Disclaimer: These characters belong to each other, not me.
Title: Splendor in the Grass
芝刈りなんて、'くさ'くらえ！
１３歳の夏。友達がそう言った。
あの夏、僕たちは家の芝刈りをして、初めてお金を稼いだ。New England郊外のWASP家庭の少年達にとっては、大人への階段の第１歩みたいなものだ。
最初の数ヶ月は、楽しくて、今まで触らせてもらえなかった芝刈り機を操ることができるというだけでわくわくした。
しかし、８月の終わりには、この単調な仕事にあきあきしていて、僕らはみんな、そいつの言葉に大笑いして、ものすごいジョークを言ったかのように褒め称えた。
高校の間も、夏休みにOxfordから戻ってきたときも、芝刈りは僕の仕事だった。
アパートで一人暮らしを始めたとき、何が嬉しかったかといって、芝刈りをしなくてすむことだったと思う。
ところが、DanaがMelissaを妊娠していることがわかってから、僕たちは、家を買うことにした。
それはつまり、僕の家には庭がある、ということだ。
今の僕は、ちょうど、父が僕に芝刈りの仕事を譲って「引退」したのと同じくらいの年だ。
だけど僕には、かわいいおちびさんの娘はいても、なりばかり大きい息子はいないから、芝刈りは僕の仕事ということになる。
もちろん、バイトの男の子を雇うことだってできるが、やっぱりこれは僕がやる。
これはバイト代を惜しんでということではなく、この家に住み始めた最初の週末、僕はあることに気づいたんだ。
刈りたての芝生の香りの中に、シャツを脱いで汗を流している男がいる、という光景が、ある赤毛の女性連邦捜査官に対しては、強烈な媚薬のような効果を発揮するらしい・・・
というわけで、僕は、僕達の庭の芝生は自分で刈ることにした。
そう、「芝刈りの憂鬱」はいまや、僕にとって、うんざりするどころか、体のどこかが疼くような興奮を得られる仕事となったわけだ。
家の前と両横を終わって、裏庭を３分の１ほど終わったところだ。
ScullyとMelissaが、ガラスドアの向こうから、僕を眺めている。
Melissaは、芝刈りを、楽しいエンタテイメントか何かのように思っているみたいだ。Barneyのお話より、Daddyが葉っぱをちょん切っているのを見る方が面白いらしい。
Scullyがこっちを見ているのに気がつくと、僕は、着ていたTシャツを脱いでみた。
ここからですら、彼女が喉を鳴らして、渇いた唇を舌で舐めたのがわかる。
僕は、芝刈り機のスイッチを切ると、ふたりに手招きしてから、ガーデンチェアに座りこんだ。
Melissaは、刈ったばかりの芝生の上を、はしゃいだ声をあげて今にも踊り出しそうに、裸足でよちよち歩いてくる。
Scullyは、氷をたくさん入れた大きなタンブラーに、アイスティーを注いで持ってきてくれた。
僕はそれを受け取ると、一気に飲み干した。
「Daddy？」Melissaが僕の膝によじ登りながら、話しかけてきた。
「なんだい？Melissa」
「ねんね？」僕の胸にふれながら、質問する。
Melissaは首を傾げて、僕を見ていた。
Melissaを寝かしつけるのは僕の役目で、僕はシャツを脱いで彼女をあやすことにしている。
この子が生まれたときからの習慣だ。なにしろScullyが、親子の絆を深めるにはスキンシップが大切なのよ、と言い張るものだから。
「ちがうよ、Melissa。まだねんねの時間じゃないよ、」僕は答えた。
「Daddyはね、暑くなっちゃったんだよ。」
「Lissaもー！あちゅーい。」
そう言いながら、自分の着ていたTシャツをたくし上げた。
Scullyが手を貸して、シャツを脱がせると、Melissaはおむつだけの'はだかんぼ'になる。
「Mommyあちゅい？」Melissaが聞いた。
「ううん、Mommyは暑くない。」Scullyが笑いながら答えた。
「ちがうね、僕にはそうは見えない。Frohikeもきっとそういうよ。」
ガーデンチェアを広げれば、３人で座ることもできる。僕は脚を投げ出して座り、あとのふたりは僕の膝の上を自分たちの居場所と決め込んでいる。
