TITLE : Two Couples
作：Angela Wardさん 訳：bagpiperさん
ショーン・ペンドレル特別捜査官は、別荘にたどり着き、すっかり暗くなったベッドルームに、運んできた荷物をドサッと置いた。彼の横に立っていた赤い髪をした彼女は、腕を彼の体に回しながら首に顔をすり寄せてきた。
「こんなこと、ほんとにいいのかな、スカリー。」と彼が聞いた。
「その呼び方はやめて。」と彼女が異議を唱えた。
「モルダーみたいよ。」
「あ、そうだね、わかったよ。」と彼が答えた。
「モルダーといえば、彼らは何時頃こっちに着くんだろう？」
「さあ。」と彼女が言った。
「彼、結婚してからだって、金曜も夜遅くまで仕事でしょ。ちょうど今ごろ荷造りしてるくらいじゃないの。」
「だけど君、あの、ほんとに、その、いいの？だって、僕たちはまだ結婚もしてないし・・・」
彼女は笑いながら言った。
「ちょっと、ショーン。私たち、ビル兄さんに呼ばれてきたわけじゃないのよ。ここはモルダーの叔父さんの別荘だわ。モルダーだって別荘にベッドルームがふたつしかないことくらい知ってるわよ。彼女のほうだって、『先に行っててね』って鍵の隠し場所を教えてくれたし、それに自分たちを待ってないで先に休んでてくれた方がいいって言ってたわ。明日から日曜までずっと、４人で過ごせるんだから。」
まさかとは思うけど、ペンドレルって、モルダーのことをまだ気にしてるんじゃないでしょうね。
つきあい始めた頃に、一度くらいはモルダーに惹かれたことがあったのか、彼に訊かれたことがある。もちろん彼女は断固否定した。正確に真実だけを言うならば、モルダーに出会った頃、彼にまったく魅力を感じなかったわけではないのだが、そういう感情はあっという間になくなった。フォックス・モルダー特別捜査官の気持ちが、別の人に向けられていることは明らかなことだったからだ。今では、彼に対してはただの友情しか感じないと、はっきり言い切ることができる。
「じゃあ、あの・・・もう寝ようか。」ペンドレルは彼女を引き寄せながら言った。
「んー、そうね・・・」彼のフィアンセは曖昧に答えた。
ペンドレルが自分を大切に思ってくれているのはわかるんだけど、この週末を一緒に過ごす間は、もうちょっと強気になってくれてもいいと思うし、それに『寝る』って言っても、文字通り、ただ寝るだけにしようなんて言うのもやめてほしい。
彼はベッドで「よかった」。本当に驚くほど「良かった」。まったく「良いひと」だった！
彼らが初めて本物の「デート」というものをしたとき、その晩の彼は、あがりまくって落ち着かず、舌がもつれて口ごもってばかりいた。ところが、彼女にお休みなさいのキスをしようとした瞬間・・・その時になって彼は突然、舌は喋るためだけにあるのではないということに気づき、別の使い方を試してみたのだが、その直後、彼女は、もう彼の会話の能力なんてどうでもいい、と思えてしまった。
実際には、初日のぎこちなさを克服した本当の彼は、会話の相手としても楽しませてくれる男性だった。知的で、ひとの話をよく聞いてくれて、その上さりげないユーモアまで持っていた。
だけど、今夜はD.C.から４時間も車を走らせて、おしゃべりだったらその間にたっぷり楽しんだ。
おしゃべりもいいけど、他にももっとやることがあるはずよ！
彼は、急いで自分の洋服を脱ぐと、手をかける間も惜しむように彼女の着ているものまで取り去った。
夜の空気は冷たくて、彼らはダブルベッドのシーツの下に、ふたりして滑り込んだ。彼は彼女の方に顔を傾けて、お得意の、心まで溶かすようなキスを仕掛けながら、彼女の足の間に指を潜ませた。指先が彼女の湿った部分に触れると、ペンドレルは男としての自信がみなぎるのを感じ、期待に胸が高鳴った。そして、思わずにっこりしながら彼女がすでに充分潤っていることを確かめた。
実は、さっきまでの車の中で、ふたりはずっと種火をかき立てていたようなもので、はっきり言って、いちゃついていた。ここに到着する直前まで２時間くらいは、お互いの腕に手を伸ばしたり、腿に手のひらを沿わせたりして、ふざけあったり、運転に支障のないときには、素早くキスをかわしてみたりもした。
彼女は生まれつきの赤毛で、彼も同じ赤い髪をしていたから、ふたりで一緒に出かけたときなど、兄妹か姉弟に間違えられたことが何度もあった。もちろん、いま愛を交わしている最中の彼らには、そんな雰囲気など微塵もなかったが。
彼は、彼女の磁器のような肌をいとおしみ、彼女の中へ慎重に彼自身を進めて、その暖かさの内側に身を沈めた。
彼らの間に渦巻く赤い巻き毛は、ふたりの境界がなくなると小鳥の巣のようにも見えた。
今週は、ずっと仕事が忙しくて、ふたりで楽しむ時間はお預けになっていたので、今、このひとときを得て、彼らは瞬く間に、お互いを高みに押し上げ絶頂まで達した。
そして、その頂きから滑り落ちるように、眠りへと落ちていった。
~xx~xx~xx~
フォックス・モルダー特別捜査官とその妻が薄暗い別荘に足を踏み入れたとき、物音が聞こえた。押し殺したような声だが、ふたりが愛し合う声であることは明白だ。
