなんか言わないでくれよ。」

モルダーはテーブルの上のがらくたを手で押しのけてキャリアーを置き、ブランケットに包まれたウィルのさらさらの赤毛をそっと撫でた。
ウィルは大きな澄んだ蒼い瞳で周りを見ながら、握った手の親指をくわえていた。

ラングリーとフロヒキーがウィルを見ようと近づき、「ウィル〜、ウィル〜」と言いながら、目尻をたらして最高の笑顔になっていた。
「いつも何か噛んでるところはお前の遺伝だな、モルダー。」
フロヒキーがウィルの前で百面相をしながら言った。
「スカリーも同じ事を言ったよ。」
モルダーはキャリアーからウィルを慎重に抱き上げ、ウィルがガンメンの二人を見られるようにした。
「ウィル、この人たちはパパの友達だ。」
ウィルは目を大きく開いて二人をじーっと見つめた。

モルダーは部屋を見回した。
「バイヤースは？」
ラングリーがウィルとにらめっこでも始めたように、ウィルから目をそらさないまま答えた。
「食料調達に行ってる。」

フロヒキーは溶接マスクとエプロンをはずしてキーボードの前にドサッと腰を下ろしてカタカタ打ち始め、モルダーもウィルを抱いて向かい側に腰を下ろした。
「うまくいったか？」
ラングリーが振り向いて答えた。
「一度トラブルがあったが後は何ともない、うまくいってる。」

フロヒキーがキーボードの前から立ち上がりテーブルの周りを歩いていると、ウィルはその動きをじーっと見つめていた。
「モルダー、お前のセクシーなベター・ハーフは一緒じゃないのか？」
フロヒキーが横目でモルダーをチラッと見ながら言った。
「スカリーは家にいるよ。それから彼女に近づくな。」
フロヒキーは目を細めてウィルを見つめた。
ウィルは指をくわえながらフロヒキーをまっすぐに見つめていた。
「ああ、俺が紳士でお前に道を譲ってなかったら、今お前は俺の子供のお守りをしてただろうよ。」
「そうか？ウィルが生まれたとき、お前が生まれてきたのかと思ったんだぞ、フロヒキー。お前とウィルの背が同じすぎて。」
ラングリーが笑い出し、フロヒキーはふくれっつらをしてキーボードに向かった。

ドアにノックの音が響き、フロヒキーがセキュリティ・モニターをチェックすると、バイヤースがピザを二箱抱えて立っていた。

バイヤースは部屋に入るなり、テーブルの上に座っているモルダーを見つけて嬉しそうに近づいてきた。
「モルダー！久しぶりだな！ウィルも連れてきたのか！だっこしてもいいかい？」
バイヤースはピザの箱をキャリアーの横に置いて、手をスーツのスラックスでふきながら尋ねた。
「もちろん。」
モルダーは慎重にバイヤースの腕にウィルを抱かせた。

バイヤースは腕の中で揺らしながらウィルの小さな足を上げた。
「ナイキの靴か！小さいな！」
皆一斉に笑った。
「フロヒキー、お前と同じサイズだぞ。」
ラングリーが笑いながら行った。
「黙ってろ、ヒッピー。」
フロヒキーはぶすっとした顔でラングリーをにらんだ。

バイヤースがウィルを返すと、ピザの箱を開けて皆で食べ出した。
「モルダー、お前も食べろよ。」
「ああ、何遠慮してんだよ。」
「いや、食べたいんだがスカリーが僕のコレステロールを心配してるから。」
「すっかり尻に敷かれてるな、モルダー。」
フロヒキーが口をピザでいっぱいにしながら言った。
「彼女はただ僕があまり丸くならないようにしてほしいだけさ。」
モルダーはウィルの頭を撫でながらチラッとフロヒキーの体を見た。
「お前みたいにだ、フロヒキー。」
ラングリー達は笑い出した。

ラングリーはピザを食べ終わるとがらくたのつまった棚に行ってガタガタと何かを探し始め、中からケーブルが飛び出たメタルの箱を取りだしてテーブルに置いた。
「ほらよ、モルダー。」
「それはこの間失敗したやつだろ？」
モルダーが聞き返した。
「この間の技術的トラブルは治ったさ。これで衛星からの電波を全部キャッチできる。」
「でも失敗した。」
モルダーが繰り返した。
「俺達はいいところまで行ったんだ、ただ・・・」
「“でも失敗した。”」
モルダーがウィルの腕をラングリーに振りながら繰り返した。
フロヒキーがモルダーの隣に立った。
「まあまた問題が出たら、逃げりゃいいんだよ。」
ウィルが足を上げて靴をかみながら、フロヒキーをじっと見つめた。

「だが俺達はまだシステムに侵入することができてないぞ。」
バイヤースが言うとフロヒキーがPCの前に移動した。
「まあな、これはNSAのデータベースに侵入するより難しいからな。」

ウィルが体を縮めて泣き出した。
「OK、buddy。」
モルダーはキャリアーからほ乳瓶を取りだした。
「Heyバイヤース、これをマイクロ電子分解してくれるかい？」
バイヤースはほ乳瓶を、まるでニトログリセリンでも入った試験管のように慎重に受け取って尋ねた。
「ど、どれくらいレンジに入れればいいんだ？」
「大体20秒くらいだな。」

