DISCLAIMER: The characters and situations of the television program 
"The X-Files"are the creations and property of Chris Carter, Fox Broadcasting,
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TITLE : Ice Cream Dreams

作：Angela Wardさん　　訳：bagpiperさん

たのしいわ。ボールを打つのってこんなに楽しいものだったのね。バットがボールに当たるたびに、すごい達成感が生まれるの。
えーと、もちろんそれだけじゃないわね・・・私をつつんでいるMulderの腕、耳元をくすぐる彼の唇、彼のおしゃべりとアドバイスの方が、楽しいくらいだって言えるかも。

この週末、彼はいつもと違うような気がしていた。朝から私のアイスクリームを獲ったりして。
でも今は、なんだかこの人楽しそう！
一緒に遊ぼうって、彼が言うなんてね。悩みもなし、陰謀もなし、ただ遊ぼうって。
断れるわけないじゃないの。

しばらくして、ボール拾いの少年が、もう家に帰る時間だと言った。
それで、私たちもゲームオーバーってことにした。

「さて。Scully 、僕たち野球をして遊んだってわけだ。外で。春のうららかな風を感じて。君が言ったあの言葉だけど、僕が人生を楽しんでいないような言い方だった。取り消してくれるんだろうね。」

グラウンドを歩きながら、彼が言った。
彼の手は、なぜか、私の肩に回されたまま、置き去りにされていた。
まあ、別に、”バッティングコーチは、もういらないんですけど”なんて、わざわざ言う必要もないことよね。

「え？Mulder。まだ、アイスクリームの件が残ってるわ。」

「おっと、そうきたか。」

アイスクリームスタンドの前につくと、彼が宣言した。
「僕が買うアイスクリームっていうのは、本物のアイスクリームだけだからな。君が今朝食べていたノンファットのトーフでできたものなんか、アイスクリームじゃない。」

「あなたも食べたじゃない。」

彼は、私の言葉を無視して、スタンドのバイトの子に話しかけた。
「チョコレートとバニラのミックス。キングサイズで。君は何にする？Scully 」

「いいの。あなたのを頂くわ。」

「どうして？アイスぐらい買ってやるのに。」

「わかってるわ。」

彼は、店員にお金を払うと、アイスコーンを受けとって、まず、ひとくち口の中に入れた。
その後、私に手渡してくれたので、私も同じようにしてひとくち、舌ですくいとった。

「なんで、自分のはいらないなんて言ったんだ？」と彼がきいてきた。

彼の腕が私に回されたままだと、アイスクリームは食べにくい。・・・だから、私たちは、かわりに手をつないだ。
彼と手をつなぐのは、好き。彼の手が、好きなの。腕も、かしら。だから、思わず手を伸ばして彼に触れてしまうことがあるんでしょうね。
ともかく、私たちの間の手は、ふさがっていたから、反対側の手でアイスをやりとりした。

「女の子の話よ、Mulder。あなたは知らないと思うけど。」

「女の子？」面白がるような声で、彼が言った。
「君が、自分のことを女の子って言うなんて、初めてじゃないか、Scully 。君をして、自分のアイスではなく僕のアイスを食べさせるに至った、その『女の子の話』っていうのを、お聞かせねがえるかな？」

「そうすれば、カロリーを摂らないことになるから。」

「なに？」

「女の子って、実はみんな秘かに信じてるのよ。自分の食事からしか、カロリーは摂ってないって。つまり、男の子が食べているものを、仮に半分食べたとしても、そのカロリー分は計算にいれなくていいの。ね？だから、私がこのアイスクリームを半分頂いたとしても、そのカロリーは全部あなたが摂取したことになるのよ。」

「ああ、それで君、よく僕のフライドポテトやなんかをつまむんだな。もしかして、僕の注文したビールを半分飲むくせに、おごられるのはいやっていうあれも、同じ理由？」

「その通り。あれは、アルコール除外法っていうの。」

「驚いたな、Scully 。一応それも教えといてくれるかい？」

「いいけど。アルコール除外法は、カロリー削減理論とほとんど同じことよ。自分の食事以外から脂肪分を摂らないのと同じように、男の子が飲んでいるものを飲んでも、飲んだことにならない。」