モルダーは目をきらりとさせて、つぶやいた。
「サイエンス族の交尾だぜ。実は前から興味があって、一度は聴いてみたいと・・・」
「ちょっと！」と隣にいた女性がさえぎった。
「悪趣味だわ。」
「なあ、もう一度、説明してもらいたいんだが、なんで僕たちはこの週末、ここに彼らを招んで一緒に過ごす羽目になったのかな？」モルダーが訊ねた。
「だって、僕の仕事の時間が多すぎる、ふたりっきりで過ごす時間が足りない、っていつも文句を言ってるのは君のほうじゃないか。それなのに、僕が週末旅行にでも行こうと思ってようやく予定をあけたら、今度は君の方が、彼女とペンドレルまで一緒に誘っちゃったっていうのはどういうことなんだ？」
「フォックス、わたしはとにかく一度こうした方がいいって思っただけなのよ。だって、こんな状況になっちゃって、やりにくいって思わない？仕事とプライベートは切り離せないし、なにもかも複雑すぎるわよ。」
彼はにやっと笑った。彼は別に本気で妻と議論しようと思っていたわけではない。
今夜はもっといいことをしなくちゃ。
「わかったよ、子猫ちゃん。その通りだ。」
彼女は、目をむいた。
「なんでそんなばかげた名前で呼ぶのよ。」
「君が僕のことを『フォックス』なんて名前で呼ぶ以上、僕も君のことを好きな動物の名前で呼ばせてもらうよ。」
「意味が違うじゃないの。『フォックス』はあなたの名前だわ。」
「『モルダー』と呼んでくれればいいじゃないか。僕も君の旧姓で呼んでやるから。」
彼女は首を横に振った。
「今は、お仕事の時間じゃないのよ、フォックス、プライベートよ。名字じゃなくてファーストネームで呼び合うのが普通じゃない。どうしてもって言うなら、あだ名でもいいくらいよ。」
彼らは喋りながら、別荘の反対側の端にあるベッドルームに向かい、いつの間にか、その部屋のキングサイズのベッドの前に立っていた。
「何して遊ぼうか？」彼がにやにやしながら聞いた。
「あちらのお二人は、『プロファイラーの求愛シーン』なんかに興味はないはずよ。」彼女がほのめかした。
「それじゃ静かにしなくちゃな。」
彼が口を閉じていられない方に賭けてもいいわ。
自分自身も、夫の手にかかると、いつも、信じられないような声をあげてしまう。
過去につきあった相手との間では、たいてい彼女の方が醒めていて余裕があったのに、モルダーには、奥底にひそんでいた野性の部分まで引きずり出されていた。
彼女は、彼のシャツのボタンをはずし始め、彼女の前に少しずつ晒される肌を、丁寧にすみずみまで味わい、甘えるように手を這わせた。最後のボタンをはずすと、彼女は膝をついて、ジッパーを下ろし、中のものを取り出して口に含んだ。
彼はうめき声をあげた。
「なあに？モルダー捜査官！静かにするんじゃなかったの？」
モルダーは笑いながら、彼女の足をつかんで抱き上げると、ベッドに放り出した。彼は、自分で残りを全部脱ぎ捨てると、彼女の着ているものも、ひとつひとつ、焦らすようにはぎ取っていった。彼女が身にまとっていたものを取り払ってから、彼は自ら暴いた素肌の上に、唇を這わせ、指を滑らせながら、時間をかけていつくしんだ。彼女がその裸身を全て露わにするころには、彼自身も硬く逞しさを蓄えていて、彼女は身を捩るようにして彼を求めた。
「上がいい？」彼が囁いた。
彼は、自分も限界にきて切羽詰まっているようなときですら、彼女の意志を優先させ、彼女の望むやり方で彼女を愛する優しさを忘れたことはなかった。
「ううん、あなたが上に・・・」妻が答えた。
彼は、たったひと突きで彼女を貫いたあと、一定のリズムを保ってゆっくり動き始めた。
彼女は昇りつめながら、彼の肩に爪を立てた。最後の波が彼女を襲ったとき、彼女は彼の血がにじむほど爪を食い込ませて、叫びだしそうになるのをかろうじて耐えた。わずかに残った理性が、目と鼻の先のベッドルームに、ふたりがいることを覚えていた。
モルダーも努力はしたが、最後に押さえきれず、のどの奥の方で低くうなるように彼女の名前を呼びながら、果てた。
「ダナ・・・。」
~xx~xx~xx~
翌朝、窓から朝日が差しこむ頃、ふたりのＦＢＩ男性捜査官達は、ほぼ同時刻に目覚めた。どちらも、傍らで眠る女性の方に向きを変え、満足げに微笑んだ。
ショーン・ペンドレルのベッドで眠っていた赤い髪の女性が、目を開いた。
「おはよう。」
「おはよう、メリッサ。君の妹さんのダナと義弟のモルダーは、もう起きてるのかな？」
おわり
この作品はあくまでも作者の個人的な楽しみに基づくものであり
この作品の登場人物、設定などの著作権はすべて、クリス・カーター、
1013、20世紀フォックス社に帰属します。
今回はあえてコラは最後に持ってきました♪やっぱり最後までハラハラ・ドキドキは引っ張るべき？なんて思いまして(^^) 私も最初読ませて頂いたときは、これって・・・とShipper魂をかき乱されました（笑）でも最後はそーだったのねー！と大喜び♪みなさまはどの辺でお気づきになりましたか？ By HISAYO