DISCLAIMER: The characters and situations of the television program 
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TITLE : Fumbling Towards Ecstasy

作：Jenna Tooms　　訳:tomo

10　-　Ice Cream

“君の愛はアイスクリームより甘く
　これまで僕が知らなかったほど甘く・・・”

1.

理由はないが、僕はスカリーが用意をしているところを見るのが好きだ。
服を着替えたり、化粧をしたり、ベッドを直している姿もたまらない。
スカリーが泥のパックを顔に塗って振り向いた顔さえ大好きだ。
昨夜スカリーは泥のパックを顔に塗って青い顔に変わっていた。彼女は僕の顔にもひんやりとした
泥パックを塗りつけた。そんなに悪くない。

今日はNew Year's Eveなので、僕たちはダンスパーティーに行くことにした。
僕はもう着替えもひげ剃りもすませてベッドに横になり、スカリーが着替えているのを眺めて、
満足げに楽しんでいた。

スカリーはファンデーションやマスカラを塗り終え、今口紅を塗っているところだ。
最初にリップペンシルで唇の輪郭を描き、小さな筆で口紅をとって塗っていく。
スカリーは今、細いガーターに止められたストッキングとスリップのみを身につけていた。

スカリーは僕の視線を感じると鏡越しに微笑んだ。
「どうしたの？化粧するのを見るのは初めてじゃないでしょう？」
「そうだけど、こんなに面白いとは思わなかったんだ。」
「何が面白いの？あなたもやってみたい？」
スカリーは眉を上げていたずらっぽく微笑んだ。
「いや、やめとく、やめとく。スカリー、君をどうすれば一番きれいに見えるか僕は化粧より
知ってるよ。君が服に着替えてるとき僕が何を考えてるか知りたい？」
「さあ、何かしら？」
「脱がせたい。」
「ああ、もちろんそうでしょうね。」
スカリーは笑って口紅と筆を置き、僕の方に向き直った。

「私が欲しい？」
スカリーは柔らかで、甘く、低くかすれるような声で僕に聞いた。
思わず僕は微笑んだ。
〈君が欲しいかって？〉
スラリとして美しい曲線の体、炎のように輝く髪、懐かしい海を思い起こさせる瞳。
キューピッドの矢のように僕の心に刺さる微笑み。全てが僕を圧倒させる。
氷を浮かべたウィスキーのように僕を酔わせる声、豹のように鋭い心。

君が欲しいかって？

欲しいよ。

スカリーは僕の表情から答えを読みとったように微笑んだ。
「パーティーの後まで待つのよ。」
「何とかやってみるよ。君の方こそ待てるのかい？」
「待てると思うわ。ゆっくり踊ってくれる？」
「どんなダンスも君の思いのままさ、baby。」
「baby。」
スカリーはおもしろい言葉のように繰り返した。
そしてクローゼットに近づくと、中からワイン色のベルベットのドレスをとりだした。
スカリーが身につけると肩から胸にかけて広く開いて、膝まで流れるように美しいドレスだった。
これは彼女が自分にクリスマスプレゼントしたもので、ドレスに合わせた靴も用意していた。
〈パーティーなんか後でいいじゃないか。少しくらい遅れて二人で・・・〉

「後ろを上げてくれる？モルダー。」
スカリーは後ろ髪を手で持ち上げた。
僕は立ち上がって、手をベルベットに包まれた体にはわせながら、ゆっくりファスナーを上げて
いった。
そしてうなじにそっとキスして髪の生え際まで唇をすべらせた。
スカリーはため息をついて首を傾け、少しのけぞりながら腕を上げて僕の首にかけた。

「パーティーに行きたくない？モルダー。」
「ああ・・・いや・・・行きたいよ。君と踊りたい。まだ一緒に踊ってないだろう？
僕は君と“Walking in Memphis”の曲に合わせて踊る夢を見たよ。」
「マーク・コーンの歌？私好きよ。“True Companion”は聞いたことある？」
「もちろん。」
スカリーの髪に顔をすり寄せて歌ってあげた。