僕は、Danaを膝の上に引き寄せて、Melissaの隣に座らせてから囁いた。
「Mommyは、とっても’あつく’なってるんじゃないか？」
「そうかもしれないわね。」
彼女も、僕の耳元で囁きかえした。
僕の胸に、指を１本押し当てて、軽く引っ掻くみたいにしてお腹のあたりまで、その指先でなぞっていく。
「でも、服を脱いで冷めるようなものじゃないわよ。少なくとも、Melissaが起きてる間はね。それにFrohikeだって、もうそんなことは言わないと思うけど。」
僕は、くすっと笑ってしまった。
FrohikeのScullyに対する態度は、ここ数年ですっかり変わったのはたしかだ。
Danaと僕が結婚してからというもの、彼女の性的魅力に関するコメントは一切差し控えるようになった。
最初の年は、僕らの友情を大切にする気持ちからそうしていたのだと思う。つまり、その時点でも彼女のことを’ホット’だと思いながら、夫である僕に向かってそんなことを言うべきではないと考えていたのだろう。
ところが、彼女が妊娠してからは、彼の気持ちそのものにも変化が生じた。
彼は、妊娠した女性や、母親になった女性に、性的な魅力を感じることはまるで罪悪だとでも考えているようだった。
心理学的観点から言えば、これは非常に興味深いことで、Frohikeがいつまでも少年のような心のままでいるのは、ここらへんに原因があるのかもしれない。
「まあな、だけど僕は君のせいで、やけどしそうだよ」僕は彼女にそう言った。
「今日みたいな格好をしているときは、特にね。」
Danaは、素肌の上にぴったりした白いＴシャツを着て、すごく丈の短いジーンズのショートパンツをはいていた。
それは、Melissaが生まれる前から持っていた古いもので、今の彼女にはちょっと小さくなっていたので、一番上のボタンを開けたままでないと着られなくなっていた。
彼女はずっと、それを捨てようとしていたのだが、僕はそのたびに、彼女の洋服ダンスに戻しておいた。
そんなことを何度も繰り返すうちに、僕たちはお互いに妥協案を受け入れることに決めた。
彼女は、家で、僕とMelissaしかいないときだけ、それを着ることにすると言った。ただし、せいぜい裏庭まで。それを着て、外には絶対に出たくない。郵便をとりに行くこともいや。誰か他の人がいるときは、それを着るつもりはない、仮にMaggieしかいなくても。
勿論それで全然かまわない。だって、僕はそのショートパンツが彼女の形のよいヒップを包んでいるのを見たいだけなんだから。
「さて、仕事を終えてしまったほうがいいだろうな。」僕は、しぶしぶ言い出した。
「いらっしゃい、Melissa、もうおうちに入りましょう。Daddyが、お仕事したいって。」
Scullyはそう言いながら、僕の膝からおりて、Melissaを抱き上げた。
「Daddy、葉っぱー。」Melissaが答えた。
「お仕事が終わったら、遊んであげるよ。」僕はふたりに向かって言った。
「あとで来るとき、ビールを持ってきて欲しいな。」
「はーい。」Scullyの返事が聞こえた。
そのあと午後は、ずっと夕方まで、楽しく穏やかな時間だけがゆるやかに流れていった。
僕はビールを飲みながら、Danaと一緒に、裏庭でMelissaを遊ばせてやった。
夜になってようやく家の中に入ると、サンドイッチとパスタで、夕食を済ませた。
Scullyと僕は、お互いの体の奥に小さく燃える炎を感じていた。
彼女は、新鮮な芝生の香りを胸一杯に吸い込んでは、僕の裸の胸や腹を見つめ、唇を湿らせていた。微かにあえいだような声で、そっとため息をついたのを、僕の耳は聞き逃さなかった。
僕はといえば、彼女が身をかがめるたびに、腰に手を伸ばして、指を滑らせ、柔らかな感触を確かめていた。
お互いの求めているものを知りながら、それでも僕たちはMelissaを早く寝かそうとは絶対に思わない。
僕のふだんの生活は、X-Filesにいたときほど気違いじみてはいないものの、それでも僕の職業の性質上、かなりの時間を仕事に費やすことになる。
