☆ 内容を簡単にご紹介 ☆
今回はちょっとダークで、涙を誘うモルスカメルヘンストーリーをご紹介します。
もうね〜、最初読んだときは「もしやCharacter Death!?」と思い切り疑った私ですが、最後はハッピーエンドでほっといたしました＾＾；
冒頭シーンは徹底的に先行きの不安を煽る、くら〜くおも〜い雰囲気で。
死の匂いさえ漂ってくるような文章なんですよー（TT）
どうもモルは過去に何度も目にした光景＝病院のベッドで横たわるスカちゃんを前に、絶望的な悲しみに沈んでいる様子です。
スカちゃんの美しい首筋を台無しにしているチューブ＝呼吸装置と日に2度のアルブテロール・・・ということは自発呼吸できていないってことですかーーーT0T
もう何があったの？ねえ、何があったのーーー！！！？？？
・・・と、人を不安のどん底に突き落としておいて、ここで幸せな回想シーンが入ります。
このお話は、このように悲しい病室シーン（現在）と、ふたりでどこぞにバケーションに出掛けた折のラブラブなひとときが交互に語られるわけなんですね。
この回想シーンっていうのが、モルがスカちゃんに物語を聞かせてあげるっていうシチュエーションなんですけど、台詞オンリーでとっても素敵なんです〜♪（甘い雰囲気だけ味わいたい方は、現在の病院シーンはすべてすっとばして読むことをお勧めします＾＾）
＊＊＊
「ねえ、いい加減荷造りしないと、モルダー。」
「なんで？スーツケースに服を詰め込むだけだろ？」
「汚れたものと未使用と分別して、明日帰るときに着る服も出しておかなくちゃ。それに、朝使うトイレタリーも――」
「トイレタリー？スカリー・・・いまどき誰がトイレタリーなんて言葉使うんだ？」
「私は使うの。」
「はいはい。整理整頓の鬼だな。いいから、ここにいろよ。そんなもの朝で間に合う。」
「モルダー」
「いいからいろって。そうすればお話をきかせてあげるよ、お嬢ちゃん。」
「"ブラック・ラグーンの怪物"なんてお話じゃないでしょうね？」
「違うよ。アフリカに伝わる民話でね。 昨日街に出るとき送ってくれたハブリスから聞いたんだ。」
「ハブリス？」
「クリオ・ハブリス・ジョンソン。この辺じゃハブリスで通ってる。彼が言うには、クリオって名は、ストリートでケンカしてた頃の名前らしい。」
「それで、ハブリスは人を殴らないと・・・？」
「おもしろいだろ。 ハブリスという名前は母親が付けた名前で、9人の美女が表紙を飾る本から取ったそうだ。」
「そして彼は叙事詩の女神の真似事をしたってわけね？ ねえ、ここ狭いのよね。楽な姿勢にさせて。」
「肘！」
「モルダー、ちょっとだけ体をずらして・・・いいわ。準備ＯＫ、お話を聞かせて？」
「肋骨に肘がくい込んでる。」
「こんな長椅子にふたりでいたいとおっしゃったのはどなた？話さないなら、中に入っちゃうわよ。」
「僕をいじめて楽しいんだろ？」
「それが生きがいだもの。」
＊＊＊
ここでまた現在に戻って、少しづつこんな事態に至った経緯が明らかになっていきます。
モルはスカちゃんの側を片時も離れようとせず、丸一日以上寝ていないそうです。
病院にはスカママもきていて、モルを責めまいとじっと耐えている感じ。モルはそれをみて、さらにいたたまれない気持ちになるわけですね（TT）
＊＊＊
「"昔、あるところに一人の娘が・・・」
「あ、わかった―――"エラト"って名前でしょ？ハブリスがずっと昔に失くした恋の相手。」
「いや、名前はないんだ。 だから、"娘・・・」
「でも昔の恋の思い出っていうのは、合っているでしょ？」
「黙って聞けよ、スカリー。」
「ごめんなさい。どこまでだった？」
「"娘は美しく、父親は国を治める王で−」
「ミダス王？」
「・・・スカリー」
「わかったってば。お口にチャックね。」
＊＊＊
看護婦が注射器やら、医療器具やら持ってくるのを横目に、モルはスカリーにこれ以上何する気なんだと睨まずにいられなくって・・・それで癌との闘病を思い出し、さらに辛さが増すわけです。あのときは闘い抜いてくれたけれど、こんな予想外の事態に耐え抜く力が彼女にあるか、不安に陥るわけでして。