「“震える指で　僕は君のベールを上げる　
　　そして僕たちの新しい家に連れて行って　
　　君の本当の相手だと証明するために　
　　僕たちは激しく愛し合うんだ　
　　君の本当の相手だってね”」

スカリーはフフッと笑って顔を上げ、僕にキスした。
「夢の中で何があったの？」
「ああ、ちょっと変わっていたよ。寝る前に読んでいたフランケンシュタインの本のせいかな。
ものすごく醜くて、二つの頭のあるマッドサイエンティストがいたんだ。それに僕はなぜだかTVの
“Jerry Springer”に出ていた。」
スカリーは笑い出した。
「目に浮かぶようだわ。」
「僕は多分このスーツを着ていた。」
「このスーツのあなたは好きよ。」
スカリーは振り向いて僕のネクタイを直した。彼女の耳には金のリングのネックレスが輝き、
首にいつものクロスペンダントをしていた。
スカリーの唇は満開のバラの花びらのようで、肌はまるでクリームのようだった。
いや、ホイップクリームだ。
〈ホイップクリーム！〉
まだ冷蔵庫の中にしまったままだった。
忘れてた！
〈やっぱりパーティーよりここにいて、二人でホイップクリームを・・・〉

「モルダー？どうしたの？ぼーっとしてたわよ。」
「ちょっといいことを考えてたのさ、それだけだ。準備はいい？それじゃ行こう。」


2.

New Year's Eve は他の祝日とかなり違う。
もし君が誰からもパーティーに誘われなかったら、タイムズスクェアに行くといい。
運が良ければ隣の人とキスできる。

スカリーと僕がパーティー会場であるユニタリアン教会の大ホールに入ると、声の高い女性の声で
“Love me love me ,say that you love me・・・”と歌う声がダンスビートにのって僕たちを
迎えた。
今ティーンエイジャーたちの間で流行っている曲だ。
周りを見渡すとたくさんのカップル達がいて、僕たちはその中でもまだ若い方に入るようで
嬉しかった。
もっとも、ティーンエイジャーのカップルはみなホールの薄暗い角に固まっていたが。

コートを預けていると、スカリーが耳元でささやいた。
「もう少し落ち着いたパーティーかと思ったわ。」
「たぶんもう少し後にバンドが着いて、落ち着いた曲を流すんじゃないかな。」
「だといいけど・・・こんなに激しい曲だとどう踊っていいか分からないわ。」
スカリーは曲にのって、まるで体が痙攣したように踊っているカップルを指差した。
「でも、私もちょっと踊ってみたいかも。」

他のカップル達はトゥーステップを踏んで踊っていた。まだまともなダンスだ。
「スカリー、君に告白することがあるんだけど。」
「何？」
「両親は僕が小さい頃、ダンススクールに3年も通わせていたんだ。」
スカリーは吹き出すのをこらえるように手で口を押さえ、おかしそうに肩をふるわせた。

「それで？」
「だから、少しなら曲に合わせてステップを踏めると思うんだよ。」
スカリーはこらえきれないように笑い出した。多分彼女の頭の中で、少年の僕が白い手袋をはめて
きついダンス用のスーツを着込み、同じくらい小さな女の子の足を懸命に踏むまいと、緊張した顔で
踊っている姿を想像してるに違いない。

「それで？どんなステップを覚えてるの？」
「ワルツとフォックス・トロットなら何とか見苦しくなく踊れると思うよ。」
「じゃあ、証明して見せて。でも言っとくけど私はうまく付いていけるか分からないわよ。」
「まかせてくれよ、スカリー。うまくリードしてあげるから。」
僕はスカリーを腕の中に抱き込んでダンスフロアへ移った。
ちょうどその時音楽もスローテンポのバラードに変わった。


3.

