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DISCLAIMER: The characters and situations of the television program
"The X-Files"are the creations and property of Chris Carter, Fox Broadcasting,
and Ten-Thirteen Productions. No copyright infringement is intended.
TITLE
: Bubble Baths and Flashlights
作：Angela
Wardさん 訳：bagpiperさん
Scullyと僕は、手をつないで撮影所を後にした。
僕はほんの少し、びっくりした。Scullyが自分から手を絡めてきたからだ。
彼女が今まで消極的だったという意味ではない。その逆だ。彼女は、とても情熱的な女性だった。
ただ. . .
正直に言って、公の場所でベタベタしたりするのは、彼女のキャラクターじゃない。
彼女は、僕たちのプライベートは、あくまでもプライベートなものとして、外ではクールにふるまってきたから・・・
スタジオの方で、僕たちにもリムジンを用意してくれていた。
僕達はリムジンに乗り込んで、運転手には海沿いまで走ってもらうよう頼んだ。
僕は片方の腕でScullyの肩を抱き、もう片方の手を彼女の脚の上にすべらせた。
彼女は、片方の眉を上げて、あの‘こわい顔’をしてみせようとしたが、口元がゆったりとほころんで、誘うような笑顔になってしまった。
「それで君、僕の・・・懐中電灯とSkinnerのと・・比べてみたことある？」
彼女はクスクス笑いだし、僕を軽く叩くようなまねをした。
「ないわよ、Mulder。私が欲しいのは・・・あなたの懐中電灯だけだもの。見た目が立派だってだけじゃなくて・・・ほら、よく言うでしょう？」
「なにが？」
「大切なのは、フラッシュライトの大きさじゃなくて、どれくらい光るかってことよ。」
僕は思わず笑い出しながら、彼女を引き寄せると、顔を傾けてそっと口づけた。
「Mul--der」彼女は、運転手の方に目をやって、僕の口元でもごもご呟いた。
「大丈夫だよ、Scully」僕は言った。
「毎日セレブやスターを乗せて走ってる人なんだから。しがないF.B.I.捜査官のふたりなんて気にもとめないさ。」
それで僕達は、もう一度唇を合わせた。
僕の言葉に安心したのか、彼女は少し大胆になって、深く口づけ舌を絡めてきた。
そして今度は、僕の方から唇を離すことになってしまった。
Scullyは小さく喘いで、僕の唇に追いすがるように、抗議の声をあげた。
「ちょっと待って・・honey」僕は囁いた。
「つまり、ほら・・今ここで懐中電灯を光らせるわけにはいかないだろう？」
僕の腕の中で、身を添わせるように向きを変えると、彼女は僕に向かって微笑んだ。
「ところで私たち、どこへ行くの？」
「前に来たとき見かけたんだけど、海の見えるところにいい場所があるんだ。あの辺のベイエリアには、桟橋の上にちょっとしたお店がたくさん並んでてさ、突端にあるレストランやクラブは海に向かって張り出してるんだよ。あそこならちょっとぶらぶらして、食事もできるし、ダンスなんかもできるかもしれないな、と思ってたんだ。」
「それから？」彼女はそう言って、はにかんだように微笑んだ。
「それから？そうだな、Agent
Scully、その後は僕の・・・懐中電灯の・・・出番だ。どれくらい光るか見せてあげるよ。」
僕が言っていたその場所で降ろしてもらうと、リムジンの運転手には２時間くらいしたら迎えに来てもらうようにお願いした。
Scullyは、すぐに僕の手を引いて歩き出し、桟橋の端で立ち止まると、水平線まで広がる海を眺めて、佇んでいた。
海からの微風は、ひんやりとして冷たく、彼女はわずかに身震いした。
僕は彼女を引き寄せ、両腕の中に抱きしめて、肩の上に顎を預けながら耳元でささやいた。
まるで、１年ほど前に野球をして遊んだあの夜のように・・・
