From：ephemeral@ephemeralfic.org
Disclaimers：M&S used to belong to CC but I think Fox now owns them.
 Will belongs to M&S, who love him too much to sell him.

TITLE 

 Man to Man Talk2 　
〜Fox Mulder is going grocery shopping〜

作：Girlie＿girl17
訳：tomo

旧型のセダン車がパーキングに駐車し、中からダークブラウンのヘアーで6フィートを越える、ひょろ長い男がサングラスをかけて降りてきた。
彼は白いＴシャツの上にブルーのシャツをはおり、履き古したように体になじんだジーンズをはいていて、通りかかった女性達は皆振り向いて彼の姿を眺めていた。
しかし彼はそんな視線には気が付かず、後部座席のドアを開けてかがみ、中からかわいらしい赤ちゃんを抱きかかえて出た。
すると眺めていた女性達は一斉にあきらめのため息を付いて、自分たちの車に向かった。

　　　　　　
　　　　　　　　　　〜Fox Mulder is going grocery shopping〜



フォックス・モルダーはパーキングの隅にあったカートにウィルを乗せた。
「OK、ウィル。ちゃんとつかまってるんだぞ、これからスーパーを探検だ！」
ウィルははしゃぎ声を上げて手を振り、まぶしそうに目をつぶった。
「ごめんよbuddy、赤ん坊用のレイ・バンのサングラスを買おうな。」
モルダーは手でウィルの顔に影を作りながらパーキングを横切り、グロッサリー・ストアの入り口をくぐった。

中に入るとモルダーはウィルの顔から手を離し、抱き上げて着ていた小さなジャケットを脱がせた。
「起きてるときはジャケットはいらないってママが言ってたからな。」
そしてウィルをカートのキャリアーに乗せ、サングラスを取って半分開けているシャツの襟の部分にはさんでカートを押し出すと、周りにいた女性達が彼を見上げ、息子の方に視線を移した。

「さあ行くぞ、シートベルトをしっかり締めろよ。これからいろんなものが見られるからな。」
ウィルは「了解」と答えるようにモルダーを見上げ、目をまばたきさせた。
「OK、ママが買い物リストをくれたから、それをこのカートの中に入れれば買い物は完了だ。難しくないだろう？パパとウィルは男だ！心に決めたことはやり遂げる！そうだろ？ウィル。」
モルダーはまるで答えを期待するように見下ろし、ウィルは見上げたまままばたきした。

パンのコーナーへカートを押し、モルダーはリストをチェックした。
「いいか、ウィル。まずパンが必要だ。リストにも書いてある。パパは食事の時に2枚スライスしたのがあればどんな種類でもいいんだけど、ママは全粒粉のパンが好きなんだ。」
モルダーは全粒分のパンをカートに入れ、ウィルに話しかけながらコーナーを進んだ。

「見ろよ、ウィル！“デビル・ドッグ”だ！パパはこれが大好きなんだ。サンドイッチみたく見えるけど、少し違うんだよ。今度こっそり二人で食べような。おっと、歯が生えてないから中のクリームだけかな。」
モルダーはウィルにウィンクして見せた。
「な？買い物はけっこう楽しいだろう？」

モルダーとウィルは野菜とフルーツのコーナーに進んだ。
「ポテトとサラダ菜がリストにある。ポテトか。マッシュポテトは最近のお前の好物だよな？ウィル。じゃあ25ポンド買おう。これで2、3週間はもつぞ。」
モルダーはポテトをカートの中に入れ、ウィルの頭を撫でた。
「心配するなbuddy、もう“ポテト・ヘッド”の顔はしないから。前にやってお前に大泣きされて、ママに叱られちゃったからな。」

二人はサラダ用の野菜の前で止まった。モルダーは一面に並ぶたくさんの種類のレタスや葉野菜を見渡してうめいた。
「うーん・・・ウィル・・・、全部緑色で見分けがつかないぞ。サラダに使うのはどれだ？一種類ごと全部買えばいいのかな。」
モルダーは緑色の葉野菜を一種類ずつカートに入れ始めた。

年輩の婦人がモルダーとウィルを見て近づいてきた。
「なんてかわいい赤ちゃん！今何ヶ月なんです？」
「4ヶ月です。」
「なんてお名前？」
「ウィル。ウィリアムです。」