看護婦が点滴に薬を注入する間、スカちゃんの冷たい手を握って、モルは必死で祈ります。
頼む、起きてくれ―――眠り姫の真似事なんて、僕には酷だ。君はちゃんとここにいる。必ず
戻ってきてくれる。前だってそうだった。目を覚まして、何か言ってくれ。何でもいい。沈黙はもうたくさんだ―――。
本当に、どうしてスカちゃんは意識不明の重体に陥ってしまったんでしょう・・・？
＊＊＊
「"お姫さまの類まれな美しさを聞きつけた若者が、その国へやってきました。城の近くの草原で、彼女と出会った若者は、必ずや姫を花嫁迎えると誓いました。姫は若者に告げました。今まで何人もが彼女を妻にと望んだけれど、誰一人、父の支配から彼女を解き放つことはできなかったと。若者は言いました。私はライオンの心を持つものです。力なら誰にも負けません。姫はこうも言いました。腕力ではどうにもならない戦いです。決して油断してはなりません。迷いも禁物です。
若者は笑ってしまいました。彼は名の知られた剣士で、刀を一振り敵を倒すだけでなく、賢い頭脳も持っていました。知恵比べでも負けるはずがないのです。明日にも姫を我が物にできると疑いもしませんでした。若者は王に謁見し、王は若者に試練を３つ与えました。見事完遂したあかつきには、姫は若者のものです。"」
「たいしたことないんでしょ？」
「たいしたことないね。」
「当てさせて―――1時間以内に森の木をすべて切り倒すの。違う？」
「残念。川から水を汲んで井戸をいっぱいにするんだ。バケツ1個で。」
「なかなかじゃない。」
「そのバケツには穴がたくさん開いているって言ったか？」
「とんだ落とし穴ね。どこかでくると思ってたわ。」
「"何往復しようとも、穴だらけのバケツでは滴り程度の水しか運べません。十数往復の末、若者は癇癪を起こしてバケツを投げつけました。森の陰から見守っていたお姫さまが、若者の前に立ち尋ねました。『なぜやめてしまうのです？』"」
「"若者は答えて言いました"。」
「"『不可能です。私にはできません。』『あきらめないで。あなたなら乗り越えられます。』姫の言葉に若者は苛立ちを募らせながら尋ねました。穴だらけのバケツで井戸を満たす方法がどこにあるというんです？"」
「私も知りたいわ、モルダー。」
「実はね、姫は不可能を可能にする方法を少しだけ知っていたんだ。父王が求婚者たちを巧みに追い払っていたこともね。」
＊＊＊
「モルダーさん、いい加減お休みになったほうが・・・」なんて気を使う看護婦さんも一向に無視のモル。あなたの健康を損ないますよ、とか病院の規則が・・・とか、パートナーだってあなたが疲労で倒れるのを望まないでしょうとか宥めすかしてもだめで。
とにかく誰にも耳をかさず、スカちゃんの側を離れないモルなのです。
＊＊＊
「"姫は若者に魔法の杖を授けました。"」
「やっぱり。」
「やっぱり？」
「だって、＊魔法＊の杖でしょう？話を全部聞いたら告解に行く羽目になりそうよ、モルダー。」
「スカリー、今週の君の行動は、懺悔にロザリオ1ダースは必要だよ。僕の話は抜きにしても。」
「確かにそうだけど・・・。」
「いい話だって。保証する。たぶん尼さんに聞かせても、雷は落とされないね。」
「ほんとにほんと？今だって怒りの雷に打たれやしないか冷や冷やなのに。神様の神経は逆なでするものじゃないわ。」
「実際落ちてないだろ？言ったじゃないか、絶対楽しいって。ほら、話の続き聞かないのか？」
「観念したわ。続きを教えて。」
「"姫は若者に、杖を水に浸けるよう言いました。――」
「今の雷は遠かったわよね？」
＊＊＊
モルは天に向かって不当を叫びたい気分でした。
だって、モルは楽しいバケーションをスカちゃんに贈りたいと思っただけだったから。
2ヶ月も前から計画していたんですよーT0T（提案したとき、まじめに熱まで測られたのに・・・TT）
ほぼパーフェクトに過ごせたバミューダでのバケーション。そう、あと30分違っていたら・・・そうしたらスカちゃんのアパートの玄関先でキスをして、本当にすべて完璧に終われるはずだったのに。それでまた明日から、現実世界に立ち向かう準備ができたはずだったのに。
ふたりは最後の最後で"雷"に打たれてしまったのです。