「僕は今恋をしてる。」
僕はスカリーを腕の中に抱いて、踊りながら告白した。
「急にどうしたの？モルダー。」
スカリーは何かおもしろいジョークを待っているように、唇の端を上げて微笑んだ。
「ラブソングの意味が突然分かったんだ。」
「あら、どんなこと？」
「例えばこうさ。」
僕はさらにスカリーの腰を引き寄せて、耳元で祈りをつぶやくように優しく歌った。

「“僕には君の心の輝きが見える
　　僕は君の本当の輝きを知ってる
　　だから愛してる
　　自分の心を見せることを怖れないで
　　君の心はまるで虹のように美しい・・・”」

若い子たちがよく歌っている曲だ。
「知ってる？モルダー。」
「何だい？」
「この曲を聞くたびに、あなたのことを思いだしてたのよ。」
「本当に？」
「ええ。私の気持ちみたいだったのよ。時々本当のあなたを知ってるのは、私だけしかいないん
じゃないかって思ってて・・・。」
「君が知っててくれればいいよ。」
「じゃあ、私にも責任があるわね。」
スカリーは真剣な顔で僕を見上げ、頬に手を触れ、僕の目を見つめながら曲に合わせて歌った。

「“私にはあなたの心の輝きが見える
　　私はあなたの本当の輝きを知ってる
　　だから愛してる
　　自分の心を見せることを怖れないで
　　あなたの心はまるで虹のように美しい・・・”」


スカリーだけが僕の心を美しいと歌ってくれる。


僕は彼女の歌を心に刻みつけて、そっとキスし、彼女を包み込むようにゆっくりと踊り続けた。


4.

ウィル・スミスの“Men In Black ”に曲が変わって、僕たちは踊り続けるか迷った。
「この映画は好きなんだ。」
「ええ、覚えてるわモルダー。上映中ずっと笑ってたものね。」
子供達がビデオクリップの振り付けをまねして踊っていたが、ほとんどの人は脇に下がって
休んでいた。
「さあ、スカリー、これで踊ってみるかい？」
「また今度ね、のどが渇いたの。」
スカリーは僕の手を引っ張って飲み物をサービスしているコーナーへ向かい、一杯ずつフルーツ
パンチをもらって、静かなところに腰を下ろした。

「モルダー。」
「ん？」
「私のことを何度か夢に見たことある？」
僕はしばらく踊っている人たちを眺めた。
「ほとんど毎晩だよ。」
「そう・・・。」
「君は？」
「時々ね。あなたはいつも私より夢を鮮明に覚えているわよね。」
「多分潜在意識が高いんだろうな。そこで僕の皮肉な性格が生まれるんだよ。」
スカリーは微笑んでフルーツパンチを一口飲んだ。

「そんなことないわ、モルダー。ただあなたの潜在意識が働いて、まるで現実に近い夢を見させて、
本当に起こったことのように思わせてるのよ。」
「現実に近いと言うより、詳細なんだ。僕は普通の人より夢を覚えてるんだよ。スカリー、女性の
方が男性の夢より色鮮やかだっていう説を知ってるかい？」
「本当に？知らないわ。夢の色っていうのはその人の置かれている環境が影響していると聞いたわ。
例えば監獄の中の囚人は、白黒の夢ばかり見る傾向があると聞いたわ。」
「僕もそれは知ってる。」

「それで、最近は私のことを夢で見た？」
「ああ、スカリー、夢に見たとも。」
「何してた？」
「ここ最近は起きてる間に僕たちがしてることが、はっきり影響してるよ。」
スカリーは頬を赤くして、軽くにらむように微笑んだ。
「その影響の元は察しが付くわ。その前には？」

僕はスカリーの手を取り、手のひらを指でなぞりながらつぶやいた。
「君が病気だったとき、僕は君が死んでしまう悪夢を見続けたんだ。」
スカリーの微笑みが消えて、両手で僕の手を包み込んだ。
「私もそうだったわ。」
「君が奴らに誘拐されたときも・・・、僕はその間ほとんど眠れずにいたけど・・・眠ったときは
奴らが君に何かしてる夢を見ていたんだ。」

