DISCLAIMER: The characters and situations of the television program 
"The X-Files"are the creations and property of Chris Carter, Fox Broadcasting,
and Ten-Thirteen Productions. No copyright infringement is intended.

TITLE : The Fox and The Kat

作：Angela Wardさん　　訳：bagpiperさん

「どこに行くの？」
Special Agent Dana Scullyは、彼女のアパートの駐車場を出てから、パートナーに向かってきいた。

「僕の部屋でいいかな。君にはゆっくり休んでもらって、僕がレポートを仕上げるから。それとも、ほかに行きたいところがある？」
Special Agent Fox Mulderが答えて言った。

「たとえば？Mulder」

「さあ・・・お母さんの家か。それとも教会とか。」

「教会？」Scullyが聞き返した。

「今回の事件のいきさつを考えたら、もしかしたら・・・きっと神父様と話がしたいんじゃないかと思ったんだ。こういうことは、僕にはよくわからないけど、Scully」

「たぶん、いつかはMcKay神父様にお話する日がくると思うわ、Mulder。でも、今は疲れてるし。あなたの部屋に行くわ。」

Mulderはゆっくりとうなずいた。

「Scully、」静かな声で彼女の名を呼ぶ。
「もし・・・僕が君の信仰を軽んじていると思ってるんだとしたら・・・すまない、もう二度とあんなことは言わないよ。」

「いいのよ、Mulder。」Scullyはそう言うと、手を伸ばして、彼の手に重ねて包み込んだ。

* * * * * * *

数時間後。
Mulderはカウチから起きあがって、ベッドルームの入り口まで行った。
Scullyは、カバーの下で体を丸めるようにして寝ている。
じっと見ていると、彼女は、彼がいることに気がついたらしく、身じろぎして目を開けた。

「どうかしたの？Mulder」

「様子を見てただけだよ。」

「私なら大丈夫よ、Mulder」

「大丈夫じゃないのは、僕の方だ、Scully」

「え？」

「僕は・・・僕が、君の言ったことにもっと耳を傾けていれば・・・Pfasterが君の部屋にまで押し入るようなことにはならなかったはずだ。今夜のことは、全部僕の責任だよ。」

Scullyはしばらく口を開かなかった。そして、カバーをめくると言った。

「こっちに来て、Mulder」

「え？」

「ベッドに来てって言ったの。あなたに見られてたんじゃ私は眠れないし、あなただって、私のことが気になって眠れないんでしょう？もう私たちふたりとも、くたくただわ。だから、こっちで寝て。」

Mulderはうなずいてから、長い脚で数歩の距離を歩いていった。
彼は、紳士的にふるまうべく、カバーの上に身を横たえたが、彼女はブランケットを引き寄せて、彼女の横のシーツをポンと軽くたたいた。
それで、彼はその下に潜り込んで、彼女から体を離したところに横になった。

しばらくたった頃。
仰向けに寝ていたMulderが、体を横向きにして、その腕をためらいがちに、彼のパートナーの体にまわした。
彼女が何か言ったら、すぐに手を離すつもりだったが、彼女はもう眠っているはずだから、気がつかないだろう・・・

Scullyはまだ起きていた。だけど何も言わなかった。
それどころか、安心しきったようにため息をついて、丸めた背中を彼の胸に重ねるように、体をずらした。
彼は、彼女をぎゅっと抱きしめると、彼女の髪に向かって、そっと微笑んだ。

「ねむれないなら、ベッドタイムストーリーをきかせてあげるよ、Scully」

「'あなたのじゃない'ビデオのお話はやめてよ。」

「ちがうよ、ふつうのお話だよ。おとぎ話とかイソップ物語みたいな。しゃべれる動物が出てくるんだ。」

「あなたって変なひと、Mulder」

「それをいうならSpookyだろ、Scully。さあ、お話をききたいかい？」

「ききたいわ、話して。」

「むかしむかしあるところに、Foxが一匹、森の中で、おとうさんとおかあさんと妹と一緒にすんでいました。」
Mulderが、話し始めた

「その森って、もしかして、New Englandあたりにあるんじゃないの？」

「そうだよ、Scully。しずかにきいてて。しー。」

「さて、Foxと妹は、いつも楽しく遊んでいました。ところが、ある晩、悪魔の遣いのドラゴンがやって来て、Foxの妹をさらって行ってしまいました。Foxは悲しくてたまりませんでした。」