「愛してる。」僕は小さな声で言った。
「私も。愛してるわ、Mulder。」
彼女もそう答えてくれた。
そして振り向いて、僕の目を見つめながら言った。
「ねえ、今わたしが考えていたこと、わかる？」
「なんだい？」
「１年半前に、ほんとうに‘私達が’墓地でお互いの気持ちを打ち明けられていればよかったのに、って思うわ。そうしたら、独りで悩みながら寂しい夜を過ごすこともなかったんだもの。」
僕はゆっくりと息を吐き出してから、静かに首を振った。
「まだ‘その時’じゃなかったんだよ、Scully。僕たちは今でこそお互いを愛してるって言えるけど、１年半前・・・はっきり言って僕はもっと前から君のことを愛していたけどね・・・だけどあの頃、僕たちにはまだ余裕がなかったんだと思う。僕は僕で、Samanthaの身に何が起きたか、こだわって取り憑かれたままだったし、君もたぶん、Danielのこととか・・ちゃんと決着がついてなかったんじゃないかな。この２ヶ月でようやく・・・僕たちはふたりとも、過去と向き合って気持ちの整理ができたんだ。やっと相手のことだけを見つめて、そして本当の自分を見つけ出せたんだって、僕はそう思ってる。」
彼女は、僕を見上げて微笑んだ。
「きっとそうだったのね・・今の言葉・・・とっても嬉しいわ、Mulder。でもね、女は言葉のみにて生きるにあらず。なにか食べましょうよ。」
僕たちはレストランに入り、席についた。
ふたりとも、それほどお腹が空いていたわけではなかったので、僕たちはボトルワインとアペタイザーの盛り合わせを注文した。
そして僕達は、かわるがわるアペタイザーをつまんでは、お互いの口まで運び、食べさせあった。
だけどあと一回でも、Scullyが僕の指をなめていたら、僕はもうどうなっていたかわからない・・・
食事を終えると、僕たちはダンスフロアに出た。
バンドが奏でる古いバラードが、耳に優しく響き、遙かな郷愁を切なく誘う。
そして、甘いメロディと潮風の中で、かわいらしいドレスに身を包んだScullyを胸に抱いていると、１９３９年にさかのぼり、あの客船で彼女と出会ったときのことを思い出した。
Scullyは、僕達があの時あの場所に確かに存在したということを信じていないし、僕が夢でも見ていたのだとしか思っていないだろう。
もちろん僕は、そうじゃないってことを知っている・・・だけど、今それを彼女に言って議論をするつもりはない・・・だから僕は何も言わずに、黙って彼女を抱きしめた。
それから僕たちは、Skinnerに借りたクレジットカードで支払いをして−ウェイターにもチップをはずんで−レストランを後にした。
そして、桟橋の上に並んだお店をのぞきながら、のんびり歩いて行く。
あるお店で、Scullyが見つけて手にとったものは、バスケットで、その中にはボトルが２本とワイングラスがふたつ入っていた。
目を近づけてよく見ると、ワインのボトルと、もう１本はバブルバスの瓶だった。
Skinnerのカードでそれを買い、通りに出ると、僕たちのリムジンが迎えにきてくれていた。
***
ホテルの部屋に戻り、僕はScullyを腕の中に抱き上げた。
そしてベッドに運ぼうとすると、彼女は僕の唇に指をあてて首を振った。
「ベッドは、いや。」
「だめなの？」僕は思わずがっかりした声で聞き返してしまった。
彼女は、ふっと笑顔になった。
「やだ、そうじゃないわよ、Mulder。ベッドじゃなくてってことよ。ベッドは後でも・・・ね。だって、どうして私がバブルバスを買ったって思うの？」
「あ！」
そういうことか！
・・・即座に僕がそう答えると、彼女は目をぱちくりさせた。
Scullyと僕が、お互いの愛を確かめたのは、わずか１ヶ月ほど前のことなのだが、不幸なことに・・・またもやというべきか、僕は危うく死にかけ、それから２週間ばかりは、少しずつ体力が回復するのを待っていたのだった。だから、その間は、愛し合うといっても、かなり選択肢が限られていたわけだ（というのは、つまり・・・場所とかやり方に関しての話だが・・・）。