スカリーは僕の手を唇に近づけて、優しくキスした。
「モルダー、あなたがニューメキシコで死んだと聞かされたとき、あなたが夢に出てきて
『戻ってくる』って言ったのよ。」
僕はうなずいた。スカリーは以前にもそのことを僕に教えてくれていた。
「あなたがいなくなるたびに、またその夢を見ないかと願ったわ。そのおかげか何回かは
見られて・・・。」
「僕はいつも戻ってきたよ。」
「戻ってくる夢を見られないと、恐ろしくて震え続けてたわ。」
「もうそんな思いはさせないよ、スカリー、約束する。その代わり僕の背中を見張ってくれ。」
「他の部分も、全部よ。」
スカリーは微笑んで僕にキスした。


「最近だけど、僕は悪夢を見たんだ。」
言うべきか迷ったが、とうとう彼女に打ち明けた。
「悪夢を？いつ？」
「初めて一緒のベッドで眠った夜だよ。それで目が覚めたんだ。」
「モルダー、どんな夢だったの？」
「僕たちは森を一緒に歩いていたんだ・・・なんて森かは分からない。君は落ち着いてて、この道は
知ってるから、と僕を引っ張っていったんだ。洞窟の前について、どうしても中に入りたくなかった
けど、君は中を知ってるからと言って僕を連れて入っていってしまうんだ。そして中で手を離したん
だ。」
「私が？あなたを置いて？」
「ああ。真っ暗な中に置いていったんだ。」
「モルダー、なんてこと。ひどいことだわ。あなたを置いていくなんて考えられないわ。」
「僕がいつも一人で失踪したむくいかな。」
「モルダー、冗談じゃないわよ。」
「わかってるよ、スカリー。君はいつもそばにいる。これはただの夢さ。」

スカリーの手が僕の髪を撫で、首の後ろを優しくさすった。
「私は絶対にあなたを一人にしないわ。たとえ死んでもあなたのそばにい続ける。モルダー、
愛してるわ。」
僕はスカリーの髪に手を差し入れて引き寄せ、優しく口づけた。
「愛してるよ、スカリー。死よりも強く君を愛してる。」
スカリーは微笑んで、僕の肩に頭をもたれさせた。


5.

レゲエは危険なほどセクシーな音楽だ。官能的なリズムで聞く人の心を惑わしてしまう。
DJがボブ・マーレイの“No Woman No Cry”をかけた。
僕は座ろうと思ったが、スカリーは踊りたがった。
僕たちは体を密着させて、動くたびに腰をすりあわせながら、ゆっくりリズムに乗って踊った。
お互いの目から決して視線をはずさずに、じっと見つめ合っていた。

今夜は年が明けるまでここにいる予定だったが、僕はもう我慢できなくなっていた。
「家まで風に乗って帰らないかい？スカリー。」
僕はかがみ込んで、スカリーの耳にささやいた。
「モルダー・・・、もう少しいましょう。12時まで。今11時45分だから、もうすぐよ。」
「じゃあ、12時になったらすぐ帰ろう。」
「わかったわ。」
スカリーは踊りながら、両腕を僕の首にまわした。
彼女のつけた香水が彼女自身の香りと混ざって、うなじからなまめかしく立ち上っていた。
〈なんていい香りなんだ。〉
僕たちは曲が終わってもお互いを抱きしめたまま、揺れるようにゆっくりと踊り続けた。


小さな角笛の入ったバスケットを持った少年が近づいてきた。
「失礼します。新年の笛を吹きませんか？」
それぞれ角笛を選んで、スカリーはピーッと鳴らして見せた。

「なかなか難しいわね。」
「もっと力いっぱい吹くんだよ。スカリー、見ててごらん。」
僕は深く息を吸い込んで、力いっぱい角笛を吹いた。
まるで死にかけた怪鳥のような音がブーッと鳴り、スカリーは笑い転げた。
他の誰も上手に角笛を吹けないようだったが、ホールは角笛の鳴る音で一杯になった。