バイヤースがレンジに向かうと、フロヒキーとラングリーが「バイヤース、バイヤース」とからかうように応援し、「お前ならできる」「やればできる」と声援を送り、ウィルは泣くのをやめて奇妙な男達をじっと見つめた。
「心配するな、ウィル、世の中の大人がみんなこうなんじゃないからな。」
モルダーがささやき、眉をひそめてラングリーに尋ねた。
「ラングリー、何やってるんだ？」
「あせるなよ、モルダー。今侵入作戦を展開中なんだ。」
フロヒキーがPCのモニターに顔を近づけて奇声をあげた。
「やったぞ！侵入成功だ。」
「これは俺の戦略アイディアなんだ。」
ラングリーは得意そうにニヤニヤ笑って“俺の”を強調して言った。
「難攻不落のネットにハッキングだ。戦略名は『イタズラなネルちゃんと5つの艦隊』。」

フロヒキーがモルダーの方にかがみ込んでウィンクした。
「この間はビデオをありがとな。」
「どういたしまして。」
「なかなかだったぜ。」
フロヒキーがニヤッと笑った。

バイヤースがほ乳瓶を持って戻ってきた。
「これでいいかなモルダー、見てくれ。ウィルをやけどさせたくない。」
モルダーが手慣れたように温度を確かめるのを見てラングリーが言った。
「手つきがもうプロだな。」
モルダーはニヤッと笑って答え、ほ乳瓶を腕の中のウィルにくわえさせた。
ウィルは父親ゆずりの長い指をしっかりほ乳瓶に巻いて力強く飲みだした。

バイヤースはモルダーの横に座って、ミルクを飲むウィルをのぞき込み、フロヒキーとラングリーはプリンターから次々吐き出されるシートを興奮しながら見つめていた。

モルダーが顔を上げて三人に話しかけた。
「おい、もしスカリーから連絡が来ても僕はいないってことにしてくれよ。」
「そりゃまたなんでだ。」
「興味あるね。」
フロヒキーとラングリーがからかうように言った。
「そろそろ僕を探し出すかもしれないからな・・・今日スカリーの兄貴が来るんだ。」
「ああ、あの兄貴か。彼は元気か？」
「元気だよ、残念ながらね。」
モルダーがため息を付いて答えた。

ウィルがミルクを全部飲み干すと、モルダーは肩に抱き上げてげっぷのために背中を叩き出した。
「なんで背中なんか叩くんだ？」
バイヤースが聞いた。
「スカリーが言うには吸い続けることで体内に圧力がたまるから、こうしてげっぷさせて解放させなきゃいけないらしいんだ。」
モルダーがそう言い終わると同時にウィルが大きなげっぷをし、3人は笑った。
「じゃあフロヒキーも叩いてやろうぜ。」
ラングリーが笑いながら言った。

フロヒキーがPCの前でジャンプし、手を打ちならして声を上げた。
「やったぞ手に入れた！成功だ！」
バイヤースとラングリーがPCに向かってダッシュし、顔をくっつけるように近づけて食い入るようにモニターをにらむと、急にきびきびと忙しそうに動き出した。

「こわがらなくていいよ、buddy、パパも始めてこいつらを見たときは気味が悪かった。」
モルダーがウィルに向かってささやきかけた。

ラングリーがプリント用紙を根元から切り取り、ガンメンたちがその周りを取り囲んだ。
ウィルはモルダーのシャツに鼻をこすり、何か小さな声でわめきはじめた。
「おい、ウィルが退屈し始めたぞ、誰か踊ってやれよ。」
ガンメンたちはモルダーを無視してプリントを読み、バイヤースがTVをつけた。
ＴＶの画面はザーッと白黒の砂嵐のままだった。

ラングリーはバイヤースがさっきのブラックボックスをPCとTVの間にケーブルで接続したのを確認すると、画面に向き直ってキーボードを叩いた。
他のガンメンはTVモニターを見つめていたが、画面は変わらずに何もおこらなかった。
ラングリーは次に用意してあったコード番号を入力したが何も起こらず、また違うコードを入力しても何も起こらなかった。
部屋の中はTVがザーッという音と、ウィルが静かに呼吸する音だけが響いた。

ラングリーとフロヒキーはがっかりと肩を落とし、モルダーはウィルを抱いたままTV画面の前に立った。
すると突然画面が明るくなり、パチパチッと少しとぎれてアニメの動物が歌って踊る、楽しい画面が表れた。
ウィルは反射的に画面に振り向き、指をくわえながら目を大きく開いて、そのままアニメの動物たちに釘付けになった。

ローン・ガンメンは歓声をあげ、両手を上げてハイ・タッチした。

モルダーはウィルの頭を撫でながらささやきかけた。
「ほら、ウィル。今お前はこのおじさんたちが衛星から盗んだ、『ミンディのマーメイド・ショウ』を見てるんだよ。世界中の誰より早くこの番組を見ているんだ。」
ウィルは体を乗り出して画面にタッチしようとした。
「ママがいいって言えば、いつでもここで見られるぞ。」

フロヒキーが勝利に満足したように頬杖をつき、画面を見ながら言った。
「このミンディはセクシーだな！」
「Ohhh」
残りのガンメンとモルダーが声をあげ、ウィルはしゃっくりをした。




End