僕にとって、娘と過ごす時間はかけがえのないものであり、少しでも長く一緒に遊んでいたかったから、それを途中で切り上げるなんてことはしたくない。
それに・・・待つ時間っていうのが、その後の楽しみを大きくしてくれるんだし・・・
「さあ、Melissa、お風呂の時間ですよ。」Scullyが言った。
「おふよ！」Melissaが大きな声を出して、おむつのテープをはがそうとした。
父親になってみて初めてわかったことだが、子供をお風呂に入れるのが大変な仕事だと思われているのは、デマなんじゃないかと思う。
Melissaは、お風呂に入るのが大好きで、ほっといたら何時間でも遊んでいるだろう。
Melissaをお風呂に入れるのは、主にScullyの役目だ。
僕は、その辺をうろついて、ふたりが水をパシャパシャさせて遊んだり、ケラケラ笑いあっているのを眺める役に徹する。
特に、ScullyのTシャツが水に濡れて、肌にはりついているのを見るのは楽しいし。
「君の濡れたTシャツ姿って、すごくいいと思うよ、Dana」彼女がバスタブからMelissaを抱き上げたとき、僕は言ってみた。
彼女は、にっこりした。
「そう？私は、あなたのTシャツ'なし'の姿って、すごくいいと思うわよ、Fox、'対等'なパートナーって感じね？」
Scullyは、Melissaを連れて部屋に行き、パジャマを着せてから、絵本を読んで聞かせてやり、一緒に夜のお祈りをした。
その後、下階に降りてくると、彼女を僕の腕の中に置き、おやすみなさいのキスをした。
これほど清らかで無垢な天使を、汗で汚れた僕の胸に抱くのはちょっと気が引けたが、Melissaは全然気にしていないみたいだ。
だが、くたくたに疲れ切った彼女は、子守歌を２曲も歌わないうちに眠ってしまった。
Melissaを２階に運んで、そっとベビーベッドに寝かせてやった。
よし、これで、今夜の「パパのお仕事」は終わった。
さ、あとは、「夫のお仕事」の時間だ。
Scullyはどこにいったんだろう？
もしかして・・・もう服を脱いで僕を待っているかも、なんて半分期待しながらベッドルームをのぞいてみたら・・・いなかった。
下階におりていくと、彼女はキッチンにいた。食器洗浄機の前にしゃがんでいる。
僕は、そっと背後に近づき、彼女が立ち上がった瞬間、彼女の腰をつかんだ。
「奥様、ベッドにお連れしても？」
ぎゅっと抱きしめながら、肩の上にあごをのせて、彼女の耳元にささやいた。
ついでに、耳たぶを甘噛みしてみる。
「いやよ。」
「え？」僕は驚いて、思わず聞き返す。
Scullyは、思わせぶりな駆け引きをするような女性じゃない。
だけど、僕の方に引きつけた彼女の腰には、硬くなった僕自身が押しつけられて、どれほど彼女を欲しがっているかわかってるはずなのに。
彼女だって、僕を求めているはずだ。結婚して３年もすれば、彼女に火がついた瞬間くらい、手に取るようにわかる。
昼間、僕がシャツを脱いでから、ずっと何時間も体を熱くさせていたと思ったんだけど・・・
「ちょっと考えてみたのよ・・・ねえ・・・裏庭に出てみない？」彼女が言い出した。
「せっかく素敵なお庭があるんだし、刈りたての芝生の上で何かできないかしらね？」
まったくもう！
この時間が来るのを楽しみにしていたけど、これじゃ期待以上じゃないか。
Scullyと僕は、ずっと長い間、完全に対等なプロフェッショナルとしてのパートナーだったが、プライベートに関する限り、ありきたりというか、まあ普通のカップルと同じだと思う。
つまり・・・簡単にいえば、僕の方が積極的で手を引いてやる方だっていうか、新しいことを思いつくのも僕の方だっていうか・・・
だから、たまに彼女が何か言い出したときは、僕は必ず大賛成なんだ！
「ベッドからブランケットを持ってくる？」僕は訊いた。
「いらない。芝生の上の方がいいと思わない？」
「じゃあ、行こう！」
僕たちは、手をつないで外へ駆けだした。
僕はいそいで人影がないか、UFOが浮かんでたりしていないか、チェックした。
O.K.異常なし！
今夜は、三日月と瞬く星だけが、闇を照らしている。