今夜の司会を務めていた町長がステージに上がって、楽しそうにマイクに向かった。
「新年まであと1分です。皆さん新年への決意を決めましたか？」
「来年はもっとチョコレートを食べたい！」
「もっとビールが飲みたい！」
人々は口々に叫んだ。
町長は楽しそうに人々にほほえみかけた。

僕はそっとスカリーの耳元でささやいた。
「新年の決意。新年の夜から君の体の一つ一つの細胞までが、僕と一緒にどこまでも絶頂を迎える。」
スカリーはぱっと手のひらで僕の口を閉じ、まっ赤になって笑った。

町長はポケットから懐中時計を取りだし、新年までのカウントダウンを始めた。
「10！9！8！7！6！5！4！3！2！1！ハッピー・ニューイヤー！」
天井から風船が降ってきて、
人々は一斉に角笛を吹いた。そして誰からともなく「蛍の光」を歌い始めた。

「“変わらぬ愛に、友情に杯を挙げよう。遠い遠いあの日のために。”」
僕の目を見つめながらスカリーも歌った。

僕たちはしっかりと抱きしめ合い、新年のキスをした。
スカリーの表情には、‘もう帰る時間よ’と僕に知らせていた。


6.

運転しながらでも、スカリーの体に触れずにいられなかった。
僕の手は彼女の髪や肘に休むことなく手を走らせ、僕の膝の上をはうスカリーの手にも重ねた。
よく事故を起こさなかったものだと感心する。
一刻も早くスカリーの胸のふくらみをこの手につかみ、舌を口の中で味わい、柔らかな体に
のしかかって、彼女の手に腰をつかまれたい。
〈スカリーが僕の上に来れば、お尻を両手でつかんで・・・。〉
僕は家まで飛ぶように車を走らせた。

スカリーの手は、今僕の膝をつたって腰まで来ていた。
僕は雪が溶けて水たまりのできた車庫の中に車を突っ込むように停め、手探りでキーを抜こうとした。
でもどうしてもスカリーの体から手を離すことができず、とうとう彼女の方が車のキーをイグニショ
ンから引き抜いた。
「早く来て、love。」
スカリーは甘くささやいて車から降りた。
僕の手はスカリーを求めてあまりに震えていたので、玄関の鍵も彼女が開けた。
〈何で僕はこんなになっているんだ？〉
それはスカリーのせいだ。
いつだって僕を動揺させるのはスカリーだ。

スカリーは僕を一番愛してくれている。僕は彼女のそばにいることのできる数少ないうちの一人だ。
スカリーだけが僕を知ってる。
彼女の深い愛は僕を圧倒させる。
ダナ・スカリー・・・僕の女神、クィーン、天使、そして素晴らしい女性・・・が僕を愛している。

僕たちは玄関のドアからもつれるように入ると、乱暴にドアを閉め、荒れ狂ったようにお互いの唇を
むさぼった。鍵を閉めてコートを脱いでる間も口づけ、決してスカリーの唇を離さなかった。
もう一刻も待ってられなかった。

僕は低くかがみ込んでスカリーの体をすくうように抱き上げ、階段に向かった。
「また背中を痛めるわよ・・・」
「かまわない。」
スカリーにキスして階段を上がった。

ベッドの端にスカリーをそっと下ろし、口づけながら僕はひざまずいた。
スカリーは僕の頭を両手で支え、僕はベルベットのドレスに忙しく手を走らせた。
「感じるかい？スカリー、僕が触れると感じるかい？」
「いつもよ、モルダー。あなたが触れるときはいつも。」