「まさか、君のお母さんまでそんなことを信じてるとか？」

「これは、母から教わったことなのよ、Mulder。母は、時々ワインを飲むくらいで、お酒は飲まない人でしょう。でも、父がお酒を飲んでると、母も横から口をつけるわけ。それで、私、どうしてなのって聞いたんだけど。母いわく、ワイン以外のアルコールを注文したり、お願いしたりするのは、女性としてのたしなみに欠けるって言うの。だけど、自分の夫が注文したビールだとかマティーニだとかを飲ませてもらうのは、いいんですって。」

ここまでしゃべって、私は固まってしまった。
・・・私ったら、Mulderと私の間のことを、両親 - ３５歳で４人の子持ちだった夫婦 - の間のことと、重ね合わせてしゃべっちゃったみたい。
言われなくてもわかってるわ。Mulderと私は親しいけど、そういう意味で親しいわけじゃないってことくらい。
だけど。どうやら彼は、私のミスに気づいていないらしい。もしかしたら、気がついてて知らん顔してくれてるのかも・・・ありがたいことに。

「てことは、君が僕のベーコンチーズバーガーをかじっても、僕のコレステロール値は上がるけど、君のは上がらない、と。こういうわけ？」

「そういうこと、Mulder。さすが、飲み込みが早いわね。」

「じゃあ、今朝みたいに、僕が君のトーフもどきを一口食べたら、どうなるんだろう？」

「んー、そうね、健康になるのはわたしだけ。」

「僕が健康食品を食べてたら、どうする？」

「さあね、そんなことってあるの？Mulder」

他愛もないおしゃべりをしながら、私たちの間に、何度もアイスコーンが行き来した。
私は、上の方をゆっくり味わってなめる。彼は、クリームに舌を差し入れるみたいにして、アイスの固まりを口の中に運ぶ。
そうやって、コーンだけが残った。私は、外側をちょっとだけかじり、彼は、がぶっと大きく噛みついた。
もうすぐMulderのアパートだ。あとほんの少しで。

建物の外に着く頃には、アイスクリームも食べ終わってしまった。
階段の１段目に立つと、彼とちょうど同じ目線になるのね。
私は、彼の手を離すと、両手を彼の肩の上にのせてみた。
通りの角にある街灯の光が、ぼんやり彼の顔を照らしている。私は、彼を見つめたまま言った。
「口についてるわよ。」
彼の魅惑的な下唇に、アイスクリームが残っている。

「とってくれればいいじゃないか。君が、顔じゅうバーベキューソースだらけにしたとき、拭いてやっただろう？」彼が言った。

・・・あれは、あごに、ほんの少しついてただけだわ。
でも、そんなこと今はどうでもいい。抗議するかわりに、私は呟いた。

「あ、いいこと考えたわ。」

それから私は、決心がにぶる前に、彼につかまったまま、顔を近づけて、アイスクリームをなめた。
それで・・・何ていうか・・・私は、自分の唇を押しあてた。だって、ちょうどそこにあったんだもの、唇が。

Mulderは、反応もしなかった。
きっと驚いたんだわ。私も、自分で驚いてるんだもの。
しばらくして、私は急に恥ずかしくなって、身を引こうとした。
そのとき、Mulderが私の体を引き寄せた。片手をうなじにすべらせて、もう片方の手で腰の下をしっかり支えてる。
そして、喉の奥を鳴らして、私の唇をとらえると、キスを返してきた。
頭が混乱して、この状況を理解できないまま、口の中に彼の舌が差し入れられるのを感じた。
私も舌をのばして、彼の口の中で、アイスクリームとひまわりの種が混じりあう味を知った。
普通ならおすすめできない組み合わせだとは思うけれど、彼と一緒に味わうと、格別においしかった。

長い間キスを交わして - どうして６年間も待ってたのかしら、善は急げっていうのに - だけど、最後には息が苦しくなって、唇を離した。
キスをしているときから、私は目を閉じていた。なんだかこわくて目が開けられない。
目をつぶったままでいると、彼は、また唇を近づけてきた。
唇じゃなくて。首に。どうして？どうして、私は首が弱いところだってこと、彼が知っているの？
首筋に、彼の唇を感じて・・・え？・・・舌も。
自分でも気づかないうちに、私の口から甘えたような声が洩れた。