万が一、詮索好きなご近所の人が、連邦捜査官の自宅のフェンスを乗り越えて、僕たちをのぞくようなことがあったら？
いい度胸だ、その場で逮捕してやろう！そのためのバッジだからな。
僕たちは芝生の上に転がって、そして僕はDanaを組み敷くようにして、口づけた。
彼女は、いつもとちょっと違うことを自分から言い出したあとで、その反動からか、急に恥ずかしがりやになったりする。
そんなことはすでにお見通しなので、こういうときは、わざと激しく、僕の方から仕掛けていくというのがルールだ。
僕は、彼女の胸を揉みしだき、その手で腰を撫で下ろしていく。彼女は、僕の背中にまわした手を、腕から胸に滑らせた。
だけど僕たちは、もうこれ以上焦らしあうつもりはない。
僕たちは今日、長い時間をかけて熱い予感を重ね、こっそりキスを交わし、ないしょの言葉をささやき、もう十分にお互いを昂ぶらせてきた。
これ以上刺激されたら、メインイベントが楽しめなくなってしまいそうだし。
首から鎖骨にかけてキスを落としていくと、息を呑んで、彼女は言った。
「どうしたらいい？」
「手をついて後ろ向きになってほしいな。」
裏庭で、ということになると、それが一番なんじゃないかな。
彼女を後ろから抱くのは、僕の好きな形のひとつだということもあるけど。
Scullyは、僕の下から這い出して、言った通りの姿勢をとった。僕は、彼女のはいていたものを膝のあたりまで押し下げてから、Tシャツをまくり上げた。
自分でジッパーを下げ、中のものを取り出すと、もう一度彼女のほうに手を伸ばした。
やわらかな丸みを撫で下ろし、そっと太腿を押し開く。片方の手で、乳房をつかんで、指先を遊ばせた。
とうとう彼女が焦れたように振り向いて、僕を見た。瞳の奥に、ギラリとするような光が浮かんでいた。
「Mulder！お願い・・・」
もっと焦らすこともできたはずなのに、刈りたての芝生の匂いと、香り立つような彼女の匂いが混ざり合い、鼻孔をくすぐった。
その香しく抗いがたい刺激が、僕を駆り立てる。
そして僕は、うなるような声をあげて、彼女の中に押し入った。
彼女がうめき声を洩らし、僕は彼女の中で動き始めた。
片腕を彼女の腰に回して引き寄せ、もう片方の腕は地面に置いて、彼女に覆い被さっている自分の体を支える。
彼女は大きく腰を揺らしながら、息を切らして僕の名前をうわごとのように呼び続けた。
やがて、彼女の内側が痙攣して僕自身を熱く包み込む。それは身に馴れた感覚とはいえ、その瞬間、僕は彼女の体の奥で囚われたまま屈従したように、熱いものを迸らせた。
そして僕たちは、絡まり合って、芝生の上に身を投げ出した。
汗にまみれた素肌を、細かい芝が、ちくちくと突き刺す。
今、僕はMarylandの郊外ではなくて、ジャングルにいるんだ・・・
しばらくして、僕は身を起こして、自分の着ていたものを元に戻し、Scullyの服も整えてやった。
僕たちは、家に入り、おぼつかない足取りで階段をのぼり、着ていたものを脱ぐとベッドに倒れこんだ。
Scullyは、あっという間に寝入ってしまった。
僕はのんびりとした気分で、幸せを噛みしめる。
そして、Melissa Samanthaの将来に、思いを馳せた。
もしかしたら、女の子らしい女の子になるかもしれない。彼女が名前をもらった、ふたりの女性のように。かわいいだろうな。
バレエの発表会を見に行ってやったりするんだ。ちょうちょのバレッタを髪につけてやったら似合うだろう。クリスマス・イブには、夜更かしして、朝までいっしょにバービーのドリームハウスを作るのを手伝ってあげよう。
それとも。
もしかしたら、負けずぎらいのおてんば娘になるかもしれない。彼女の美しい母親が、子供の頃そうだったように。それもかわいいな。
彼女にも野球を教えてやろう。それから、フットボールの試合にも一緒に行ったりして。カエルの捕り方も教えてやったらよろこぶかな。
ただし、我が家では、古くさいと言われても、男女の区別はきちんとつけるのがルールだ。
それぞれの領域を侵してはならない。
そう。芝刈りだけは、あくまでも男の仕事ということにしておこう。
end