＊＊＊
「"杖を水に浸けただけで、バケツからたちまち穴が消え、井戸もいっぱいになったのです。若者は残りの２つも達成できると確信しました。何より姫の助けがあれば。"」
「若者が撃ち殺されて終わりってことはないわよね？」
「まったく疑り深いな。」
「じゃあハッピーエンドなのね？モルダー。」
「もちろん。」
「一応確認しただけよ。」
「今まで君をがっかりさせたことがあったか？ やっぱり答えなくていい。とにかく先へ進もう・・・笑うなよ。」
「笑ってないわよ。 ちゃんと聞いてるわ。 お話を続けて？」
「"若者は王の元へ―――" だから笑うなって！」
「わかったってば。ほら、先を続けて。何が起こるか知りたいわ。」
「"若者は王の元へ行き、―――」
「ご苦労ご苦労、よくやったと褒められました。」
「茶化すなら、続きは教えてやらないぞ。」
「悪かったわ、ごめんなさい。拗ねないでよ、モルダー。キスしたら、続きを話してくれる？」
＊＊＊
＊＊＊
「いいね。これからはもっと頻繁に拗ねることにしよう。」
「それより続きを聞かせてくれるべきね。」
「ああ、そうだ。―――第2の試練のところだったな。」
「そうよ。」
「"王は若者に向かい言いました。よくやった。君には川を支配する力があるに違いない。今度は、川を渡れるよう水を干上げてくれ。私の娘にふさわしい、真に力ある男なら可能だろう。"」
「また魔法の杖を使うのね。」
「ご名答。今度は大地を2度叩くよう言ったんだ。そうすれば水が大地に吸い込まれる。だが魔法の杖の効力は永遠には続かない。だから急ぐように警告もしたんだ。」
「でも、若者は第2の試練も乗り越えたんでしょ？」
「ああ。王は乾いた川底を渡ることができた。王は何度も何度も行き来をして、若者がだんだん焦るのを見ていた。王は魔法の杖の存在に気付いていた。だから時間稼ぎをしたんだ。」
「嫌な奴。」
「同感だね。だからこそ、最後の砦はもっとも困難なものとなった。王が若者に最後の試練を与えたときには、魔法の杖はその力を失っていたんだ。だが美しいお姫さまは、若者自身の力で成し遂げられると強く信じ、そう言葉で告げた。」
「彼は彼女の言葉を信じたの？」
「信じるさ。」
＊＊＊
ここでモルの後悔再び（TT）
到着した飛行機の中で、最後にもう一度キスをせがまなければ・・・
途中でガソリンスタンドに寄らなければ・・・
せめてレジで花なんか買わなけりゃ・・・
遠回りせず高速を使っていれば・・・
最後まで引き伸ばさずに、バミューダで勇気を出していたら・・・
などなど、たくさんの"もしもあのときこうしなければ"がモルを苦しめます。
まさかこんな風に人生に終わりがくるなんて思っていなかったから。
スカリーが死ねば、モルも死んだも同然なのですね（TT）
＊＊＊
「"王は若者を山の頂上へ送りました。山頂には1本の木が立っています。その木に登り、タカの巣から金の卵を2つ取ってくることが若者に与えられた任務でした。やり遂げなければ、姫とは結婚できません。"」
「でも、問題は・・・」
「木は氷でできているんだ。」
「ぜったい落とし穴があるのよね。」
「"若者は何度も木に挑みましたが、どうしても登ることができません。滑りやすく、危険すぎました。そこへ姫が最後に再び姿を現すと、若者は姫に魔法を使って何とかするよう迫りました。"」
「迫った？傲慢ね。」
「彼女もそう思ったさ。だけど口に出しては言わなかった。代わりにこう尋ねたんだ。信頼はどこへ行ってしまったの？と。―――若者は彼女の気持ちを踏みにじる父親から、結婚の承諾を勝ち取ると誓ったはずだ。城に閉じ込められた孤独な人生から救ってくれると誓った、ライオンの心はどこにあるというのだろう。若者は答えることができなかった。打ちのめされたように頭を下げ、己の弱さと愚かさを恥じるしかなかった。」
「でも、彼女は彼を助けてあげるんでしょう？」
「ああ。今度ばかりは彼女の力では、ふたりを助けるには及ばないことを承知で―」
「ふたりを助けるのは及ばない？」
「ここからが聞き所なんだけどな、スカリー。信じろよ。」
「いよいよ佳境なのね。」
＊＊＊
はい、こちらも佳境です〜〜〜！！