年輩の婦人はかがんでウィルの小さな指に触った。
「ママがとってもかわいがってるでしょうねぇ！」
「それはもう。」
モルダーは誇らしげに答えた。
ウィルは握った手で鼻をこすり、婦人はそれを見て微笑み、さよならの挨拶をして離れた。
モルダーはウィルに顔を近づけてささやきかけた。
「お前はモテるんだな、ウィル！」

「次のコーナーは冷凍食品だ。でもママはリストに冷凍ピザを書いてないな・・・書き忘れたんだろう。パパは昔は週に3〜4回はピザを食べてたんだ。今はママと食べるから・・・そうだな、8枚は必要だろう。でもウィル、お前は歯がないから冷凍ピザなんて食べちゃダメだぞ。」
モルダーはピザをカートの中に次々と積んでいった。
その間ウィルは目を大きく開きながら、チカチカ光るフリーザーの中の蛍光灯を見つめていた。

背中を誰かにつつかれてモルダーは振り向いた。
目の高さには誰もいなかったが、見下ろすと女の子が立っていて、手のひらに小さな白い靴を差し出していた。
「おじさん、その赤ちゃんの靴を拾いました。」
ウィルの足を確認すると、片足は白い靴をはいていたが、もう片足はブルーのソックスだけになっていた。
「親切にありがとう。」
モルダーがしゃがんでお礼を言うと女の子ははにかんで靴を渡し、少し離れたコーナーにいる母親の元へ走って手を振った。モルダーも立ち上がって手を振り返した。
「ウィル、靴を落とすなんて悪い子だな！」
モルダーは笑いながら靴をウィルの足に履かせ直した。
ウィルは靴より自分の周りに広がる光景にすっかり目を奪われていて、カラフルなディスプレイに向かって手を伸ばすことしか頭にないようだった。

モルダーは隣の列のコーナーへ進んだ。
「飲み物か。」
モルダーはスカリーから渡されたリストをチェックすると、そこには「紅茶」とだけあった。
「“紅茶”か。ママはお前が生まれたばかりの頃は体に優しいからって日本の緑茶を飲んでたな。なんでだかわかるか？ウィル。母乳を飲むお前のことを考えてるんだよ。」
モルダーはリプトンの箱を棚から一つ取った。
「ずいぶん小さいな、これなら二箱はいるな。お前のママは本当に紅茶が好きだからな。」
そう言ってモルダーは紅茶を二箱カートの中に入れた。

ウィルを乗せたカートを押して店内をキョロキョロと見回し、モルダーは野菜コーナーに戻ろうとしていた。
「ママのリストに何か他の野菜が書いてあったぞ・・・これだ。コーンの缶詰を二缶。しまった、缶詰か。」
モルダーは棚に並べられた多くの野菜を一つ一つウィルに教えながらカートを押して戻っていった。
「“エンドウ豆”、“ニンジン”、“カブ”、“ポテト”、“オクラ”、“アーティチョーク”、“ナス”・・・みんな変な形だよな、ウィル。」
モルダーはカートを押して缶詰のコーナーに到着した。
「さあここだ、ウィル。どの缶だと思う？粒タイプ、クリーム、ホワイト・コーン、イエロー・コーン、コーンと豆。ずいぶんたくさんあるもんだな、ウィル！粒タイプのイエローにしようか・・・色がきれいだから。大きさはどうしよう？手のひらサイズから小さなゴミ箱くらい大きな缶もある。ありすぎだ！よし、中くらいの大きさにしよう。」
モルダーは缶をカートに入れ、あと何種類かの缶詰も一緒にカートに入れながら棚の前を進んだ。

コーナーを曲がるとモルダーは笑顔になり、ウィルを抱き上げた。
「ほらウィル、おもちゃがいっぱい売ってるぞ！今度から買い物するときは、いつもこのグロッサリーにしよう！」
ウィルは目を輝かせながら色とりどりのおもちゃを見つめ、一つのおもちゃを見つけると指を差し、声を上げて父親を見上げた。
モルダーはそのおもちゃを見てがっかりしたような表情になった。
「ウィル、そのアヒルがほしいのかい？でももうアヒルは持ってるじゃないか。ほら、もっとかっこいいおもちゃがこんなにあるんだぞ？」
ウィルはアヒルだけを指差して声を上げ、手足をばたつかせた。
「OK、わかったよ。でもお前も男なんだから早くアヒルから卒業してくれよ。」
モルダーは一つのアヒルと六つのおもちゃをカートに入れて次のコーナーを回り、ベビーグッズの棚へ行った。