僕たちは勢いよくベッドに横たわり、手足を絡めるように抱き合った。
スカリーの瞳は大きく開いて妖しい光を放ち、唇をなめるしぐさは狂おしいほどエロティックだった。
僕はずっとスカリーが無意識にそうするたびに、謎の多い事件や超常現象を追いかけるように、
彼女の舌を追い求めて味わいたいと願い続けてきた。
今、願いは叶った。

スカリーは僕のネクタイを引き抜き、スーツのジャケットを脱がせ、シャツのボタンを不器用に
手探りではずしだした。うなるような声を出しながら、胸から腹へ開いた順に手を走らせ、シャツを
腰から引き抜こうとした。しかし腕のカフスボタンが引っかかり、いまいましそうにボタンと格闘
した。

僕の肌の色はスカリーと比べると浅黒く、そして体も大きい。時々彼女の横に立つと、自分が不自然
なほど巨大で背が高すぎると思うときがあったが、愛し合うときは、まるで彼女と最初から一つだっ
たように完全に重なり合えた。

スカリーの背中を支えながら体を起こし、ドレスのファスナーをはずし、そっと彼女の体から下ろして脱がせた。
スカリーは僕の表情をじっと見つめながら微笑み、スリップの肩ひもを肩をすくめてずらした。
僕がストラップレスのブラをはずして横に置くと、スカリーは深く息を吐いた。
「苦しかったのかい？」
「少しだけ。ストラップレスは少し苦しいくらいでとめないといけないから。」
まだスカリーはスリップをつけたままだった。でもまだ脱がせたくない。
白いレースが彼女の肌を飾り、とても魅惑的でセクシーだった。
「スカリー、もっと頻繁にこれを着てほしいな。」
僕は彼女のふくらみとレースが接するところに手を触れながらささやいた。
「わいせつ罪で逮捕されるわ。」
「僕が身体検査してあげるよ。」
「それはあなたは楽しいでしょうね。」
スカリーは笑って額を合わせ、キスした。

「忘れない事ね、私はあなたの弱点は知り尽くしてるのよ。」
スカリーは僕が一番くすぐったがるところを、思いきり手でくすぐった。
僕は犬がキャンキャン鳴くような声を上げてスカリーの腕を捕まえ、ベッドに張り付けた。
「おしおきだぞ・・・。」
そう言ってひげの生えかけたあごをスカリーの首にすり寄せ、頬ずりした。
スカリーは笑い出して、身をよじって抜け出し、腰を振りながらドレスを落としてイスに掛けた。
「次は？モルダー。」
「パンティー。」
スカリーは微笑んでスリップの中に両手を入れ、パンティーを足下まで引き下ろして床に蹴った。
「それで？」
「スリップ。」
スカリーは腕を組んで頭からスリップを脱ぎ、床にひらひらとスリップを落とした。

僕は思わずうめいてベッドカバーをぎゅっと握った。
スカリーは勝ち誇ったように微笑んだ。明らかに、このゲームの支配者は彼女の方だ。
ガーターベルトとストッキング。それ以外はヒールの靴を履いただけの裸のスカリーの姿は、
まるで美味な、危険なほどに甘いチョコレートデザートのようだった。
僕はムチと手錠を使って、何か命令してくれてもいいと願った。


「モルダー・・・、何して欲しい？」
「ああ・・・こっちに・・・。」
スカリーは微笑みながらベッドに近づいて、僕の前で立ち止まった。
「言いなさい、モルダー。私に何して欲しい？」
「君が欲しい、全部欲しい。君を食べてしまいたいよ。君の一部になって、痛みも悦びも全て僕の
ものにしてしまいたい。細胞の一つ一つまで溶け合いたいんだ。」

スカリーは柔らかな表情で見つめ、僕をそっと横たえて、上からキスした。
「もうとっくにあなたのものよ、モルダー。私の全てはあなたのものだわ。」
スカリーはそう言うと僕にキスし、ベルトをはずしてジッパーを下げ、ボクサーショーツの中に手を
伸ばして微笑んだ。
ひんやりとした指が、僕の熱くいきり立ったものを優しく撫でた。
「それは君のものだよ。」
僕はささやいて、スカリーの両手を手で包んで自分の心臓の上に置いた。
「ここも君のものだ。」
彼女の手にキスして顔の上に置いた。
「全部だ--君が望むものすべて--すべて君のものだよ。」
「全部いただくわ。」
スカリーは微笑んで目を開けたままキスし、ボクサーショーツから手を引いた。