やーーーっと、こんな状況の原因がわかりますからあああT0T
モルはこのバケーションの間に、スカちゃんにプロポーズしようとしていたらしく、
でも結局旅行中には言い出せなくって、（ここまで7年もかかったモルですからTT）
最後の最後、スカちゃんのアパートの前に車をとめたところで、いよいよ口にしたんですーー！！
でもね・・・でもですよ（TT）←泣いてばっかり。
スカちゃんがお返事をする隙も与えず、そこへ車が対向から突っ込んできたんですーーー！！！
運転手―――！！免許持つ資格なしーーー！！！（怒）
・・・そう、スカちゃんの重体の原因は事故だったんですわ（TT）
モルは、スカリーはなんて答えようとしたんだろう・・・？僕の欲しい言葉だったんだろうか？
なんてちらりと考え、
でもそんなこと今はどうでもいい。ただ目覚めてほしいだけだ―――
とやっぱり絶望と悲しみの淵に沈んでいるわけで・・・（TT）
だれかーーーー！！！作者さーーーん！！
なんとかしてえええ、ハッピーエンドじゃなきゃいやよおおおお（←スカちゃんの真似。）
＊＊＊
「"姫は若者に告げました。私に口付けて、私の体から息をお吸いなさい。3度繰り返すと、私は死にます。"」
「死んでしまうの？」
「信じろって言っただろ、スカリー。」
「そうね。 続けて。」
「いよいよ盛り上がってきただろ？」
「モルダー、話を終わらせてくれないなら―」
「"若者は反対しましたが、姫も譲りません。彼女はこう告げます。私が死んだら、私の体は塵と化します。後に残った骨ではしごを作るのです。それを使って木に登り、卵を手に入れたら、私の骨を地に置いてください。そして私にあなたの息を与えてください。最後の息で、私は命を吹き返します。"」
「それで言われたとおりにしたのね？」
「"若者は、姫の唇に触れた瞬間、彼女の体が冷たくなっていくのを感じました。ひとつ、そしてふたつと深く息を吸い込みながら、深い悲しみが重くのしかかりました。若者は、まさかこんなことで姫が死ぬとは信じていませんでした。唇ひとつで人の命を奪えるはずがない。こんなにも美しい人の命が消えるなどありえない、と。" 」
「でも、言うとおりになったんでしょう？」
「"若者は瞳を閉じて、今一度、姫の体に触れてみました。柔らかな体が、脆く崩れ去っていくのを手の下に感じたのです。若者が顔を上げると、姫の体は塵と化し、後には骨が残っていました。自分がした事の重大さに、若者はたじろぎました。私がしたことは正しかったのだろうか、私はこの局面に打ち勝つことができるのだろうか迷いが生じます。けれど、若者を信じた姫の心を思い出し、彼は立ち上がりました。彼の不屈の精神を前に、成し遂げられないことなどないのです。
若者は卵を手に入れると、姫に言われたとおり骨を地に並べました。最初の息を吹き込むと、骨の下に撒かれた塵が雲のように姫の体を覆いました。ふたつめの息で、姫の体は元通りになりました。けれど、まだ息を吹き返してはいません。"」
「３度目の息の後はどうなったの？」
「"３度目の息を吹き込み、若者は待ちました。最愛の人の帰還を思えば、笑顔がこぼれます。これで真実、彼女は彼の妻になるのです。若者は彼と一緒になるために、彼女が払った犠牲を心に刻み付けました。」
「そして、彼女は生き返り、すべてが上手く納まりました。おしまい。」
「いや、まだ少し続きがある。」
＊＊＊
じっと自分の世界に引きこもるモルの下へ、看護婦さんがERからお届けものにやってきます。
「モルダーさん？ERからこれが・・・すぐにお返しできればよかったのですが・・・手違いがあったらしくて。」
モルがようやくちらっと見ると、さらにこんなことを教える看護婦さん。
「スカリーさんは意識が混濁していたにもかかわらず、それは大事に抱えて・・・とにかく、あなたにお返しした方がいいと思いまして。」
・・・プロポーズとくれば、何かおわかりですよね？
＊＊＊
「まだ続く？まだ続きがあるって・・・どういうこと？」
「"彼女の体は元に戻りましたが、命が戻りません。若者は天に向かって叫びました。私は何か間違いを犯したのでしょうか？若者には、どうして姫が息を吹き返さないのか、わからなかったのです。地に跪き、若者は天に乞いました。もう一度チャンスをください。せめて徴をおあたえください。そのとき、若者は目にしたのです。" 」