“得られる結果”に関して言えば、僕がずっと想像すらできなかったような世界だったし（僕達ふたりが達する最後の瞬間は、世界の全てがひっくり返るようなものだから）、ただ、その“準備段階”ともいうべき部分が、やはり単調にならざるを得なかったために、多少飽き足らなくなっていたことは確かだ。
きっとScullyは、ちょっと目先を変えて、わくわくするような時間を過ごそうって企んでるんじゃないかな？
「ワインクーラーに氷を入れて、冷たいワインを持って来てちょうだい。バスルームまでね。」
そう言いながら、僕の腕の中からゆっくりと滑り降りて体を離すと、バスルームの方に向かって、背中で僕を誘うようにモンローウォークで歩いていった。
「かしこまりました！」僕は彼女に向かって言った。
僕が戻ってくると、Scullyはふわふわの泡の中に隠れるように沈み込んでいた。
バスタブの縁に、ワインクーラーとグラスを置くと、Scullyと僕は合図を待っていたみたいに声を揃えて呟いた。
「素敵ね・・・」
「素敵だ・・・」
僕は笑いだし、そして彼女から目を離せずに、そのまましばらく立ちすくんでいた。
ようやく僕は言った。
「ちょっとタキシードを脱いでくるよ。僕も一緒に入っていいだろう？」
「行っちゃだめよ、Mulder！」
「じゃあ僕には、ただここに立って君を見てろっていうのかい？」僕は言った。
人間なんて勝手なものだ。
半年前だったら、バブルバスの中にいるScullyを見せて貰えるというだけでも・・・その光栄に浴するために利き腕を失ったって惜しくないと思ったはずだ。なのに、今の僕は、彼女が纏ったその泡の中に一緒に沈んでみたくて、今にも飛び込んでしまいそうだったのだ。
Scullyはしびれを切らしたようにしかめっ面をして、首を横に振った。
「おばかさんね、はやく一緒に入りましょうよ。私はただ、あっちに行ってタキシードを脱がなくてもいいでしょって言いたかったの。だってタキシードを着てるあなたったらセクシーなんだもの。脱ぐところも見ていたいわ。」
「う. . . ん、わかったよ」
僕はそう言って、まず靴と靴下を脱ぎ、それから上着とシャツを脱いだ。
Scullyは、僕がひとつひとつ取り去って床に落としていくたびに、ため息をついてはクスクス笑って、口笛を吹いてみせた。
彼女は、微酔い加減のようだし、しかもこんなことをしている自分はすごく馬鹿みたいに思えたけれど、こんなにも楽しそうに過ごしている彼女を目の前にしていては、馬鹿でもいい・・とてもやめる気になんてなれない。
嬉しそうにはしゃいでいるScullyを見るためなら、ホストクラブのダンサーの真似をして見せたってかまわない。
そして・・・僕が全部を脱いでしまうと、彼女はにっこりと微笑んで言った。
「素敵ねぇ、フラッシュライトが・・・Mulder。」
僕はその言葉を無視して、彼女に尋ねた。
「向かい合って座る？それともまたがって？」
「あなたはどうしたいの？」
「ちょっと前にいってくれるかい？」
Scullyが、泳ぎ出すように体を前に移動させると、彼女の体を被っていた泡が、ちぎれて揺れた。
彼女の背後に滑り込んでから、彼女をちょっと抱き上げて膝の上に座らせた。
むきだしのお尻が、柔らかく僕の大腿にはまりこんで、フラッシュライトが緊急事態を告げた。
僕は石けんを手にとって、彼女の腕や肩を洗ってやり、首に這わせた手のひらをそのまま滑らせて両胸をとらえ、その形をなぞった。
「ん・・！Mulder、私・・濡れてるんじゃない？」
「変なこと聞くんだな、お湯に浸かってるんだ、もちろん濡れてるさ。」
「そんなこと聞いてないわよ、G-Man！」
「ふーん、それじゃあ、一体どういうことなのかな・・・？」
僕たちは、ワインを飲みながらキスを交わし、ふたりしてお湯をかけ合って、しぶきをはねあげたりした。
二人ともすっかり童心に帰って、何もかも忘れ、このひとときを楽しんでいる。
今この瞬間が永遠に続けばいいと願う一方で、もうひとりの僕は、もっと先のメインイベントに進みたくて、痛いほどの欲望を抑えきれずにいた。
そのときScullyの手から石けんが滑り落ち、彼女はそれを拾おうとしてバスタブの縁から身をのりだし、四つん這いのような姿勢になった。
もうだめだ・・・！