Mulderは、唇を離して、後ろに下がった。
ああ、目を開けるのがいやだわ。
どっちが最悪かしら。去年の夏、キスしそうになったとき、彼が見せたすまなそうな表情？それとも、からかって喜んでるような顔？
大丈夫。私は、いつだって恐怖と戦ってきたんだから！私は、そっと目を開けた。

Mulderは、後悔したような顔でもなければ、面白がってもいなかった。
彼は笑っていた。
彼の瞳には、優しさと欲望が入り交じった表情が浮かび、ヘイゼルの深いところで、誘うような色が見える。

きっと彼も、私の顔に映った表情を見て安心したのだと思う、すぐにまた、さっきより強く抱き寄せて、首筋に唇をつけた。
私は、彼の頭に手をやって、反抗した。

「ちょっと待って、Mulder。今度は、わたしの番だわ。私たち、対等なパートナーでしょう？」

私は、彼の首と肩のあいだに、唇で触れた。そして、吸いつくようにキスをする。
彼を味わいながらも、頭のどこかで、月曜にSkinner に会ったとき、お互いの首に残ったお揃いのキスマークをどう説明したらいいのだろう、とまじめに考え始めていた。
「異星人らしき吸血鬼にアブダクトされたんです。」っていうのはどうかしら。
それでいいわ。私たちなら、それで通用しそう。

少しして、私は、彼の首から離れた。
飽きたからじゃなくて、また、キスしたかったから。

「Mulder、」小さな声で名前を呼んだ。

「Dana 、君さえよかったら・・・」
彼が最後まで言い終えないうちに、急ブレーキの音と、私たちの名前を呼ぶ声が聞こえた。
The Lone Gunmen。
いっつもこれ！３人組の登場よ。
もう。私たち、手が放せないんですけど！

「ちょっと、おふたりさん。」
車のドアが開くのが聞こえて、Langley が飛び出してきた。
この状況で、唯一の救いかも知れないわ。神様ありがとうございます。
Langley は、多分３人の中で一番、頭も切れるし、疑り深いとも思うけれど、こと他人の間の微妙な関係については、一番鈍いと思うもの。
もし、これがByers なら、Mulderの手が私の腰にあるのを見ただけで、事情を察して、いたたまれずに帰っちゃうかもしれないし、Frohike だったら、もしかしたら泣いちゃうかも。
Langley でよかったわ。

「おい、Mulder、Scully 、車に乗って、一緒に来てくれ。」彼は言った。
「何かでかいものが、落下してきたらしいんだ、絶対、君らも現場に行きたいよな。」

Mulderは、あきらめ顔で笑いながら、私を見た。
その'何か'が、ここに落ちてくるとかしないかぎり、車に乗るしかないのよね。
それに私には、Mulderが二つの気持ちの間で揺れているのがわかっていたから。
一方で、みんなには帰ってもらって、さっきの続きに戻りたいと思っている彼がいることもわかるし、だけど、もうひとりの彼は、事件といわれれば、駆けつけないと気が済まないいつもの彼だった。

「君たち、どこにいたんだ？」

私たちが車に乗り込むと、Frohike がきいてきた。
Byers が運転席で、Langley は助手席に乗っている。私は、後ろのシートで、MulderとFrohike の間に座った。

「君らのオフィスにもかけたし、携帯にもかけたんだ。家にもね。無駄だと思ったけど、メールも送ったのに。」

「なあ、これより悪いことって思いつくか？」Mulderが、私の耳元でつぶやいた。
「あの蜂、だよな。」

そして、みんなに向かって、大声でこう言った。
「野球場に行ってた。」

「蜂やthe gunmenより悪いものは、」私もささやき声で、言い返した。
「Skinner 。」

「野球場？」Byers が、困惑してMulderにきいている。まるで、私たちが月に行ってたって、Mulderが言ったみたいに驚いてるのはなぜ？

「The gunmenと蜂と、Skinner を超える悪いもの」
Mulderは、まだ、「これが一番」ゲームを続けていて、呟いた。
「Bill Jr. だ！」

それを聞いたとたん、私は、負けを認めた。
そして、なんだか急におかしくなって、笑いが止まらなくなった。

３人組がびっくりして、みんなで私を見つめてる。

「Scully、それ、笑ってるのかい？」Byers がきいてきた。

「最近、よくこうなるんだよ。」Mulderがかわりに答えた。
「今度、X-Files として、くわしく調査することにしてあるから。」

End