「オムツ、これこそお前に必要なものだ。3パック買っていこう。お前のオムツがきれて、夜中に遠くまで買いに行くのはもう疲れたからな。わかってるよ、昼間買っておけばいいって言うんだろう？でも昼間は買い物よりお前と遊んでる方が楽しいんだから、仕方ないじゃないか。」
モルダーはかがんでウィルの鼻に自分の鼻をこすりつけた。
「でも、そのお陰でパパは蒸気機関車より速く走れるようになったよ。お前がトイレのトレーニングを始められるようになるまで、きっとパパはもっと速くなれるぞ。」
女性がすれ違いに見てクスッと笑ったので、モルダーは赤くなってカートを押して歩き出した。

「さあベビー・フードのコーナーだぞ、buddy。肉でもポテトでもなんでも赤ん坊のお前用にしてある。」
ウィルが抗議するような声を上げた。
「ああ、わかってるよ。お前だって一人前だって言いたいんだろう？大丈夫、お前は優秀な赤ん坊だからな、そのうち何だって食べられるようになるさ。」
モルダーは持ってきたバッグの中からジュースの入っているほ乳瓶を取りだし、キャップを取ってウィルの口に近づけると、ウィルはほ乳瓶をしっかり持って力強く吸い始めた。
「ゆっくり飲んでくれよ、buddy、まるでパパがいつも食事をさせてないみたいに見られるじゃないか。」
モルダーはウィルのほ乳瓶を支えながら、片手でリストを広げてチェックした。
「“ベビー・シリアル”。でもミルクとマッシュポテトとシリアルだけじゃ生きていけないよな？たとえ4ヶ月でも別な物も食べなきゃ。ウィルはシチューや炒めた豆なんかは好きかい？」
ウィルはジュースを飲みながら黙って父親を見つめた。
「わからないよな、まだ食べたことがないんだもんな。でも安心しろ、ウィル。ここにはそんなお前のための食べ物が用意されているんだから。」
モルダーは棚からベビー・フードのびんをいくつかカートの中に入れた。
「“良く気が付いてくれた”って、ママがきっとほめてくれるな。」

隣のコーナーは普通の朝食用シリアルが並んでいた。
ウィルはモルダーにほ乳瓶を支えられながらジュースを飲み、色とりどりのきれいな箱を見上げていた。
「ウィル、お前に歯が生えたらパパの友達の“キャプテン・クランチ”と“フルーティー・ペブルス”と“キング・ビタミン”を紹介してあげるよ。」
モルダーは笑いながらそのシリアルをカートの中に投げ入れた。

コーナーを曲がり、もう一度モルダーはリストを確認した。
「T・P・・・T・P。T・Pって何の略だと思う？ウィル。」
ウィルは知らん顔でジュースを飲み続けた。
「参ったな・・・この店の中にT・Pって略せる物がどれくらいあるんだ？」
数分後、モルダーはトイレット・ペーパー、トゥース・ペースト、トマト・ペースト、トルテリーニ・パスタ、タルカム・パウダー、そしてタピオカ・プディングをカートに次々入れていった。

ウィルがジュースを飲み終えた。
「さあ、げっぷをする番だぞ、big guy、たまった圧力を解放しないといけないからな。」
モルダーはウィルを抱き上げて優しく背中をたたき始めた。
ウィルは赤ちゃん特有の声をあげながら、スカリーによく似た大きな蒼い瞳で広い天井を見上げていた。
モルダーが下を見ると、床にウィルの白い靴が転がっていた。
「ウィル、お前はきっと靴に金のかかる子供になるな。」
モルダーがさらに背中をたたくとウィルはげっぷをし、そして大きなくしゃみもした。
「寒いのか？風邪をひくなよ、ウィル。お前を冷凍食品の前に置き去りにしたんじゃないかってママに疑われちゃうからな。」
モルダーはそっとウィルをカートのキャリアーに座らせ、靴をはかせた。