僕はもっと靴とガーターベルトだけの姿のスカリーと遊ぼうと思っていたが・・・考えが変わった。
彼女の肌が恋しい。

僕は手を伸ばしてスカリーの靴を脱がせ、ガーターベルトをはずした。
スカリーは僕がストッキングを脱がせている間中キスして、僕が脱がせやすいように体をよじらせた。
僕はスカリーの柔らかなお腹に顔をうずめ、彼女は僕の髪とあごを優しく撫でた。
スカリーのお腹にキスを降らし、上へ唇をすべらせ、舌を体中にはわせてスカリーの肌をしめらせた。
僕が唇にキスすると、スカリーは僕を見つめて微笑んでいた。まるでモナリザのような美しい微笑み
を浮かべていた。
多分彼女自身は自分が微笑んでいるとは気付いてないだろう。それほど自然な微笑みだった。

「君は美しい。」
「あなたが美しくしてくれるのよ、モルダー。」
スカリーは僕を引き寄せてキスした。スカリーの肌は僕の舌と汗のせいでしめっていた。
僕は彼女の髪の生え際に光る汗を舌でなめ取った。

スカリーの唇は僕の首筋に固定され、手で僕の肩をぎゅっとつかみ、首筋に舌をはわせ、甘く噛んだ。
しかし僕が手をスカリーの太腿に下ろし、脚の間の花びらへ指を滑り込ませようとすると、スカリー
は顔を離し、身をよじった。
その理由は指ですぐ分かった。まだスカリーは準備ができていなかった。
「スカリー？大丈夫かい？もう少し時間がいるかい？」
「少しだけ。大丈夫よ、少しだけまだ時間がいるだけよ。」
「僕にまかせて。」

僕はベッドに横たわってスカリーの体を引き寄せ、お尻を僕の顔の上に座らせた。
スカリーはため息のような甘い声を出して膝を大きく開き、体重が彼女の膝にかかるように
四つ這いになった。
僕の目の前に素晴らしい眺めが広がった。
〈どこから始めよう、全部欲しい。〉
腫れたピンク色の花びら、赤い花びら、僕を誘う暗い入り口、そして彼女の最も敏感で最も小さな
かわいい突起。
〈ここだ。〉
僕の本能が働き、舌を花びらの中に沈ませた。

僕の舌を感じた瞬間スカリーは体を固くしたが、お尻を僕の顔の上で揺らし、すぐすすり泣くような
声を上げ始めた。
蜜が彼女の中からあふれ始め、僕の顔は潮風のような、蜂蜜のような彼女の蜜で濡れていった。
〈濡れてる。僕のために濡れてる。〉
スカリーは濡れて体を燃えるように熱くさせ、ため息をつき、すすり泣くようにしてあえいでいる。
僕はスカリーのふくれた小さな突起を唇で挟み、口の中で転がすように吸いながら、舌でいじめた。
その瞬間スカリーは叫び声を上げ、体を震わせてすすり泣いた。
僕は舌を彼女の入り口に差し入れ、中で渦巻くように舌を包む壁をなめ上げ、指で突起に優しく
触れながら、長く激しく愛した。

スカリーは声を上げながら激しく首を振り続けた。
体がやけるほど熱く、汗で体中が光り、髪も汗で濡れて首を振るたびに汗がほとばしった。
そして快感にもだえ、叫ぶように上げるあえぎ声の合間に、僕の名を呼び続けた。
「モルダーやめないで！やめないでやめないでモルダー・・・！」