「何を目にしたの？」
「"あそこだ。木の天辺に・・・小さな細い骨がある。若者は姫の手を見ました。青々と茂る草むらにじっと横たわる姫の手から、指が1本欠けていたのです。きっと上に忘れてきたに違いないと、若者は急激に悟りました。けれど、再びあそこに戻る方法がありません。やり直しは利かないのです。"」
「何とかして、モルダー。ハッピーエンドじゃなきゃ嫌よ。」
「ちゃんとそうなる。"姫を失った若者の憤りはすさまじく、苦しみに飲まれ、彼は我を失いました。かつて自信に溢れ、傲慢だった若者は、剣を手に取り、氷を削りながら木を登り始めました。それは根気を要することで、気の短い彼には向かないことでしたが、それでも少しずつ、氷に溝をつけて登っていったのです。一挙手一投足に魂を打ち込むように、彼は挑み続けました。
天辺に手が届くまで、何時間にも何日にも感じられましたが、若者はやり遂げました。そして、骨を拾うと、一気に下へ滑り降りました。大地に叩きつけられるように着地すると、痛む手足で這うように、愛する姫の側へいき、恭しく骨をあるべき場所へ添えると、疲労の末にくずおれたのでした。"」
「それだけ？目覚めのキスもないの？」
＊＊＊
そう、看護婦さんに返されたのは指輪です。
モルは指輪を見つめてさらに後悔・・・（TT）
モルは元来何事に対しても堪え性がないんですけど、人生で一番大事なもの（言わずとしれたスカちゃんです。）だけは例外で。待ちすぎてしまった自分――スカリーはいつでもそこにいると勝手に信じて疑わなかった自分を振り返って、後悔の嵐に飲み込まれています。
婚約指輪はそれなりに前に購入済だったものの、いつも事件に邪魔をされ、何となく機会を逸し続けてきて・・・だから今度のバケーションこそ！って思っていたのに（；；）
こんなことになるなら、もっと早く、いつでも言えたはずなのに・・・
机で向かい合わせのときでも、隣で目覚めた朝でも・・・僕らにシチュエーションなんて必要ない・・・と答えは待つまでもないとばかりに、スカちゃんの指に指輪をはめるモル。
その手を顔に引き寄せ、モルはスカちゃんのベッドサイドで眠りに落ちていったのでした。
＊＊＊
「ありきたりな意味では、それはないかもな。」
「がっかり。」
「まだ話は終わってないよ、スカリー。」
「どうぞ。」
「"若者は、姫の横で目を覚ましました。ところが、姫は微動だにせず、息もしていません。若者はうろたえました。木に登ったことで体はすでにぼろぼろでしたが、魂までもが打ち砕かれました。死の淵に立った若者は、最後の息を捧げようと、姫に口付けをしました。この命と引き換えに、姫は生き返るかもしれない・・・スカリー？」
「そんな目で見ないでよ、モルダー。」
「泣いてるのか？」
「泣いてないわよ。それで・・・それからどうなったの？」
「思いっきり泣いてるじゃないか。」
「だったら何よ。結末を教えて。」
「わかったよ・・・"若者が姫にキスをすると、唇に温もりが戻り・・・"参った、スカリー。泣かないでくれ。」
「泣いたっていいでしょ、モルダー。こんなの悲しいわ。」
「これを教えたらどうだ？その４度目の息、彼の最期の一呼吸で、彼女はようやく信じたんだ。彼こそ愛に値する男だと。」
「最期の最期で気づくなんて遅すぎよ。」
「ときにはそういうこともあるさ。」
「ハッピーエンドだって約束したのに。」
「あれ、言わなかったか？お姫さまは、最初の息で信頼を、第2の息で愛を、第3の息で彼女自身を彼に捧げたんだ。」
「じゃあ4つ目で何をあげたの？」
「彼の命だよ。ほら、泣き止んで。」
「早くエンドマークを打って。じゃなきゃ―」
「"それからふたりは末永く幸せに暮らしました。"」
＊＊＊
スカちゃんの手が、蝶のはばたきほど微かに動いたのに反応してモルが跳ね起きます。目を覚ましたモルを青い瞳がお出迎え。チューブのせいで声は出ないのですが、まなざしで会話するふたりですから〜♪そこは心配ご無用です。