「わかるわ。」Scullyが小さく呟いた。

「そこで、Foxは、人生のすべてを賭けて、妹を探すことを誓いました。彼は、えーと、ドラゴン退治学校に行き、とても優秀な成績で卒業しました。そして、彼の冒険の旅が始まりました。妹を探しながら、モンスターを捕まえたり、ドラゴンをやっつけたりしました。Foxは気高くて、勇敢で、理想に燃えていましたが、彼はとても孤独でした。彼は、誰かほかの動物がやって来て、いっしょに冒険の旅を続けてくれないかなあ、と思っていました。すると、ある日、ふわふわの赤い毛をした美しいKatが、Foxの隠れ家に入ってきました。」

「Catですって？」

「KではじまるKatさ、Scully」

「あら、Dana Katherineみたいね？」

「ああ。話を続けていいかい？」

「いいわ。」

「ところが、はじめは・・・ほんとにはじめのうちだけなのですが、FoxはKatのことを信用できないな、と思っていました。もちろん、彼女はきれいで、勇敢で、頭がよくて、知りたがりだということは分かっていましたが、ドラゴン達の仲間なのではないかと疑っていたのです。でもすぐに、彼女がとても誠実で、信頼できるということに気がつきました。そのことに気がついてからは、Foxはうれしくてうれしくて、毎日が楽しくてしかたありませんでした。ずっと長い間ひとりぼっちだったのに、親友ができたからです。」

「FoxとKatのほかに動物は出てこないの？」

「うーん、そうだなあ。ふたりは・・・あ・・・Bulldogのところで働いていました。」

Mulderが言うと、Scullyがくすくす笑った。

「それから、ふたりには３匹のMonkeyの友達もいます。でも、Monkey達は、ドラゴン退治学校に行かなかったので、FoxとKatの冒険にはついてこられません。でもたまに智慧を貸してくれるいい友達です。」

Scullyがまた、笑い出した。

「さて、KatとFoxは、モンスターやドラゴンと戦いながら旅を続けます。ところが、ある日、恐ろしいことが起こりました。痩せてるくせに煙をもくもく吐き出すドラゴンに、Katが捕まってしまったのです。」

「『そしてFoxはとても心配しました。』ってわけね。」

「心配なんて言葉じゃ全然足りないよ、Scully。Foxは、逆上して半狂乱になりました。どうしてかというと、Katがドラゴンたちに捕らえられたとき、彼はあることに気づいたからです。」

「あること？」

「FoxはKatを愛していたのでした。それはそれは愛していました。心の底から。」

「まあ。」

「そして、FoxはKatを取りもどすことができました。それからふたりは、またドラゴンと戦い、ネズミと戦い、海獣と戦い、蛾男と戦い、おそろしい蜂と戦い・・・あらゆる悪者と戦いました。」

Mulderは、話すのをやめた。
少しして、しびれを切らしたようにScullyが言った。

「もっときかせて。このお話、気に入ったわ。」

「これで、お話は終わりなんだよ、Scully。というより、どうやってこの話が終わるのか分からないんだ。FoxとKatは、彼の妹を見つけられるんだろうか？二人は、ドラゴンを全部退治することができるんだろうか？それとも、全部倒したと思っても、別のヤツがどこかに潜んでいるんだろうか？FoxとKatには、いつか幸せに暮らせる日がくるんだろうか？」

Scullyが静かな声で答えた。
「私にも、わからない。Foxの妹を見つけられるのか。・・・それに、いつまでも悪者はいるんじゃないかしら。FoxとKatが、BulldogやMonkey達と力を合わせたとしても、この広い世界からすべての悪魔を退治することなんてできないわ。でもね、ふたりにはいつか、幸せに暮らせる日がくるって思うの。だって、あなたは、このお話の一番いいところを抜かしちゃってるわよ。」

「何だよ、それ。」

「いい？FoxはKatを愛してたって言ったでしょう？でもね、そのときKatもFoxを愛していたんですって。知らなかったの？」

「おい。」

「さ、寝ましょ。おやすみなさい、Mulder」

「おやすみ、Scully」

end