僕は、彼女の後ろにひざまずき、両手を泡だらけの背中から腰にかけて滑らせた。
脚の間をさぐり、指先で確かめるようにまさぐると、彼女は大きくため息をついて、しっとりと甘い声をあげて応えた。
「このままで、大丈夫？Dana」掠れた声で、僕は訊いた。
今まではずっと、向かい合ってやるのが僕たちのスタイルで、こんなことは初めてだったから。
「いいわ・・・。ね、お願い・・Mulder・・・」
もぐり込むようにして彼女の中に押し入ると、お互いの喉から同時に、満ち足りたような呻き声が漏れた。
お湯の中では体も軽くなるから、腕で体重を支えなくてもいい。それで僕は、自由になった両腕をScullyの体に回した。
彼女の肩にそっと歯を立てながら、両の乳房を手のひらで包み込んで揉みしだくと、彼女は、僕を呑み込もうとするかのように腰を押しつけてきて前後に体を揺らした。
そして彼女が、わななきながら昇りつめたとき、水面には小さく津波が立ったように見えた・・・どこかの観測所ではその振動を感知したかもしれない・・・
僕は、彼女の熱に包まれたまま、さらに深いところを幾度も突き上げ、彼女の背中にくずおれるようにして果てた。温もりの中からゆるゆると自身を抜き去ると、そのまま彼女を腕の中に抱きとって、またさっきのようにバスタブの端にもたれて、彼女を包み込んでやった。
Scullyは、僕の腕の中でのけぞるようにして顔を傾げると、僕にキスをして、夢見るような笑顔を浮かべてゆっくりと目を閉じた。
ワインを飲んで愛し合う・・・僕はほとんど夢心地だった。
そして情事の後の心地よい疲労感が眠気を誘い、そのまま溺れ死んでしまいそうな気がした。
そうなる前に、ここから出た方がよさそうだ。
そういう死に方だって悪くないかも・・・なぜかそんな風に思ったが、それは僕たちが８０歳くらいになってからだって遅くはないだろう・・・
体を拭いて、ベッドにもぐり込むと、Scullyは僕の胸に頭をのせて、そのままあっという間に寝入ってしまった。
僕はぼんやりと、幸せを噛みしめていた。
そしていつしか、あの奇怪な映画のことを考えていた。
バカバカしい話だ・・・だけどあのおかしな奴が取材と称して僕たちに張りついていたとき、僕たちはキスすら交わしたことがなかったのに・・・なぜかあいつは、僕たちの間にあった何か・・・小さな火花のような気配に気がついたんだろう。
携帯電話が鳴って、ふいに現実に引き戻された。
「Mulder」電話を取りあげて言った。
「Mulder？私だが」Skinnerの声だ。
なんだかいつもと違う。その声には、なんとなく申し訳なさそうな響きが込められていた。
７年目にして初めてのことだ。常に謝罪の言葉を述べるのは僕の方で、Skinnerのそんな声は聞いたことがなかった。
「あぁ、Skin Manですか！」
Skinnerの大きなため息が受話器の向こうから聞こえたが、咎められずに済んだ。
「. . . あの映画の中の台詞は. . .
私もあんな場面があるとは知らなかったんだ。それだけは、ひとこと言っておきたかったんだが・・・。ところで、君たちは何をしてるのかね？」
「Scullyはもう休みました。僕は特になにも・・・」
そのとき丁度、Scullyが目を覚まして僕に声をかけた。
「誰としゃべってるの？」
「Skin Man」僕は言った。
「Agent Scullyは休んでいると言わなかったか？」
「はぁ. . . 今まで眠っていたんですが・・・」
Skinnerは何も言わなかった。
沈黙の時間が流れる。
これは非常にまずい状況なのではないだろうか。
Scullyと僕は、離ればなれにされてしまうかもしれない。
僕をMiamiあたりに送りとばして、ScullyをSeattleかどこか遠いところにやってしまうとか。
ところが、ようやく口を開いた彼は、こう言った。
「Agent Mulder、懐中電灯は、常に肌身離さず、しっかり身につけておくように。」
「僕の懐中電灯なら、充電もばっちりですから。Skin Man」
僕はそう答えると、電話を切った。
end
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