スカちゃんは、指輪に気付いて、その重みを確かめるように手をかざしてみます。
モルはスカちゃんにキスをひとつ、ふたつ・・・３度目のキスで、スカちゃんがモルの手をぎゅっと握って、プロポーズに「Yes」と答えてあげるんです〜〜（TT）
そして、4度目のキスで、モルも再び息を吹き返すことができたのでした。
おとぎ話にリンクするように、こちらのラストも報われました〜＾＾
よかったよかった。
本当に、Mishさんのお話は、複雑なパズルのようで奥が深いですね〜〜（TT）
☆ HISAYOの感想 ☆
よかったです〜(TOT) ダー
スカちゃん目が覚めてぇ・・・意識取り戻してぇ・・・。
ＪＮＫさんに最初にハッピーエンドって言ってもらっていなかったら、こ、これはShipperParadise！にＯＫなものなの？？と先走りしすぎてお断りしちゃったかも〜なんて思いましたですぅ〜(T.T)
それにしてもモルが話して聞かせてあげるお話、ロマンチックです〜♪
ハッピーエンドと分かったので、落ち着いて最初に戻り、ゆっくりモルの囁くような声を想像しながら読ませて頂きました(^^)
まずは会話だけでどんどん物語は進んでいくのですけど、その会話だけでモルとスカちゃんの様子が伝わってきますよね〜。私、こういう風に会話が中心のお話って大好きなのです〜(^^)
ですので最初から引き込まれたのですけども、途中途中で垣間見るモルの悲痛なイメージがそのお話を甘いだけではない現実に引き戻してくれるのですよね〜(TOT)
でも大丈夫！ハッピーエンドだからって思って読んでいくことが出来ましたからー！（２回目からなんですけど）
そしてそこはかとなくモルスカのいちゃいちゃが伝わってきますよね〜。途中でスカちゃんが茶々をいれたりモルがそれを嫌がったり。そしてスカちゃんがむくれたモルにキスで許しを請うなんてところも最高です〜♪まんまとそのキスでモルも大満足しちゃったみたいだし♪
会話だけですけども、ふたりの様子が手にとるようにわかりますよね！
それにスカちゃんが先をとっても気にしてハッピーエンドなの？ハッピーエンドなの？って
聞いているところがすごーく好きです！
だんだんにスカちゃんがモルの話してくれるお話に引き込まれていく様が手に取るように分かってきますし、そして何よりも私たち読者もそんなスカちゃんと一緒にモルのお話に夢中になっていきますよね〜♪
・・・ってご紹介を読ませて頂いているのであって本編は読んでいないのですけど(^^;;;
でも、ＪＮＫさんのご説明は本編を読ませて頂いているようですよね〜♪みなさん！
そんなこんなのモルのお話は御伽話としてももちろんステキですけど、本当に深い深い意味合いがあるお話ですよね。
美しい姫本人を助け出してあげたいという本心があった若者なのに、魔法という自分には今までなかった力でいろいろなことを克服していくうちに、自分の中に傲慢さが芽生えてしまい従来の目的を見失ってしまうという、ってなんか分かるような気がしますよね。思わず名誉や美しさを手に入れたいという気持ちが愛を錯覚させたのかなとさえも考えさせられる。
そして失って初めて分かるその愛の大切さ。でもそこは御伽話・・。
教訓となり得るように、取り戻すチャンスがやってくる。
そしてそんな幸せな二人の中に、今の辛い現実が・・・。
でもラストはそのお話のエンディングとオーバーラップするような現実が待っているわけですものね！
余談ですけども、私ってばスカちゃんの傍らにずっとついているモルっていうシチュエーションが好きでぇ〜(*^^*ゞスカちゃん大変なんだけど、なんか好きなのです。
なのでＳ５の赤と黒も大好きだし、Ｓ６のティトノスのラストなんかも好きなのですわ〜！
もちろんこのお話ほどスカちゃん重傷じゃないのですけども（いや？ティトノスは重傷か？）
見ているとヘ(^^ヘ))))... ...((((ノ^^)ノ ウヒョヒョってなっちゃう私がいて・・
今回のお話も涙を落としているモルは忍びないですけども、最後にはこうして息を吹き返すわけなので、とってもロマンチックだなぁって思いました。あ、それから忘れそうになっていましたけども、そのモル達に突っ込んできた車の運転手。終身刑ね。