今スカリーは何より美しかった。
彼女の甘くかすれた声も素晴らしかった。彼女のため息と共にのどから出るあえぎ声も美しかった。
のけぞった姿も、苦しそうに傾けた首も、僕の顔に乗る彼女の太腿も・・・すべてがこれ以上なく
美しかった。

そして素晴らしいスカリーの味。
熟した果物より甘く、チョコレートのように濃く、上等のスコッチのように素晴らしい薫り。
僕は酔い続け、これが最後の食事かのように彼女をむさぼり、音を立てて残すところなく彼女を
食べ続けた。

僕は舌を彼女の突起へ、指を入り口から中に差し入れ、引き抜き、舌で突起をはじいてさらに
いじめた。
スカリーが最も感じる場所を探し求めて・・・。
「モルダー、モルダー、私・・・もう・・・ああ！もうダメ・・・！ああ！」
スカリーは首を振って体を大きく揺らし、太腿をさらに大きく開いて僕をできる限り奥に招き入れた。
両手で僕の頭を抱え、高く、低く叫び声を上げ続けた。
彼女の肉壁が僕の指をきつく締め付け、その度に彼女の脈拍の早さが伝わった。
スカリーは狂ったようにもだえ、歯を食いしばって快感に耐え続けたが、大きく体を揺らした瞬間、
あえぎ声をいっそう高く上げて僕の名を叫んだ。
「モルダー！」
スカリーは大きく背中をのけぞらせ、崩れ落ちた。

今のスカリーの美しさを・・・どう伝えればいいだろう。快感に酔い、
肌が上気して美しい色に染まっている・・・。
まるで彼女はアートのようだ。体に全てを描きたい。


「スカリー。」
僕がそっと頬に触れると、スカリーは微笑んで目を開けた。
「魔法を使ったでしょう、モルダー。」
スカリーはそう言うと僕の顔を寄せて、顔中に優しいキスを降らせた。

スカリーは膝で僕の腰を引き寄せ、両腕を背中にまわし、舌を僕のに絡めて深く口づけた。
彼女は僕を誘っていた。誰が断ることができる？
僕はそそり立った自分をそのまま彼女にあてがい、ゆっくりとゆっくりと腰を沈めた。
スカリーの熱く濡れた肉壁がきつく僕を包み込んで、さらに奥へと誘い込んだ。
「・・・スカリー！・・・」
僕は全てを彼女の中にうずめ、二度とここから離れたくなかった。
スカリーは両手で僕の頭を支え、じっと目を見つめた。スカリーは瞳を見開いたまま僕を見つめ
続けた。
〈そうだよ、スカリー。僕を見るんだ。君を愛してるのは僕なんだよ。〉
僕も彼女を見つめたまま動きを激しく変えて愛し続けた。彼女の蒼い瞳の中に吸い込まれて溺れて
しまいそうだった。

お互いのあえぎも耐える表情も、絶頂の激しい波が僕らを飲み込んだときも決して目を閉じずに
見つめ合い、きつく抱きしめ合って波に身を任せた。

ようやく波が引こうとして、僕たちは目を閉じてお互いの体に崩れ落ちた。


長い間僕はゆっくりスカリーの背中を撫で、スカリーは僕の胸を撫でて呼吸を落ち着かせた。
「ハッピー・ニューイヤー、モルダー。」
「ハッピー・ニューイヤー、スカリー。」
「ふふ・・・」
「・・・スカリー、君に打ち明けることがあるんだ。」


+-+-+-+-+-+
“True Companion”はMark Cohnの曲
2.の冒頭で流れてるのは“Lone Fool”the Cardigansの曲
教会のホールで二人が歌うのは“True Colors”Cyndi Lauperの曲
“Men In Black”はWill Smithの曲
“No Woman No Cry”はBob Marleyとthe Wailersの曲
“蛍の光Auld Lang Syne”はスコットランド民謡Robert Burns作
・スカリーが歌うのは日本版“蛍の光”ではなく、原文からの訳です。


→11　-　Fear　へ続く。