大量の買い物で詰まったカートを押しながらモルダーはつぶやいた。
「いつもこんな重いカートを押してるなんて、本当にスカリーは強いな。」
ウィルがあくびをして目をこすった。
「もうすぐだ、ウィル。もう済むからな。後はミルクを買えば終わりだ。」
モルダーはミルクが並んだコーナーまでたどり着くと、目を見開いた。
「何て事だ・・・！ウィル、これは参ったぞ。」
モルダーは一本一本ミルクを取りだし、表示を見てうめいた。
「全乳、乳脂肪2％、3％・・・低脂肪、無脂肪、チョコレート・ミルク、バナナ・ミルク、ストロベリー・ミルク、ヤギのミルク、豆乳、1ガロン（約3.8・）入り、ハーフガロン入り、1パイント入り。コーンを選ぶより難しいぞ。こういう時は頭を使うんだ、ウィル。こういう時は落ち着いて考えるんだ。」
ウィルは足をバタバタさせて父親を見上げた。
「まず1つめとして、お前はこうしたミルクを飲まない。なぜならお前はママのを飲んでるからだ。2つめに、ママがお前のためにミルクを飲む。直接お前にミルクを飲ませた方が手間が省けていいと思うけどな。」
モルダーはニヤッと笑ってウィルにささやきかけた。

「ママのおっぱいはパパのものでもあるんだからな。」

モルダーはミルクの陳列棚に視線を戻してため息を付いた。
「まずシリアルを食べるときにミルクをかける。そしてデビル・ドッグを飲み込むときもミルクが必要だ。だから4ガロンあればしばらくはもつな。」

ウィルがゆっくり目をこすり始めた。
「眠くなったのか？もう少し我慢してくれbuddy、後は会計だけだ。」
モルダーはレジの列に並んで会計を待った。
レジの係りが会計をしながらモルダーを見、そしてウィルを見て微笑みかけた。
モルダーはこうやってウィルが見られるのが大好きだった。
支払いをしてカートを出口に向かって押そうとすると、カートのキャリアーの中でウィルが眠り始めていた。
モルダーはそっとウィルにジャケットを着せて上からブランケットを掛けた。

すっかりウィルは夢の世界だった。

モルダーは後部座席のドアを開けてウィルをチャイルド・シートに座らせ、ベルトをしっかり締め、荷物をトランクとバックシートに積み込んで鼻歌を歌いながら家に向かって車を発進させた。
気分は山のような獲物を、意気揚々とほら穴の家族に持ち帰る原始時代の男のようだった。

アパートのドアをノックして、スカリーが出てくるまで待った。
スカリーが中から返事をしてドアを開けるとモルダーにお帰りなさいのキスをし、眠っているウィルを彼の腕から抱き取って額にキスした。
「寂しかったわ、二人とも。どこに行ってたの？遅いから心配してたのよ。」
ウィルをキッチンのテーブルに下ろして、片手に5つの買い物袋を抱えたモルダーに声をかけた。
モルダーは買い物袋をドサッとカウンターに下ろし、スカリーの腰を引き寄せて額にキスした。
「君のダンナさんは外に獲物をとりに行ってたのさ。」

モルダーは買い物袋を開け、一つ一つ取り出し始めた。
「リスト通りに買えた？モルダー。」
「大体ね。」
「こんなに買って、渡した60ドルでよく足りたわね。」
モルダーはテーブルに寄って、ウィルの頭をそっと撫でた。
「ああ・・・結局僕のカードで払ったよ。」
「一体いくらかかったの？」
モルダーはスカリーの視線から逃げるようにウィルの頭をなで続けた。
「380ドルだ。」
「これで！」
「違う違う、もっと車の中に積んであるんだ。トランクとバックシートいっぱいに。」
スカリーは袋の中から2インチの厚さにつぶれた全粒粉のパンを取りだした。
「モルダー、これどう言い訳するつもり？」
「スカリー、それは僕のせいじゃないよ。店員が最初にパンを詰めて、その後に重い物を詰めちゃったんだよ。」
スカリーは笑い出しそうになりながら肩を震わせた。
「モルダー、ちゃんと会計のこと考えて買い物した？ウィルとはしゃいでばっかりだったんでしょう！」
とうとうスカリーは笑い出して彼の腰に手を回した。
モルダーは何かを思いだしたようにハッとし、眉をひそめて彼女を見つめた。
「どうしたの？モルダー。」

「・・・デビル・ドッグを買い忘れた。」

End